松本市内にも角打ちが数軒ありますが、平出酒店・8オンスは入りやすくておすすめなお店。松本城や市役所にも近い、「大手」で1887年に創業した歴史ある平出酒店。松本城の堀を埋めて誕生したこの界隈は、新しい商業地として大正から昭和にかけて最先端のハイカラな街だったと聞いたことがあります。
ビールや洋酒を扱う酒屋はハイカラな街になくてはならない存在だったのでしょう。いまも古くからの飲食店とのお付き合いを大切にされ、業務用配達として街に必要不可欠な存在です。
松本城からも徒歩数分の場所にあり、ノンベエたるものお城の散策と角打ちはセットにしたい。安土桃山時代より建造された国宝・松本城大天守に見守られて、今日も楽しい梯子酒に繰り出しましょう。
平出酒店は現在の建物も1929年(昭和9年)築で、近隣の建造物とともに大正ロマンや昭和初期の余裕や遊びが感じられる素敵な佇まいです。壁には丁寧な装飾が施され、近代建築好きにはたまりません。
この脇にある小さな扉が平出酒店の角打ち「スタンド8オンス」です。角打ちと言っても入り口は別で、飲む場所から売り場へもつながっていませんので気にしなければ普通の立ち飲みのように思いそう。
昔は建物に井戸水をひいた水槽があって、そこで冷やしたお酒をお客さんが軽くひっかけていったそうな。平出酒店の角打ちの歴史は、8オンスを開く以前からの流れ。
平成8年の8の日に開店したから8オンス。そう教えてくださった女性がこちらのお店を切り盛りする方。平出酒店の女将さんです。女性がしきる角打ちなので、自然と女性客のファンも増えているそうで、一人旅でも気軽に入れます。
お酒は場所柄りんごやワインを推しています。ビールや日本酒はもちろん、豊富な洋酒の品ぞろえもあり、松本のせんべろ価格帯では随一の品揃え。
地元のお酒は定番銘柄から県外ではまずみかけない個性的な限定ラベルまで様々。
キャッシュオンでお酒をもらって、店内の好きな場所で飲むカフェテリアスタイル。10人も入ればいっぱいになるコンパクトな作りで、夜な夜な常連さんから観光客まで幅広い年齢層で賑わいます。美味しいお酒を一緒に飲めばみんなお友達ということで、見知らぬ者同士の会話も盛り上がるでしょう。
おつまみは乾きものだけではなく女将さんがつくる手作り料理も揃います。200円からとリーズナブル。もちろんお通しはありません。
お酒はウィスキーの品揃えがピカイチ。サントリーではトリス130円にはじまり、ホワイト、角、オールド、シングルモルトとそうそうたる並び。ニッカもフロムザバレルなど、素敵なラインナップ。ハイボールにしてもリーズナブルです。
生ビールはサントリープレミアムモルツ。瓶ではキリンのハートランドの他、ベルギーのヴェレットやアメリカのブルームーンなど、松本で飲んでいることを忘れてしまいます。
と思えば、キンミヤ焼酎という枠にレモンサワーやホッピーが!(笑)
カクテルは標準的なものは一通り。オリジナルの安曇野ワインとオレンジジュースをあわせた「おひさま」というカクテルが美味しそう。
ブドウとワインの産地だけあって、ワインも信州信濃が用意されています。まさに、松本のお酒のアンテナショップ。
乾杯はキンミヤレモンサワー(250円)で。甘くないきりっとした味わい。酒屋さんの片隅とは思えないおしゃれな空間ながら、価格は酒屋さんらしいお手軽さがうれしい。
おつまみには砂肝塩焼きを。鶏料理の多い松本らしさ、ここにもあります。注文を受けてから丁寧にカラカラと炒めてくださるホヤホヤの砂肝です。
日本酒も近隣の蔵のものが一通り。岩波・鏡花水月をつくる岩波酒造(松本)や大雪渓(安曇郡池田)、舞姫酒造(諏訪)。辰野の夜明け前純米は筆者の大好きなお酒。
これらの中から3種選んで400円の利き酒セットが楽しい。同じ蔵のお酒を縦飲みするもよし、地域ごとの長野県内のお酒を面で飲むのもまた楽しいです。
昭和初期に建てられた立派な建物の中で、地元の和酒やぶどう酒、ハイカラな街に似合うウイスキーをリーズナブルに飲める空間「8オンス」。お酒好きならば松本観光の間にぜひ立ち寄って欲しい一軒です。
地元の人も、旅の途中の人も、ここにくれば袖触れ合うも他生の縁。楽しく飲んで素敵な思い出に。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
スタンディング 8オンス
0263-32-0179
長野県松本市大手4丁目10-13
16:00~22:00(日定休・臨時で開店17時に変更有り)
予算1,200円