蒲田には、メニュー数100位上、席数170を誇る巨大な大衆酒場があります。駅前繁華街の一等地で5階建のビルすべて一軒の大衆酒場というすごい店「鳥万」です。
蒲田のランドマーク居酒屋
外観
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1964年(昭和39年)創業の半世紀以上親しまれている蒲田を代表する酒場の一つ。店名の通り鳥料理を主軸とした料理が中心ですが、鮮度抜群の刺身も多く、早い時間は羽田で船宿を営む人や漁業関係者など魚を仕事とする常連さんもいます。
いくら飲兵衛の多い蒲田とはいえ、170席が埋まるのかと思うかもしれませんが、これが猛烈な混み方をするのです。どこからこんなにお酒好きが集まってくるのかと不思議なほど。
品書き
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人気のポイントは、なんといってもメニューの豊富さと盛りの良さ、そして300円前後がほとんどという価格設定です。店内に所狭しと貼られた短冊メニューは仕入れや季節によって次々変わっていくので、何度通ってもぐるぐると見渡さないといけない。これがもう楽しくてしょうがないんです。
ソートされていなくて、焼き魚の間にメンチカツが挟まっていたり、無秩序の並びが探究心をくすぐります。おお、さんま焼きが350円ですね。
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定番メニューやドリンクは手元のメニューにありますが、すべてを網羅していませんので参考程度に。これだけ種類があると人それぞれお気に入りがあり、大ぶりの餃子が好きという人や、300円台で食べられる一人鍋を楽しみにしている人など様々です。
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店名の通り焼鳥もあり、一本90円と安いのですが、これだけ種類があるとなかなか串にたどり着けません。
鶏料理を中心に100品以上、その中でも名物は唐揚げ
アサヒスーパードライとお通し
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ビールは樽も瓶も昔からずっとアサヒビール。スーパードライの大びんが立ち並ぶ光景は、鳥万を象徴する眺めです。というのも、いまどきめずらしい瓶ビール大びんが490円というリーズナブルな価格設定があります。
ちゃんと座れて美味しい料理が豊富なお店なのにこの価格は強烈です。若い頃、ここの4階でよく宴会したものですが、いつもひとり2,000円いかなかったです。お酒もおつまみも安く、カウンターからテーブル、畳敷きの宴会場まで用途も多様、そりゃ流行りますって。
お通しの豆菓子は50円。トトトっとビアタンに注いで乾杯!
豆腐サラダ
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どの料理もはずれがなく、みんなおすすめなのですが、初めての方には肉類ならば「鶏皮煮込み」を、サラダならば「豆腐サラダ」がおすすめです。一丁つかった大きな豆腐にきゅうりやわかめをどっさり入れて、これで300円です。
刺身サービス
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鳥万で最初に頼むものとして、「サービス」は外せません。常連さんは座るのと同じタイミングで「白ホッピーとサービス」と注文するくらいの定番品。200円で、日によって内容が異なります。基本は刺身が用意されていて、めじまぐろや生しらすが出てくることも。
16時のオープンで非番の鉄道・バス・タクシードライバーや、早い時間に仕事が終わる人、老後を楽しむご隠居で一気に一階が埋まるので、みんな次々サービスを頼むとヤマになってしまうことも。
遅い時間になるとコロッケなどありふれたものになりますが、それでも200円は安い。
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生ビールの状態もよく、喉が渇いているときぐいぐいといきましょう。特大ジョッキ(1L)が690円と一昔前の値段のままです。生ビールでクリアアサヒも接続されていて、より安く飲もうと思えば中ジョッキ250円で飲めてしまう。
名物は若鶏の唐揚げ
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特大ジョッキを片手に…といきたいですが、筋肉痛になる重さなので両手で飲みながら、名物の唐揚げを。若鶏の唐揚げ(420円)は、店の壁面にも大きく書かれているまさしく看板商品。手羽と胸肉が半分ほどが盛られていて、小骨も一緒にバリバリと豪快に食べます。
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唐揚げ用にべつのお絞りもだしてもらえるので、手に持って骨の隙間のお肉まで、隅々味わえます。鳥のジューシーな脂と、カラっとしつつも油がしみこんだ衣の、カロリーが高いけどやめられない後引く味が最高です。スーパードライ特大ジョッキが多すぎるのでは?と思うかもしれませんが、この唐揚げがあれば意外なほど吸い込んでしまいます。
ごちそうさま
常連さんも陽気な方が多く、1人で飲んでいても寂しくありません。店員さんの気さくな接客もほっとします。店全体の賑やかな笑い声や飛び交うオーダーが程よいBGMです。
酒場に溶け込み空間に同化する。大箱ならではの浸る楽しさがここにはあります。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 鳥万 本店 |
住所 | 東京都大田区西蒲田7-3-1 |
営業時間 | [月~金・土] 16:00〜23:00 [日・祝] 15:00〜22:00 無休 |
開業年 | 1963年 |