中野「路傍」 酒場は学校だ、先人に教えられる時間に魅力

中野「路傍」 酒場は学校だ、先人に教えられる時間に魅力

2016年3月10日

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中野北口は幾度の再開発があっても、いまだに昭和の面影は色濃く残りつづけています。まるで、中野の街が自身のアイデンティティを守ろうとしているかのごとく、キレイなエリアとは別にいつまでも力強く、ネオンと赤ちょうちんが灯り、そこを中央線のどんな横丁よりも賑やかに人々が梯子酒を楽しんでいます。中央線文化の玄関、中野の北口を巡らずして東京の酒場は語れません。

若いお店も、長く続くお店も、どちらもほどよい空気感で共存しているのもここのおもしろさ。ぐいぐいと店数を増やす若手のお店の店員さんに聞けば、好きなお店は創業半世紀の酒場だなんて答えるのだからおもしろい。

そんな中野の老舗といえばと聞かれたら、路傍と答える方も多いのではないでしょうか。56年目を迎えた囲炉裏端料理の酒場です。店構えはだいぶいい具合にいぶされていて、それが酒場好きの心をくすぐるとともに、若い人たちの賑わいを防ぐ盾のような役割を果たしています。ここに入れば別の世界、そもそも酒場ってそういうものだと思うんですよね。

 

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店内はL字のカウンターに椅子が8つほど。中心に囲炉裏があり、それを囲むように座ると不思議なほどほっとします。火を囲むと人はこうも心地いいのかと改めて感じさせられます。

食材が「美味しいよ」というオーラをだしながらカゴや大皿に盛られているのをみていると、どれも食べたくなってしまいます。そして、なんといっても路傍といえば菰樽(こもだる)の樽酒です。菰はめでたいときに使うもので、通常樽酒を扱う飲食店は、菰をかぶっていない樽酒を使うのですが、あえて菰樽を使うのが半世紀続く路傍のこだわり。お客さんの前に出すのだから縁起の良い菰を使うというお話、素敵です。

 

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ビールはもちろん、お店の雰囲気にぴったりあうキリンラガー。ビアタンも昔のデザインのそのままなのが嬉しい。それでは乾杯!

 

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囲炉裏で丁寧に焼き上げる厚揚げがお気に入り。きみの玉手箱ややきそばなど気になるメニューも多いのでぜひ頼んでみてください。エリンギやそら豆などカウンターの大皿に盛られている料理を焼いてほしいなんていうこともできるので、ぜひ雰囲気にまかせてあれこれお試しください。

 

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今年で56年、この空間がなによりのおつまみになります。よい酒場によいお酒、派手な飲食店もよいけれど、こういう酒場でしっぽり飲める人間でありたいと思いませんか?

中野の名酒場、いちどはお試しあれ。ここを知ってからはじめて中野北口の酒場について語れるのではないでしょうか。入りにくいかもしれませんが、勇気をだした人だけが楽しめる老舗のいい空感です。ここは学校、この酒場に通った先人と、ここのお酒を支えてきた先輩たちから教えられるような気がします。

ごちそうさま。

 

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

路傍
03-3387-0646
東京都中野区中野5-55-17
18:30~24:00(日祝定休)
予算3,300円