北東北の交通の要衝、岩手県北上市。工場が集積するこの街の玄関口には、人口9万人規模とは思えぬ高密度な歓楽街「諏訪町」が広がります。雪深い夜も熱気を帯びるこの街で、日付が変わってもなお地元のノンベエたちを吸い寄せる、深夜営業の町中華『知床』を訪ねます。
深夜の北上、諏訪町に灯るオアシス

北上の夜は早いと思われがちですが、諏訪町の一角だけは別世界です。 スナックやバーが立ち並ぶエリアに、黄色い外壁が特徴的な建物が見えてきます。ここが今回訪ねた「らーめん知床」。開店は夜19時、閉店はなんと深夜3時という、完全に夜型の人々のために存在する町中華です。

雪が積もり、吐く息も白いおもての静けさとは裏腹に、扉を開けるとそこは熱気に満ちていました。 厨房を囲むカウンター席と、小上がりの座敷。店内は驚くことに満席です。飲み屋帰りのサラリーマン、地元の常連さん、若いグループから年配のご夫婦まで、客層は実に多彩。

1席空いたカウンター席に入れ替わるように入れてもらいました。
驚くのは、皆さんが単に食事に来ているだけではないこと。ほとんどのお客さんがお酒を片手に談笑しています。ここはラーメン屋でありながら、酒場としての機能も果たしているのです。 親子で切り盛りされており、厨房からは中華鍋を振る小気味よい音と、阿吽の呼吸で注文をさばく活気ある声が響きます。このパワフルな雰囲気、東京で例えるなら新宿・思い出横丁の「岐阜屋」に近いものを感じます。
飲める町中華の実力
席につき、まずは喉を潤しましょう。 壁に貼られたメニューに目をやると、生ビールや瓶ビールに加え、サワー類も充実しています。

ここに来るまでにも何軒か巡ってきましたが、この雰囲気の中で飲む一杯はまた格別です。 今回はレモンサワーをお願いしました。甘くないドライな飲み口が、これから迎え撃つ中華の脂をすっきりと流してくれそうです。
周りを見渡すと、常連さんたちは慣れた様子で「いつもの」を注文しています。カウンター越しに見える調理風景も最高のつまみ。炎が上がり、ジュワッという音とともに漂う香ばしい匂い。これだけでお酒が進んでしまいます。
ニンニクが効いた手作りギョーザ

料理は、町中華の王道である「手作りギョーザ(5コ)」(450円)から。 「テイクアウトOK」と書かれていますが、やはり焼きたてを店内でいただくのが一番です。

運ばれてきたギョーザは、理想的なキツネ色の焼き目。 一口頬張ると、皮はパリッと、中はジューシー。そして何より、ガツンと効いたニンニクの風味がたまりません。野菜の甘みもしっかり感じられますが、優等生すぎないガツンとお酒を呼ぶ味。

このパンチ力こそ、深夜の町中華の味に求めるもの!
〆はしっとり系のチャーハンで

お酒とギョーザを楽しんだ後は、いよいよ本日のメインイベント。 店名を冠した「ネギみそらーめん」も魅力的ですが、今夜は「半チャーハン」(450円)を選びました。

中華鍋とお玉がぶつかる金属音のフィナーレとともに登場したチャーハンは、八角形の皿に盛られた美しいドーム型。 レンゲを入れると、湯気がふわりと立ち上ります。最近流行りのパラパラ系ではなく、油をまとった「しっとり系」。これぞ求めていた町中華のチャーハンです。

具材はシンプルに、チャーシュー、卵、ネギ、そしてナルト。 口に運ぶと、ラードの芳醇な香りと旨味が広がります。ゴロゴロと入ったチャーシューが良いアクセントになり、噛むほどに味わい深い。付け合わせの紅生姜の酸味で口をリセットしながら食べ進めれば、並盛りのボリュームもあっという間に胃袋へ収まっていきます。

セットでついてくるスープも見逃せません。醤油ベースで、どこか煮干しや乾物のような和の風味を感じる優しい味わい。体の芯まで温まります。
北上の夜はここで完結する
深夜でも満席が続く「らーめん知床」。 ここはお腹も心も満たしてくれる温かい終着駅のような場所でした。 忙しい中でも笑顔を絶やさないお店の方々の温かさと、常連さんたちが醸し出す一体感。お酒を飲み、ギョーザをつまみ、シメの一皿を平らげて店を出る頃には、身も心もポカポカになっていました。
お隣で飲んでいた若いご夫婦が、なんと当サイトをご存知の方で、酒場話で意気投合しました。北上はまだまだ奥が深そう。
好きだなあ、地方都市の深夜食堂。旅のいい思い出になりました。
店舗詳細


| 店名 | らーめん知床 |
| 住所 | 岩手県北上市諏訪町1丁目1−18 |
| 営業時間 | 19時00分~3時00分 日祝定休 |
| 創業 | 40年以上 |
![Syupo [シュポ]](https://syupo.com/wp-content/uploads/2022/01/syupo-logo.png)
