恵比寿駅西口を出てすぐ、まだ街が目覚めきらない朝8時にはもう赤提灯が灯る一軒があります。おしゃれな店が立ち並ぶこの街で、昭和の空気をそのままに商いを続ける『たつや 駅前店』。1976年、辰年の辰の日に創業したこの店には、じつは”黒ホッピー”誕生にまつわる知られざる物語の舞台となりました。
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朝8時、恵比寿に居座る昭和の酒場

恵比寿はいまでこそおしゃれな街ですが、もともとはヱビスビールを製造するビール工場に原料を運び入れ、商品を出荷するための貨物駅からはじまった街。ヱビスビールだから恵比寿駅、それがやがて地名にもなりました。

ビール工場は今でこそオートメーション化が進んでいますが、昔は大勢が働く職場で、夜勤の労働者も多くいました。だから恵比寿の街には酒場がたくさんでき、朝から飲める店も重宝された歴史があります。
1976年創業のたつやも、そのひとつ。キラキラになった恵比寿駅前で、ここだけは時間が止まったような昭和酒場です。

大阪から上京してきた店主が、この地に店を構えたのが1976年。奇しくも辰年で、開店の日も十二支の辰の日を選んだという、縁起のいい生まれの店でもあります。今年で50周年!
名物は、黒ホッピー発祥の物語

『たつや』のもうひとつの名物が、ホッピー。焼き台を囲むコの字型カウンターの中にはジョッキ専用の冷蔵庫があり、氷を使わずジョッキ・焼酎・ホッピーをあらかじめ冷やす「三冷ホッピー」を創業当時から貫いています。
開店から2年ほど経ったころ、ホッピーを黒ビール(恵比寿にゆかりのあるサッポロビールが当時取り扱っていたギネスビール)で割って出したところ評判になりました。
まだ黒ビールそのものが珍しかった時代のこと。採算が合わず一度は提供をやめてしまったそうですが、味を気に入っていたファンは多く、やがて帳合の酒販店を通じてホッピーの製造元「コクカ飲料」(現在のホッピービバレッジ)にこの話が伝わります。

1992年、なんとここ「たつや」で飲まれていた黒いホッピーカクテルにヒントを得て、濃色麦芽を使った正式な商品として「黒ホッピー」が誕生しました。たつやは、いわば黒ホッピーの生みの親なんです。
名物「黒ホッピー」と強火で焼き上げる絶品もつ焼き
というわけで、まずは黒ホッピーで乾杯。

このお店は、ジョッキ、焼酎、ホッピーの3つをキンキンに冷やして提供する氷なしの「三冷ホッピー」にこだわっています。キンキンで爽快感たっぷり!ビールよりも軽く、サワーよりもすっきり。何十年ともつ焼きとペアを組んできた理由が改めてわかります。
一日中仕込む、新鮮なもつ焼き

入口に向いた焼台では、焼台の幅いっぱいに串を並べ、強火でがんがん焼き続けています。

豚のもつ焼きと野菜串を合わせて全21種類ほど。1本190〜220円、2本から注文でき、塩焼きとタレ焼きが選べます。初めてなら5本のお徳用盛り合わせ(900円)、野菜串盛り合わせ(850円)が安心。

通なら壁の電照式の品書きから食べたい部位を個別にチェックするのも一興です。売り切れると文字に赤いランプが灯る仕組みは、昔の駅の発車標のよう。

普通のもつ焼き屋は開店前の朝に市場で仕入れた肉を下処理して串打ちするものですが、たつやはすでに朝から営業中。夜は23時(日・祝は22時)まで営業しているので、ほとんどの時間が営業中と言えます。

23時まで営業にもかかわらず朝8時にはもう揃っている。どれだけ仕込みが大変か、裏方を想像するとものすごい仕事量です。仕入れはもちろん、芝浦の食肉市場から。

頼んだのは、カシラ、タン、ハツ、レバー、つくねの5本。カラシが添えられ、タレはさらりとしつつも甘め。肉の脂をぐっと包み込む味わい。

ひとくち頬張り、黒ホッピーで追いかければ、朝から最高の気分に。
二番人気、たつや名物がつ刺し

ボイルした豚の胃袋を細切りにし、練り辛子を添えた一品。全体をよく混ぜてから食べると、コリコリとした食感に辛子のピリッとした刺激が絡み、酒が進む名物つまみです。遅い時間には売り切れることも多い。
三番人気、煮込み(湯豆腐)

この日は朝9時に訪ねています。さすがに朝からもつ焼きと煮込み、両方は重たいので、この日は煮込みの豆腐だけが味わえる温豆腐を注文。豚と味噌の風味がじんわりしみ込んだ、優しい一皿です。
朝ならではの、軽やかな一杯

濃い緑色に安心するいつもの玉露ハイをもらって、紫紺色に染まったなすの一本漬けも追加。

カラシをたっぷりつけて鼻にツーンとさせれば、朝の眠気も一気に吹き飛びます。

冷奴やお新香、らっきょう、白菜キムチ、冷しトマト、みそきゅう、枝豆、めかぶいかなど一品料理も豊富。もつ焼き以外でも結構楽しめます。
恵比寿の駅前で味わう充実した朝飲み
50年の時を経て、黒ホッピー発祥の店として語り継がれる、朝8時からの一軒。キラキラの街の片隅で、辰年生まれの酒場が一日をはじめる時間に、ぜひ足を運んでみてください。夕方以降は入れないほど混み合うので、行けるタイミングがありましたら午前中がオススメ。
東京の酒場はまだまだおもしろい!
店舗詳細

| 店名 | 恵比寿 たつや 駅前店 |
| 住所 | 東京都渋谷区恵比寿南1丁目8−1 Stm恵比寿ビル |
| 営業時間 | 8時00分~23時00分 |
| 創業 | 1976年 |
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