椎名町「正ちゃん」 茶屋出しが秘訣!魚を知り尽くした大将が仕入れる肴に惚れる夜


茶屋出しという言葉をご存知でしょうか。茶葉の話ではなく、これは魚河岸の用語。複数の仲卸を巡って別々に購入したものを集積し仕分けをしてくれる「茶屋」(買い荷保管所)という存在があります。江戸の頃より使われている制度で、主な物流手段が船だったころ、当時日本橋にあった魚河岸から上げ潮を待つために商人たちが集った茶屋から始まったもの。

仲卸で購入する際に、「茶屋出し」というのはその場でテイクアウトせずに、軽子に茶屋まで運んでもらうことを表します。茶屋に集まった各仲卸から仕入れたものは、茶屋がお客さんのトラックに載せてくれるというもの。

そんな茶屋出しを利用するほど扱い量や種類が豊富な居酒屋が豊島区は椎名町にあります。その名は「居酒屋正ちゃん」。

 

椎名町は池袋から西武池袋線で1駅にもかかわらず、駅前にはどこか懐かしい町並みが広がり、東京の古き良き商店が賑やかに軒先を飾っています。

 

正ちゃんの店頭にはトロ箱のままずらりとネタが並んでいます。この魚介類や煮魚、焼き魚は持ち帰りの購入も可能で、居酒屋ながら次々と店先の魚が売れていきます。ご近所さんが真牡蠣を「これ、殻むいてもらえます?」と二・三個買って帰る様子も。

 

店構えはコンパクトで、入ってすぐが厨房とそれに向いたカウンター。常連さんが数名すでにいい具合にメートルをあげて飲んでいます。なんと午前10時から営業。一日に2回くる常連さんにも出会えました。

 

お酒は日本酒がリーズナブルでおすすめ。福島の榮川酒造の本醸造が350円とお値打価格です。

 

とはいえ、乾杯やいつの季節もビールでいきたい。瓶ビールでアサヒ、キリン、サッポロと3銘柄あり、樽生はサッポロ黒ラベル。状態の良さが見た目でわかるキレイな一杯で、それでは乾杯!

 

ここまで読んでおわかりの通り、ここは魚で溢れている酒場。お通しからおいしい海鮮が定番です。まぐろ湯引きをぬたで整えたもの。

 

さぁ、何を食べましょう。お通しから期待も高まり、メニューもくまなく眺めたい。刺身は種類が多いなー、金目鯛で500円もいいなとみていると…

 

実はもっとあります。もとは魚屋として創業した正ちゃんは、日本酒榮川とサッポロビールが大好きなご主人が居酒屋へと変身させたお店。魚の顔ぶれはもちろんのこと、魚を扱って半世紀の目利きがいれる魚介ははずれなし。

 

大ぶりな鯵をつかったなめろう(530円)。オーダーを受けてから店長さんが三枚におろして小刻みにトントンとたたいて作ってくれる一品。カウンターに座れば板場そのものがステージのようで、なめろうの音を肴に一献傾けられます。

ボリューム満点。一人ならばだいぶ満足できるなめろう。鮮度も技術もさすが正ちゃん。

 

合わせるお酒はもちろん榮川の本醸造。ぬる燗にしてもらい、きゅっと口に含み、余韻になめろうを一口。

 

今日はどんなのがいい?と聞けば教えてくれます。「今日はむつかま煮がいいよ!」なにせ品数が多いので助かります。チェイサービールをもらって、脂がのったむつ(580円)を頬張れば「うんうん」と頷いてしまう。絶妙な染み具合がたまりません。

 

カウンターには無造作に、でもとっても美味しそうなおつまみが山盛りになっています。鯛の頭がこんなに大きいということは、さぞかし大きな個体だったことでしょう。真鯛の刺身(650円)も食べたいですが、お腹の具合がもういい塩梅。

 

そういえば真牡蠣が手のひらに収まらない巨大なものだったことを思い出しました。活カキは広く深く分厚い。榮川の生貯蔵瓶をもらって準備万端整いました。

 

ぷりっぷり、水々しいのに口いっぱいに広がる磯の濃厚な旨味。するっとした喉越しのあとに爽やかな風味が残り、そこへきゅっと日本酒を。

 

気さくなご主人はおしゃべり上手。魚屋としての創業は45年前で、その後少し離れた場所で10席程の居酒屋をやっていたそうです。現在の場所に移った際に3階建てのお店を建てたそう。一階はカウンターですが、奥にはテーブル席、二階には宴会スペース、三階はなんとカラオケまで完備し、地元の魚好きたちの集いの場所になっています。

 

ご主人と奥さま、そして板場を任された店長とお手伝いのスタッフの方までみんな優しく素敵な笑顔。常連さんもそんなお店の雰囲気を求めて集まってきます。

ぜひ椎名町で途中下車してみてください。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

居酒屋正ちゃん
03-3972-9198
東京都豊島区長崎1-3-7
10:00~24:00(木定休)
予算2,700円



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