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東急東横線はハイソな高級住宅街と、どこか懐かしい私鉄沿線の下町感が融合し、独特な個性を持った街が多いです。同じ東急線でも、田園都市線とはまた雰囲気が違う。東横線は、どこか昭和テイストで、人々の息遣いが近く感じます。
そんな東横線から、本日は学芸大学を飲み歩き。東急線の高架下には流行の飲食店がきらびやかに並び、その合間・合間に庶民派の飲食店も混在しています。道幅の狭い商店街には、大学が移転した今でも若い人の姿が多く、活気を感じます。
駅近くにある「学大大学」は2012年オープンのハイチェアー型のカウンター飲み屋です。大きなガラス扉ごしに、酒場特有の熱量を感じる暖かな光が道を照らし、飲み屋好きならばすいすいと吸い込まれてしまいそう。
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酒販店ではないので、厳密には「角打ち」ではないのですが、店名にそれをつけた気持ちは店内のお酒のラインナップから伝わってきます。なんだ、このトーインの割り材の列は(笑)
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日本酒は日替わりで、飲みきると次のものへ変わるよう。日高見や米鶴、いずみ橋など感度の高いお酒好きを満足させてくれそうな銘柄が豊富に用意されています。隣にいた年配のお客さんが「地味にいい品揃え」とおっしゃっていましたが、まさにその通り。
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ビールは生がキリンハートランド(HL)、瓶ではキリンラガー(RL)が用意されています。壁にずらりと並ぶトーインはここの名物。日本酒は350円/70cc~。
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しっかり食べる系というよりは、お酒と肴の組み合わせをちびちび楽しむようなメニュー設計。とはいえ、刺身から天ぷら、牛すじ肉じゃがまで、料理の種類は多すぎるほど。そばみそ(150円)から、大山鶏南蛮タルタル(880円)まで、価格は広く設定されていますが、店の雰囲気や立地を考えると十分にリーズナブルです。
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トーインとは、東京都中野区にある割り材メーカー「東京飲料」のこと。同じ割り材屋の博水社(ハイサワー)やコダマ飲料(バイス等)と比べるとマイナーですが、地味にファンの多い会社。中野限定のナカボールの割り材として知られています。
そのすべてを揃えちゃったというのが、このお店。どうしてここに全力を尽くしたのか。
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キンミヤ純正品の酎タン(酎ハイタンブラー)にキッコー宮焼酎とトーイン割り材を注いで、乾杯の酎ハイが完成。タンブラーも割り材も冷蔵庫でよく冷やされているので、氷なしでもいいかもしれませんね。
まずは定番のトーインレモンで、乾杯。うん、酸っぱい!
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お通しはひじきと、小松菜と油揚げのおひたし。(お通し300円)
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奥行きのある造りで、カウンターが奥へと伸びています。カウンターの幅が広く、ハイチェアーということもあり、広く余裕のある空間に感じられます。
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定番メニューの他にも、日本酒と合わせるチーズが差込メニューで加わります。豆腐ようを思わせる深いコクと書かれたチーズ、気になります。
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日本酒は日替わりです。この日の顔ぶれはこちら。お気に入りの銘柄はみつかりましたか。私はこの中ですと、鳥取の日置桜の純米ひやおろしを飲みたい。
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といいつつ、神奈川のいずみ橋を。優柔不断。70cc入るしゅっとしたグラスに注がれる日本酒。袴がわりに枡を履いています。この空間にぴったり。
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酒の肴3種(800円)、へしこ、このわた、からすみを肴にちびちびと飲む。落ち着いた空間で、飲みなれているお酒好きが主体の店内。
あれ、店名の通り、角打ちで飲んでいるような気分になってた。
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おつまみの他に、お蕎麦の比重が高く、〆の蕎麦が店の人気料理になっています。店の雰囲気は明るすぎず、飲み屋らしくシックに抑えつつも清潔感があるつくり。コテコテの大衆酒場を今風にアレンジしたらこうなる、という模範例といってもいいかもしれません。
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若い人が楽しくお酒と向かい合う空間。ありそうでなかったスタンスのお店です。お店のスタッフも若い方が中心ですが、決してフワフワしておらず、仕事熱心です。程よい距離を保ってコミュニケーションがとれるので、一人で飲むときは話し相手になってくれるかも。
東横線らしい酒場。居心地がよく、通いたくなる空間です。お近くの方は一度覗いてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
学大角打
03-5708-5145
東京都目黒区鷹番2-21-9 満瑠賀ビル 1F
18:00~25:30(月定休)
予算2,300円