キリングループの商品を口にしたことがない人はまずいないでしょう。このサイトを見ている方なら「一番搾り」のキリンですし、「ラガー」のキリンです。自宅では「のどごし生」や「氷結」のキリン。さらにはメルシャンもキリングループですから飲食店でお馴染みのフランジアやシャンパンのグルエまで幅広い。
ジョニーウォーカーやフォアローゼス、タンカレーにマイヤーズだってキリンの商品です。
そして子供の頃に飲んだキリンレモンもあるし、職場で普段飲んでいるFIREや午後の紅茶、さらにはヨーグルトの小岩井までキリングループです。そんな日本の飲料業界を代表するキリングループの本社が中野に移転したのは2013年夏。その頃、ちょうど私は中野の飲食店をよく飲み歩いていまして、「キリンが来る!」というのは店の人や酒屋さんなどの業界関係者だけでなく、中野で飲む一般の人々も興味津々、そして変わりゆく中野に期待と不安がいっぱいだったことを覚えています。
それからしばらくして、中野で飲んでいるとどのお店にもキリンの中の人が飲んでいるようになり、立ち飲み屋ではお互いに酔っ払いながら名刺交換をしたものです。昔からキリンを置いているお店は、ますますPOPが充実したし、一部のお店はキリンビールに切り替わりがありました。せめて甲類だけでも…と、三楽焼酎が入ったお店もありました。変わったお店もありましたし、何も変わらなかったお店もありました。でも、これだけは言えるのは、キリンが来て中野の飲み屋街が元気になったということ。酒場が元気なら飲みに来る人も増えるし街も元気になる。いま、中野はとっても楽しい酒場タウンになっています。
そんな中野の街を変えたキリンビールにお伺いする機会がありましたので、その様子をご紹介いたします。
中野北口改札を出て右に行くと飲み屋街、でも今日は左に曲がりましょう。NTTや中野区役所がある西側へ進み中野セントラルパークに向かいます。警察大学校が移転してできた広大な土地を再開発した中野セントラルパークはキリングループ本社の他に大学なども集まり、大きな芝生のある公園があるなど新しい中野のシンボルになった場所です。
ロビーからエスカレーターで二階へ。受付とココニワと呼ばるキリンの歴史や取り組みを紹介する空間があります。「心が繋がる庭」からココニワだそう。ココニワもそうですが、社屋内にはつながりを意識した空間が多く、会議室よりも開放的な空間で「境」のない部署間の交流ができるつくりを意識しているようです。
社食訪問!的なサイトではありませんが、ここがキリングループの社食的な空間「Nagomi」です。ただ、ここではお弁当の販売はあっても社員食堂のように料理の提供はないそうです。研修や会議、個人的な資料作成など幅広い用途で使えるマルチスペースとのこと。
ただ、キリンだけあってバーカウンターは実に充実しています。もちろん生ビールのディスペンサーも設置されています。バックバーには同社の商品がずらり。いいな、ここで飲んでみたい!(笑)
キリングループ各社の本社機能が集約されただけあってかなりの規模を持つ同社屋。社食のニーズは十分にありそうですが、キリンは飲食店と共に歩んできた企業。社員の皆さんも中野の街に食事にいくことで、リアルな接点が生まれるので設置されなかったと聞きます。
18階にあるのですが、ここからの景色が素晴らしい。取材時はあいにくもやがかかっていて見えませんでしたが、澄んだ日には富士山まで見えるそうです。ぐるりと同社のフロアなので、新宿の高層ビル群から中央線の荻窪方面、そして北側の練馬、豊島までパノラマが楽しめます。
中央線がまっすぐ西に伸びているのがわかります。お隣は明治大学。
さて、ロビーに降りてきましてココニワへ。来客スペースもそうですが、とても社内は開放的で、それが一番現れてるいるのがココニワです。なんと平日9時から17時30分までどなたでも見学ができるそうです。知らなかった…
遊び心いっぱいの空間はとてもセンスがいい。
キリンといえば同社のキリンのロゴと並び見かける一番搾りの雫。
そして世界で発売されているキリンの商品がずらりと並ぶコーナーもあります。
ハイネケン、コロナ・エキストラも国によってはキリンが販売権をもっています。日本のハイネケンはキリンのライセンス生産になっています。
海外で発売されている一番搾り。国内とどこが違うかお判りいただけますでしょうか。そう、KIRIN ICHIBANという文字になっています。国内品はここはKIRIN BEERとなっているんです。よく見ると国や時代で変わるデザインがおもしろい。
パッケージデザインの変化やこだわりについて紹介するコーナーも。変わらない、でもなんとなく変わってきている、皆さんはビールのデザインでそう思うことはないでしょうか。大きく変わることは望まない、でも微妙に進化することを望む、そんな消費者心理にあわせて微妙にじわじわと変化し続けています。
キリンのマークに隠された秘密やブランドのコンセプトを一貫して守るキリンらしさについての説明などみていて飽きません。キリンブランドストーリーと書かれた冊子もあるので、”ジャケ”デザインに興味がある方はぜひ。
ちなみに、キリンのマークに「キ・リ・ン」の文字が隠されているのは今は誰でも知っている話?
