鎌倉は海と山に囲まれた800年の歴史がある古都。鶴岡八幡宮に見守られ、オシャレなカフェに美しい浜辺、そこに暮らす上品な人々。でも、それはきっと表の顔。探してみれば、古き良き酒場が多く、ノンベエたちが赤ちょうちんで照らされ、息抜きをしています。
駅から徒歩1分、丸七商店街という間口の狭いアーケード街はそんな大衆酒場がハモニカのように立ち並び、迷い込んだら最後。予定よりも大幅に長く飲んでしまうに違いありません。
鎌倉駅前は湘南の玄関口らしいおしゃれな佇まい。
ですが、そこからわずかに歩くとこんな飲み屋街が口を開けています。
この商店街、鍵の字型に折れ曲がっているのです。この先に何があるか、ずいずいと進みたくなるはず。その先は夜はどんつきとなっており、辿り着いたところにあるお店が今日紹介する「天昇」です。
もともと焼鳥屋としてオープンしていて、いまも看板料理はこれ。一本150円です。
お酒は生が黒ラベル、瓶はサッポロ赤星ことサッポロラガービール(中びん600円)です。酎ハイ類は300円、サワーが400円。酎ハイとサワーが別枠になっているのがおもしろく、サワーの方は樽詰の氷彩サワーのことです。
日本酒は、なんと”あの”清龍!(300円)
定番は焼鳥なのですが、若いオーナーが次々と地ものの海産物を揃え、今日のおすすめは魚介類が飾ります。お酒に合う小鉢が150円からと、チョイ飲みにもぴったりです。
お通しはなし。乾杯は赤星で!
おすすめから湯豆腐を。オリジナルの嘗め味噌(なめみそ)が特長です。
おつまみ3点セットで300円。マカロニサラダ、いんげん、枝豆ペペロンチーノ。
さて、ネタよしの焼鳥や魚にリーズナブルなおつまみが魅力ですが、それ以上にお客さんの密着度の高さがなによりお酒を進ませます。
お客さんが全員友達のように見えますが、その日偶然会った人ばかり。気がつけば自分も会話に加わり、昔からの飲み友達のような錯覚になります。
東京や横浜から自宅のある鎌倉へ帰ってきた会社員や、つっかけでやってくる地元で商売をする夫婦。博識だけど職業不明な教授風のダンディおじさんなど。
「よく来るの?」から始まる会話はあっという間に時間を進めて、気がつけば立ち飲みでよくこんなに飲んだものだと。
「え、もう帰っちゃうの?もう一軒はしごしようよ」と誘われ、ではもう一軒。
お手洗いは線路脇、電車の振動伝わる共同トイレ。薄暗い通路、ぼんやり灯る赤ちょうちん。そんな寂しい情景を吹き飛ばす、あふれんばかりのノンベエの笑い声が響く商店街の飲み屋。
鎌倉の別の表情が見えるはずです。
夏はビーサンで行きたいな。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
天昇
0467-22-6099
神奈川県鎌倉市小町1-3-4
16:30~22:00(日月定休)
予算1,500円