新生活シーズンは、街にフレッシュな空気が溢れています。なにも、卒業や新社会人だけが春の華ではなく、企業も人事異動で新しい職場で心機一転されていらっしゃる方も多いですね。それは、酒場でもいっしょ。
西武新宿線・野方駅前にある人気もつ焼き店「秋元屋」は、いまや下町のもつ焼きと対比的な存在の山手焼とんの代名詞です。秋元屋を独立された方は、城西エリアで次々と人気もつ焼き店として成長されています。
そんな秋元屋の系譜に、この春あらたな店が加わりました。東中野駅から徒歩1分の場所に17席、コンパクトながらファンの想いは大きな酒場「丸松」です。
メニューは基本に忠実。「まだ始めたばかりなので、ほとんど同じにしています」と話すご主人。ビールは生がサッポロ、瓶は赤星。甲類はキンミヤ焼酎で、梅割り、ぶどう割なども一緒です。
“好きで赤星、粋なビール”。秋元屋の系譜をたどると、原点には蕨で半世紀近く続くもつ焼き屋にたどり着き、原点のころから赤星と名物カシラ味噌焼きは相思相愛。(当時、川口駅北口の広大な土地にサッポロビール川口工場があった。)
そんな背景に僅かながも想いをいだいて、今宵も乾杯!
席料100円がありますが、料理は全般的にリーズナブルで、見せかけだけのごまかしではない、本質的な美味しさがある料理が並んでいます。
酒場のリトマス試験紙はポテトサラダ。玉子がはいって芋の食感が残りつつも、ねっとりとした舌触りがクセになるもの。ビールとの相性は言うまでもなく素晴らしい。
もつカレーもビール、そしてホッピーと相性の良い一品。もつ煮込みにカレーを入れたもので、カレーライスのルーと侮るなかれ、これが意外にもお酒を誘ってきます。
バケットにのせて食べれば、ちょっぴりお洒落さん。
おしゃれに飲むには、金宮焼酎の梅割りでしょう。度数25の甲類に天羽の梅を垂らした元気になれる一杯。おしゃれじゃないって?(笑)
東京生まれで、東京でしか飲まれていないこの独特な飲み方。甲類にカラメル色の甘めのシロップ(製造元の天羽飲料ではシロップとは呼ばず、正確には”梅液”と呼びます。なお、無果汁)を垂らしたもので、ぐいっと飲むとクラッとくるものです。
焼きものを頼みましょう。炭火を巧みにコントロールして強火になりすぎない程度で、ジリジリと焼いていくのが特長。肉から垂れた脂が炭にあたって、煙となって肉へと戻る。そうすることで、燻製とまでは言わなくとも肉の旨味で肉が燻され、独特な香味をまとうのです。普通のタレも美味しいですが、おすすめはやはり味噌ダレ。
名物に旨いものアリ!変わらぬ味のカシラ味噌に納得。味噌と豚の脂の掛け算は、知らなきゃもったいないレベル。
下ごしらえ、鮮度ともに素敵なもつ焼き。シロが苦手という方でも、ぜひ一本はタレで試してみてください。トロっとバターのような優しい風味が楽しめます。その余韻に、赤星、ホッピー、キンミヤをきゅっと。
梅割りが好きですが、ある程度飲み進めるとどうしても甘味料の甘さが口の中に残ってくる感覚があるというもの。ビールやシャリキンレモンで一度リセットという手段の他に、気持ちよく度数高めで飲み進めたい方にはぶどう割もおすすめです。
梅割りと同じ要領で、天羽飲料製造のワイン風エキス「ワイン液」をぽちょんと垂らしたもの。大正12年台東区龍泉でつくられたワイン液こそ、なにを隠そう東京で初めての割り材です。
赤玉スイートワイン風の香味がありつつも、度数はその比率からも20度を越しており、一杯320円という安価ながら、3杯も飲めばメートルは上がりきってしまいそうな飲み物。それでも、ここのもつ焼きとの相性は素晴らしく、飲みに行くたびに楽しくなってしまいます。
楽しくなる理由は、お酒とおつまみだけではありません。店主の人柄がとても素敵でみんなに愛されるキャラ。心地よい接客とリズムでついついお酒が進んでしまう。そんな店主に会いたくて集うお客さんたちもまたいい人ばかりです。
今日は、珍しく東中野で途中下車してみませんか?
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
もつ焼き 丸松
03-5338-4039
東京都中野区東中野1-56-4 第一ビル1-D
16:00~23:00(月定休)
予算2,200円