高円寺「大将」 一日数千本を売る、高円寺酒場のランドマーク

高円寺「大将」 一日数千本を売る、高円寺酒場のランドマーク

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なゆさん、最近地方の記事が多くて生まれた街をおろそかにしていませんか?

そんな話を阿佐ヶ谷の立ち飲み屋で偶然隣り合わせになった杉並区在住の読者様に言われました。いやいや、記事にしていないけどこうして飲んでいるじゃないですか(笑)

ということで、今回は杉並区民の心を満たしてくれる名酒場を改めて紹介いたします。高円寺駅のプラットホームからも見える駅前を代表する焼鳥屋「大将」です。

1977年(昭和52年)創業で40年を迎える老舗。お昼すぎの15時30分の開店で、平日はなんと朝6時まで営業。中央線で飲み屋に困ったら(困らないほど豊富ですが)、まずは大将で戦略会議をたてたい。

 

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駅前ロータリーの一番目立つ場所で、開けっぴろげて営業しているので、酒場ファンでなくとも知っている人は多い。持ち帰りも人気で、早い時間は子供連れの主婦・主夫も幼稚園のお迎え帰りに買っていく姿をみかけます。

私もそんな一人として育ってきました。杉並区民は酒場が日常のあたりまえの風景のひとつで、両親が赤星、私はリボンシトロンというのはよくある流れでした。

 

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大きくなった私もすっかり杉並酒場の風景の一人になれたかな。行き交う普通の人たちを眺めつつ、赤星をトトトっとビヤタンに注いで乾杯です。

飲みたそうにうらめしく見ていく人が多く、目が合うとパントマイム的に手でビヤタンを口に持っていく仕草で「エア乾杯」してくれる陽気な人もいます。

 

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真冬のロータリー飲みはちょっぴり辛いけど、まだまだいける高円寺の夕暮れ。提灯の暖かな波長を浴びたビヤタンと赤星が実にきまっているように思います。やっぱり、ビールは大びんがカッコイイ。

 

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一日数千本を仕込んでも朝には売り切れてしまうほど人気の大将の串は、一本100円から。一種類2本単位の注文になりますが、盛り合わせを頼むと一人であれこれ食べられます。

おまかせ盛りも、「カシラがほしいなぁ」と言うと、結構わがままを聞いてくれる人情たっぷりの店。

 

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メニューでは特別「推し」されていませんが、ここはやっぱりマカロニサラダ(380円)を紹介せねば、店の常連さんに今度会ったときに指摘されかねません。大将のマカロニサラダはたっぷりのツナとドライパセリで香りづけしたもので、玉ねぎの風味と合わせてビールがぐんぐん進む一品。

 

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焼鳥の盛り合わせ5本(560円)。みりんの甘さがしっかりついたクセになる味。さらさらとしていますが、絡み具合が絶妙で、特に香ばしく甘辛の鶏皮は幼い頃から大好物。

 

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長めの串にたっぷりと刺さってこの価格は、さすが愛されるわけです。葱だけでなく部位によってししとうだったりが口直し的に挟まっています。

 

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冬の大将といえばこれ、鶏団子鍋。マイルドと辛口、二種類ありますが、初めての方でも辛口に挑戦してください。辛いのがあまり得意ではない筆者ですが、冷え込む夜の駅前でこれをつつくのは一種の冬の風物詩的な感じで好き。赤星でクールダウンしながら、唐辛子ほか香辛料がたっぷり入った鶏団子をもりもりつまみましょう。

ある程度つくった状態で持ってきてくれますが、それでもテーブルにちゃんと鍋台をセットしてぐつぐつと煮込んで食べさせてくれるのが嬉しい。これで680円は、昔より値上げはあったものの今でもお得感でいっぱいです。

 

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大将は生ビールがサッポロ黒ラベル、瓶が赤星。そして酎ハイもサッポロ焼酎(甲類焼酎)がベースになっているなど、サッポロで一式揃っています。なんでも、大将が日本有数のサッポロ焼酎の販売量を誇るのだとか。

しっかり濃い目、飲みごたえたっぷりのレモンサワーで焼鳥の脂を一度リセットしましょう。

 

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やきとん・やきとりの売れている量がものすごいので、言わずもがな鮮度は抜群。肉汁したたるハツはぜひ塩で。

 

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中央線のオレンジ色に、関東バスの赤、そして焼鳥の茶色。高円寺の風景がここにぎゅっと集まっている感じがしませんか。

高円寺は作家や編集者など出版に関係する仕事をしている人も多く、早い時間はここで校正の話をしている人もいます。焼鳥・赤星を片手に、ゲラがどうのという話ができるベテランに私もいつかなりたいものです。

隣はサブカル系の人でしょうか。漫画のアニメ化についての議論が聞こえてきます。絵に描いたような杉並の一コマがここにある。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

大将本店
03-3312-1047
東京都杉並区高円寺南4-27-9
15:30~翌6:00(日祝は26:00まで)
予算1,800円