私はあんまり渋谷は得意ではありません。
属性でいうのなら、中央線生まれの私は新宿に帰属するのでだろうし、背伸びして遊ぶ銀座・日比谷もどちらかと言うと慣れ親しんだ街。月曜日は半額だからと足繁く通う上野も、酒場の店主や常連からなゆは上野の飲兵衛だと言われるほど歩き回っています。
清龍とは長い関係があるので池袋も得意ですし、飲兵衛たるもの新橋は当然のように目をつぶっても歩けるくらいホームです。
では、なぜ渋谷だけが苦手なのか。
いろいろな要因はあるのですが、基本的に「うぇーい」なノリが嫌いだからなのだと思います。あ、ちなみに「うぇーい」とは、大学のサークルや若い会社員達が乾杯するときに発する単語のこと。
もっとおとなしく飲もうよ。もっと大人の飲み方しようよ。ね、本当に。
渋谷は比較的、うぇーい属が多く、大きな箱の酒場ではまず間違いなく聞こえてきます。なんだよー、こっちは静かに飲みたいんだよ。
でもね、渋谷にも少しだけ”おじさま”が静かに飲むお店は取り残されたように残っているんですよね。
たとえば「細雪」。京王井の頭線の券売機の隣にあるのに、若者はみんなスルー。そこはまるで結界が張られているかのように外の世界から守られています。
自動ドアだったのだけど壊れてしまい、長年放置中の重たいドアをぐっと引きまして、店内に。
だいたい常連さんが飲みながら接客ぽいことをしていまして、「ここ空いてるよ」なんて導いてくれます。素直に従い席に座ると、「なに飲む?」と女将さんがやってきます。
ここはビールはサッポロなので、そちらからスタートしたい気もあるのですが、すでに私、富士屋本店で黒ラベルを飲んできているのでございまして、ここは細雪の基本形、ホッピーで始めましょう。
焼酎が星の位置まで入ったホッピージョッキとホッピー…までは普通なのですが、ここはおもむろにビアタンに何かが注がれて出てきます。
え、ナニコレ。
初めての人はそう思うのですが、
まぁ乾杯しましょうよ!(笑)
私のお気に入り、まずはすぐでるポテトサラダ。別にポテトと言わなくても、サラダはこれしかないので注文は通ります。
卵入りの自家製ねっとりタイプ。写真の見た目通りの味なのですが、これが渋谷においてほっとする食べ物第一号。値段は300円だっけ。あぁ、300円だよ。
さて、氷控えめホッピーなのですが、あのビアタン、実は甲類焼酎がなみなみと入っているんです。ホッピー頼むと、これだけでかなりのアルコール量になってしまうから要注意。でもね、これがここの魅力なんですよねー。
まるでお水を飲んでいるようなビアタンから、ホッピーに時々ナカ追加。いつまでたってもなくならない幸せ♪
なお、甲類焼酎はキンミヤでございますゆえ、ご安心を。
ここでの好物2品目は、イワシフライ。アジフライより20円安い。
イワシフライって飲み屋でもあまり見かけないから、ここにきたら食べたくなるんですよ。いつも大ぶりで身はふっくら。
アジフライは醤油かソースかで揉めるけれど、このイワシフライは新たな火種となること間違いなし。なお、私は醤油派です。
この写真だけみると、浅草の煮込み通りの正ちゃんに見えなくもない。
細雪の常連さんが結構な頻度で注文している肉豆腐なのですが、「”肉”至極控えめ”豆腐”」という言葉の略称ではないかと思えるほどヘルシーで、まさに女子受けが良さそうなもの。いや、そもそもここ、女性はこの日も女将さんと私だけだったし、女子受けとか必要ないのだけれど。
さて、この肉豆腐はリピーターが多いのがうなずけるほど、ホッピーとよく合うのです。かなりコトコト煮こまれた豆腐は中まで味が染みていて、それでも甘さ控えめで食べ飽きない、飲兵衛ならば文句なく食べ干してしまうものなのです。
ホッピーにたっぷりのキンミヤを飲み干して、なんだか物足りないなぁ。もう一度ホッピー頼むと、結構深酒になりそうだし…
ここはおとなしく大関のお燗酒にしておきますか。
お燗器に沈められた大関の小瓶をもらって、梯子酒に旅立つ前の寒さ対策を。
「末端冷え性なので、手先がいつも冷たくて、それを温めるためにはお燗酒が一番です。」なんて会話を女将さんと話したりしながら、ぼちぼち次のお店へと梯子を掛ける頃合いかな。
取り残された空間、酒場のゆるい時間がとても心地いい。それを強く感じる細雪でした。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見なゆ)
細雪
電話不明
東京都渋谷区道玄坂2-8-9
17:00 – 22:30(土日祝定休)
予算1,900円