銀座「三州屋銀座店」 サッポロ・白鶴・並木通り・魚河岸、半世紀続く名酒場

銀座「三州屋銀座店」 サッポロ・白鶴・並木通り・魚河岸、半世紀続く名酒場

2017年11月6日

銀座はサッポロビール創業の地のひとつ。ヱビスビールを生みだした日本麦酒は1887年、銀座に本社を構え、以来、銀座には平成に入るまでサッポロビール本社がありました。

銀座の酒類といえば、サッポロと並び灘の酒蔵「白鶴」も大正時代よりこの地に根ざした存在です。現在も歌舞伎座の斜向い・銀座5丁目に白鶴銀座ビルがあり、なんと屋上では白鶴錦という独自酒米を育てています。

サッポロ、白鶴の組み合わせは銀座らしさ。提供する酒場は多くありますが、これに「並木通り」と「魚河岸」というキーワードを加えれば、それはもう「銀座三州屋」のこと。

 

ルイ・ヴィトン、マックスマーラ、カルティエ、エルメス、シャネル。世界的なハイブランドが並ぶ並木通りに「銀座三州屋」があります。並木通りをハイクラスなショッピングストリートとしてみると、”大衆割烹”を自らうたう三州屋は違和感を感じますが、「大人の街」として考えれば、こういうお店の存在こそ、銀座の奥行きです。(実際、お店が並木通りから奥に引っ込んでいますしね。)

 

日曜日休み、昼から通しで営業。魚河岸築地で仕入れた新鮮な海産物を大衆価格で楽しませてくれる三州屋は、1968年創業で50年目を迎えようとしています。半世紀使った建物は、先の大規模改装で蘇り、真新しい一枚板のテーブルが迎えてくれます。

 

料理は70種類。名物は鳥豆腐で、これは暖簾元の神田三州屋で誕生し銀座へも引き継がれています。お昼どきは食堂として賑わい、それに合わせるように定食が充実しています。

 

ホワイトボードはその日の魚河岸の様子を反映する鏡のようなもの。毎日築地仕入れ。どうですか、この賑やかな顔ぶれ。

 

ビールは昔からずっとサッポロビール。水冷庫に沈むジョッキを給仕の女性がすくい上げ、タップから離れた位置にもって、ビールを勢い良く落とし込むように注ぐ銀座三州屋独特の注ぎ方で供されます。

銀座で愛される北極星のビールで乾杯!

 

お通しはだいたい魚貝類。一皿だったり、二皿だったり。ぶりアラがちょいと出てきて、これがまた美味しい。

 

キモがたっぷりの平目刺し。透き通る刺身でキモを巻いて、ヤマサ醤油にちょこっとつけて頬張れば思わず笑みがこぼれます。

 

お酒は白鶴。樽酒、生酒、本醸造、純米酒と300小びんの種類が豊富。普通酒で燗酒向きの定番酒は、白磁に青で鶴の輪郭を描いた白鶴印の徳利に入り、ぬる燗にして飲むのがオススメ。魚、鳥豆腐とも相性抜群。

 

秋から春にかけての一番人気はなんといってもカキフライでしょう。大きく太く、ぷりっぷりの牡蠣を使用。サクッと噛んだ瞬間に口いっぱいに海の旨味ジュースが流れ出し、包んでいた衣に染み込んでいきます。ウスターソースと辛子の軽い酸味とまじり、飲み込んだあとには心地よい牡蠣のコクが舌の上に残ります。

 

そこにすかさずビールや日本酒を。カキフライで飲むのが好きで、寒い季節はあちこち食べ飲み歩いていますが、銀座三州屋のそれは頭に刻まれる美味しさです。

 

カキフライのあとは鳥豆腐。注文の度に小鍋で豆腐と出汁、鶏をあわせて炊き上げ供されます。煮詰まらずぷりっとジューシーな鶏と鰹出汁の旨味が、お酒を進ませ、お酒がまた進ませます。

 

アパレルの店員さん、近隣の会社員、銀座で商売されている銀座旦那やご隠居さんまで、幅広い人たちに支持される名酒場。みんな同じ位置で同じ酒と肴。

最近は噂を聞きつけ、海鮮丼やカキフライ定食を食べに来る若い人も多いです。三州屋で美味しい料理をおつまみに、ビールで乾杯、白鶴をきゅっと飲んで、大人の仲間入り。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

大衆割烹 三州屋 銀座店
03-3564-2758
東京都中央区銀座2-3-4
11:30〜22:00(日定休)
予算3,000円