※いま手元のジョッキで探したあなたへ。ジョッキのキリンロゴでは省略されています。
さて、同社のナンバー1商品はキリン一番搾りですが、なにが一番搾りなのかご存知でしょうか。ビールを作る過程で麦のおかゆみたいなもの、つまり「もろみ」を作るのですが、これを搾った最初の麦汁しか使わないから一番搾りなんです。同社のラガーをはじめ他のビールは一般的に、一度搾ったもろみに再度お湯をいれて改めて搾ります。
一番搾り特有の甘みやすっきりとした旨味は、他のビールと違う作り方で生まれているんですね。
これまた工場見学ではお馴染みの話ですが、キリンビールだけ大びんの形が違うことは皆さん常識ですよね?ずんぐりしている大手3社の瓶と違いなで肩ですっきりしたデザインになっています。リターナブル軽量びんという名で、表面をセラミックスコーティングすることで強度を保ちながらガラスが薄く軽くできています。さらにビールが瓶や空気に触れる面積が他の大びんと比べ小さいので品質にも貢献しているとのこと。
大びんの形は違うし、さらには生ダルの口も違う。そして、そんな容器へのこだわりは缶酎ハイにまで。日本の缶酎ハイ市場を大きく変えたエポックメイキングな商品「氷結」。甲類ベースからウォッカベースへ。果実感のあるこだわりの製法などが支持されましたが、なによりこのダイヤカット缶が与えた消費者へのアピールも大きかったと思います。開封するときにバキッという爽快な音を立てる缶で、なにか特別なものを飲む気分にさせれたものです。ぼこぼこしているので滑りにくいのもポイント。
この商品が市場にでたとき、私はキヨスクでアルバイトをしていたので、本当によく売りました。ビールと同じくらい仕入れてもあっという間に売れたのを今も覚えています。
いろんな味が登場し、果実感を強化した本搾りと、さらに甘さを抑えたビターズに2ブランドを増やしたキリン、RTD市場での存在感は今も抜群です。
NHKの連続ドラマで国産ウィスキーが盛り上がりましたが、キリンも昭和46年からシークラムの輸入を始め、その後御殿場にキリン・シーグラムの蒸留所を建設。昭和52年には国産ウィスキー、ロバート・ブラウンを発売しました。国内の大手ウィスキー会社ほどブランドも蒸留所も多くはありませんが、同社のウィスキーは今も富士山麓として愛されています。ウッディさがあるアイラ風、軽くて余韻がとてもいい、大手2社の同価格帯とは違った富士山麓らしさがあります。もちろん、私の常備酒のひとつ。
協和発酵キリンや小岩井がグループにあるキリン。研究開発も様々です。
キリンビールの歴史と当時の商品が見られる冊子が置かれた年表空間。ここ、お酒好きならずっと眺めていても飽きないかも!季節限定の秋味の登場、淡麗がでて、生茶が生まれ、新ジャンルのニーズに合わせてのどごし生の登場、ノンアルコールビール市場を牽引したキリンフリー、そして機能性食品の需要に応えるキリンメッツ。日々飲んでいるものがどのように生まれたのかを知るのはおもしろい!
ニーズが多様化し、お酒を飲むシーンが人それぞれ違うものになった今でも、お酒はやはり人と人を繋いでくれる素晴らしい飲み物に変わりありません。そんな不思議な飲み物をより美味しく、より楽しく作り続けるキリンの姿勢がここの本社にもあるように感じました。どおりで、中野の街が明るくなるわけです。
さぁ、今夜は一番搾りではじめてラガーの大びんを傾けようかな。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)