南千住はつくばエクスプレスの開業や墨田区の方針もあり、数年前に駅前ロータリー周辺が大幅に変わりました。
昔は風情があったのですが、今は高層マンションや新しく住む人向けのスーパーマーケットなどが立ち並び、私鉄の新興住宅街のような雰囲気すら漂います。
もともとここは、江戸時代は小塚原なんて言われていた場所で、その後も貨物駅や都営バスの車庫など、一種独特な雰囲気のある駅前でした。
山谷も近いことから、まぁそれは…って、街の歴史は専門家にまかせて、私は酒場の話しに戻ります。
駅前には安い酒場が多かったです。今でも、大坪屋さんなど残っていますが、駅前にかまえていたお店はひと通り高層マンションの中にテナントとして移転しました。
ここの「カミヤ」もそのひとつ。
店名でお気付きの通り、人形町に本店を持つカミヤからの暖簾分けでして、新橋や新宿、板橋本町にもお店がありますね。
カミヤのきまりは、一人n本縛り。(nは店によって変わる)
南千住のカミヤは、その中でも最大の10本縛り。これは空腹でないと食べきれません。それでも、やっぱり食べたくなるんだよね~。
キレイな高層ビルの半地下、店構えは新しくとも年季の入った暖簾がいい味出しています。
いらっしゃい!小上がりへどうぞ。
ここの構造はもつ焼屋の基本形とは異なり、焼き台を手前にカウンターが数席、その奥は窓に向いて吸う人座るこれまたカウンター。そして、グループ客はみんな小上がりへという感じ。
そこのお姉さん、秋口から冬、ここへはブーツできてはいけません(笑)
さて、ビールにする?
左がガラナハイ。右はホッピーで三冷(氷なし・グラス+焼酎+ホッピーが冷やされているもの)です。
ガラナハイは天羽飲料有限会社のニューガナー。(天羽飲料は下町の謎の酎ハイエキスメーカーのこと)
はい、乾杯!
お隣のお二人様サラリーマンは営業職でしょうか。30代くらいで先輩が連れてきているよう。
じゃあ、カシラタレで10本、ハツは塩で10本ね。
え、ええー(笑)
同じのばかりそんなに食べられないよ。といつもながら、びっくり。
そうなんです。このお店は10本縛り。お一人様10本食べていってねと書かれています。これが大変。小食な女性は大食漢の男性とどうぞ。もつ焼なら無限に食べられるという人は20本どうぞ。
ちなみに、適当に盛り合わせっていうのも頼めますので、普通はこっち。
まずは塩から。カシラ(アブラ多いとこ)にハツ、タン、ナンコツなど。大ぶりで、丁寧な仕事を感じる串打ちの感じ。これが好きなんですよ―。ハフハフ、うん、美味しい。
ガラナっていうのは、とても甘くてコーラのような味なんです。だから、二杯目は無難なものがいいのです。
無難なものって言えば、やはりホッピーかな。黒ホッピーをお願いします。
泡立ち具合、冷えてキリっとしたまま喉を通過する炭酸。
続いてタレが焼けました。
実のところ、串が焼けるまでにスピードメニューの素敵な”刺し身”を食べているのはここだけのヒミツ。チレ刺し、ガツ刺しなどなど。
さて、タレの方はつくね4本を基本にハツやレバーをひと通り。とろみのあるタレは、やっぱりカミヤの伝統ね。この照り感が眠っていた食いしん坊魂に火をつける。そして、ホッピーは無限のごとく流れこんでいく。
お漬物は適度に味の素がかかっていて美味しい。もつ焼屋のお新香は、この白い魔法の粉がかかっていたほうが私は好き。
きゅうりの浅漬で口の中をさっぱりとしつつ、左手に串、右手にはホッピージョッキ。口からでる言葉は、ひたすらもつ焼トーク。
こんな夜もいいよね。
え、酒場慣れしすぎている女は可愛くない?
いやいや、だって、ひとり10本縛りだもん。がんばるさ、そりゃ。
その後も続々とお客さんが入ってきて、私たちが帰る頃には満席に。
このへんに越してきたばかりのような家族連れの姿があったのは嬉しいです。
こういう下町の定番酒場はオジサンたちだけでなく、みんなで通って受け継いでいかなくちゃね♪
最後にキリンラガーを一本飲んでごちそうさま。
とにかくモツがたらふく食べたければココで間違いなし。常磐線は、日暮里・南千住・北千住・綾瀬と酒場が連なる路線。ご近所さんだけでなく、城西にお住いの皆様もぜひ。
ごちそうさま
(取材・文・撮影/塩見なゆ)
カミヤ
03-3806-4954
東京都荒川区南千住7-1-1 アクレシティMB102
17:00~21:00(日祝定休)
予算2,000円