昨今、銀座の老舗の飲食店が次々と閉店しています。一時期銀座で仕事をしていたこともあり、この街には深い想いがあるのですが、銘店が消えていくのは寂しい。そんな銀座には、日本最古の地下街があります。いえ、いまは埋められてしまったので、「過去にあった」というべきでしょうか。その名は三原橋地下街。晴海通りをくぐるように作られた地下街で、昔水路として使われていたものを地下街に転用したという、町の歴史が好きな人ならば興味津々になる空間がありました。
そこにはシネパトスという映画館といくつかの飲食店があり、とくにカレー屋の「三原」は、この地下街の顔としてそこにありました。銀座で過ごす人にとっても、いつもそこにある当たり前の店、だったはず。
店先に冷蔵ショーケースとサッポロの生ビールディスペンサーがあるという今の飲食店からすれば考えられないような不思議空間でした。カレー屋だけれどもお昼から夜まで通しでやっていることもあり、飲み屋としての位置づけもありました。ここには芸術・芸能関係者も多く訪れたほか、サッポロビールの端田 晶氏(著書多数・恵比寿ビール記念館元館長)が愛したお店でもあります。
開店は昭和39年ですから、ちょうど東京オリンピックの年。現オーナーの吉田氏とそのお母様が始めました。
そんな三原が新橋に移転してオープンしていたというのは実はあまり知られていません。今回、掲載のご許可をいただきましたので、ついにその新店を紹介できることとなりました。
新橋駅から徒歩5分ほど。飲み屋街を抜けた先にありますが、いつもふらふらと歩いている飲食店街なので距離は感じません。角っこにある明るいお店で、「三原も生まれ変わった」と感じます。
メニューはカレートフライという昔ながらのラインナップを維持。もちろん、お昼から飲める居酒屋メニューも揃っているので、カレーではなく飲みを求めてくることも全然OK。そういえば私、今も昔も三原でカレー食べたことないかも。
72歳になっても元気で笑顔が耐えない吉田信三氏。よく来てくれました。とにこやかに迎えてくれました。
ビールはもちろん、昔も今もサッポロビール。東京オリンピックのころは、サッポロビールの本社はまだ銀座にあり、その関係もあって銀座の老舗はサッポロ率がとても高い。「サッポロさんにはたくさん助けられました。ともに歩んできたから、これからもずっとうちはサッポロです。」という温かいお話を聞きながらいただく黒ラベルはまた格別。
銀座のビール、サッポロ黒ラベルで乾杯!
カレーを食べるとお通しはありませんが、飲むときはお通しがつきます。これがいつも気の利いたもので、さすが銀座のお店は違うなと感じる瞬間。海老の酢の物をおつまみに。
昔から変わらない仕事がしっかりされている料理の数々。価格も昔から変わらず大衆値段。あれこれ頼んで一通り飲んでも千円札数枚でおつりがくる。嬉しい限りです。
洋食屋の流れでもあり、フライと並びおすすめなのがニラ玉。居酒屋のニラ玉ではなく、オムレツといえるようなかたち。中はとろっとだしが入っていて、これがまたビールとよく合うんです。
キレイな油でからりと揚げられた天ぷら。キス天を頼んでも、サービスでいろいろと添えてくれるのが嬉しい。海老がおまけだなんて素敵すぎます。天つゆにつけて頬張ればにっこり笑顔間違いなし。
ビールから酎ハイに。割り材はハイサワーというのがまた老舗らしい。新しい物はよくわからないけれど、長く愛されるってそういうことだよねと吉田氏と盛り上がります。
お昼から通しでやっているので、とても穏やかな時間がのんびりと流れています。新橋ってお昼から飲めるところは実は少ないので覚えておきたいですね!
うちにビールを飲みに来てください、もちろんカレーもね!と昔からの常連さんだけでなく新しい人にも遊びに来てほしいと吉田氏。お店を初めて、もうすぐ二回目のオリンピックが東京にやってくる。そのときにはたくさん応援してあげたいと語られています。
酒場の歴史は街の歴史。こういう空間がいつまでもいつまでも続くことを願っています。私も応援します、吉田さん!
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
銀座三原
03-5510-6767
東京都港区新橋3-3-8 信友ビル 1F
11:30~22:30(無休)
予算1,900円