銀座「そば所よし田」 131年目の引っ越し、銘店の味は変わらない

銀座「そば所よし田」 131年目の引っ越し、銘店の味は変わらない

2016年3月20日

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銀座でそば前を楽しむといえば、「よし田」を紹介しないわけにはいきません。銀座6丁目にあり続けて130年。銀座和光とほぼ同時期にのれんを掲げ、そのあとになってから三越やライオンビヤホールが銀座にやってきたわけですから、ここ「よし田」がどれだけ銀座の蕎麦屋としていかに長く根付いているかお分かりいただけるのではないでしょうか。

銀座7丁目にあったよし田は資生堂本社のすぐ隣。きっと代々の資生堂の重役や社長も若き頃はここよし田の蕎麦を啜っていたでしょうし、日本麦酒時代から銀座に本社を構えていたサッポロビールの偉い人達も食べに来ていたものと思います。それだけでなく、ミキモト、かねまつ、ワシントンなどのそうそうたるアパレルメーカーの人たちもファンが多いようですし。ここよし田は、銀座人の「昼食」と「蕎麦前」を楽しむ定番中の定番蕎麦屋だったはず。

それが昨年、突然の閉店となり、銀座で商売をする人たちの間で大きな動揺が走ったと聞きます。前触れはほとんどなく、130年やってきたお店が突然なくなるなんて思いもしませんでした。

そんなよし田が、ついに6丁目に移転オープン。皆さん、あのよし田が復活しましたよ!

 

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銀座で仕事をしていた人には馴染みすぎて、そこにあるのが当たり前だったお店ではないでしょうか。復活を待ちわびていた多くの銀座人たちからの祝福が、店先の大量のお花から伝わってきます。開店祝いの花の送り主の名を見ると、普通の蕎麦屋ではないことがわかります。

以前より明るく広々とした空間に生まれ変わりました。昔は本当にどこの駅前にでもある普通の蕎麦屋という雰囲気でしたが、あれはあれでよかった。新しくなったよし田も、銀座らしいおしゃれな感じになって、以前よりも用途が広がったように思い、これもまたいい。

 

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ビールがヱビスビールと黒ラベルを定番にしているのは、サッポロとよし田は共に銀座で100年以上のお付き合いだからでしょうか。こういう背景があって楽しむビールはひと味違います。

それでは乾杯!

 

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椅子やテーブル、そして仕切りのは昔のお店から引き継がれたもの。旧店舗が更地になっていた期間はどこに保管していたのだろうという素朴な疑問が浮かびましたが、そんなことよりも、この椅子、このテーブル、そしてこの風景ですよ。銀座っていいな。

 

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よし田といえば、コロッケそば発祥のお店として有名。浜町のよし田のハイカラ女将が考えた働き盛りのパワー全開になれるお蕎麦として生み出されました。鶏肉、卵、山芋のみで揚げたものでパン粉を使わない独特なコロッケは新店になってもかわらず。

ぬたや焼きとりも、お店のこだわりと歴史を感じる料理としてたまらなく好き。蕎麦前には板わさを、といわずに、銀座らしく華やかなおつまみが揃っています。

 

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お客さんは界隈のアパレルやショールームに努めている若い男女や、ハイヤーで送り迎えされているロマンスグレーがきまっている紳士から、第一線を引退したけれどそうとう偉かったんだろうなと感じられる身なりと言葉遣いが洗練された老紳士のグループまで層は広い。でも、みんな銀座らしい品格があり、美味しいものの楽しみ方をしっている雰囲気があります。

 

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場所から、界隈の料理屋で接待を受けた帰りや、帝国ホテルのパーティー帰りの人たちの、”オフ”の場として利用されていることが多く、それもお店の雰囲気を”いい大人”の居場所というムードにしているように感じられます。

二十歳そこそこの私をよし田につれてきてくれた方に教わったよし田の「蕎麦焼酎蕎麦湯割り」。お店のお姉さんが「そばそばね」って答えるのが好きです。風味豊かでまろやかな味わい、これを飲めば翌朝も早朝から二日酔い知らずでしょう。

 

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ごま豆腐のおつゆは、そば用のものを中心に少し味付けを甘くしています。これがよし田の菊正宗にしっとりと寄り添ってくるのだからたまりません。辛めの男酒によし田のてらいもなくストレートに感じる甘辛い味が素晴らしく合うのです。

 

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蕎麦前だけで帰ってしまうなんてことをやっていたときもありますが、最後はやはり蕎麦で〆るべし。鴨鍋のコースを置いているくらい、鴨料理にも力が入っているよし田。もちろん鴨南蛮や鴨せいろはおすすめです。コロッケそばは言うまでもなく。

でも、もう少しつまみながら飲みたいなというときは、具だくさんの五目そばがよいのでは。ひたひたになったお麩、おあげ、たけのこは完全に日本酒のお供。鶏の上品なあぶらが染みだしたおつゆもお酒と合わせて楽しくなってきます。

最後に、するすると啜っていい気分。心もお腹もいっぱいです。

 

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これからも、つぎの銀座の日常にある蕎麦屋として、ますますご繁盛されますように。私がオススメするなんてとてもおこがましいことですが、まだよし田の移転をご存知のない方がいらっしゃると思いますので、「できましたよ」ということが伝わればと思います。

ごちそうさま。

 

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

そば所 よし田
03-6264-5215
東京都中央区銀座6-4-12 KNビル 2F
17:00~22:00(土祝は21:00まで・日定休)
予算2,800円