水戸街道の宿場町・取手。昔も今も<東京と水戸を繋ぐ交通の要衝です。上野からはJR常磐線の快速電車で35分、東京に一番近い茨城の街へ、気まぐれ酒場旅にきました。
旧本陣の近くには古くからの飲み屋街があり、個人系の酒場が充実しています。その中でも、おすすめしたい老舗が、1975年(昭和50年)創業の大衆酒場さつまです。長禅寺三世堂の丘を囲むよう扇型をした独特な飲み屋群にある、一際渋い建物です。
取手にはキリンビールの工場があることから、特製のポスターがいたる所に貼られています。横浜・生麦と並び、首都圏にビールを供給する拠点で、取手の街を代表する工場のひとつです。
世間の定時である17時よりも、一足はやく暖簾がでる「さつま」。さらに、開店に合わせて次々と地元在住の常連さんたちが集まってきます。まさに、地元密着の飲み処です。
小上がりと、L字カウンターだけのコンパクトな店は、まだ明るいうちから賑わいます。
ご夫婦で切り盛りされるアットホームな酒場。お客さんも近所の方が多いので、皆さんの会話はまるで井戸端会議のよう。
看板料理は長年継ぎ足してきた特製タレを使うもつ焼きです。さらに、女将さんが担当する炒めものや簡単な小鉢が脇を固めています。
そして、なんといっても魅力的な安さ。このご時世でも、もつ焼きは4本320円とお小遣い値段。お通しもなく、チューハイやウーハイ300円を適当に飲んで千円ちょっとの仕上がりです。
取手の街をカップ麺の街(大手即席食品企業の工場もある)と言うのは、お酒が飲めない人。お酒好きは、やっぱりコレでしょう。取手工場(24)醸造の”地元ヒール”一番搾り(大びん600円)で乾杯!
もつ焼きの箸休めに冷やしトマト(220円)がいつもの組み合わせ。もつ焼きも安ければ、小鉢も安いです。丸椅子に楽な姿勢で座って、好きな感じに食べて飲んでいれば、緩さという癒やしがあります。
もつ焼きはお任せで。味は濃厚さがビールを進ませるタレで焼いてもらいました。ご主人がもくもくと調理します。
小ぶりながら、タレの照りが見るからに美味しそう。漂う焦げた醤油と味醂の風味が誘います。
肉の味もつよければ、タレの味もしっかり。コクある余韻にビールが止まりません。
そして、もうひとつ。自家製のつくね(170円)は、口の中でほろほろになる柔らかさ。これに特製の辛味噌を塗っていただきます。
とろとろになった煮込みも、くさみがなく美味しいと評判です。
いまどき、野菜炒めが300円で食べられる飲み屋は貴重です。日頃の野菜不足をいっきに解消と頼みました。キャベツの裏から豚バラがでてくる嬉しさ。
東京から一時間もかからないのに、すっかり旅行気分。ベッドタウン化が進む中、いつまでもこんな飲み屋街が残って欲しいですね。
千円ちょっとで飲みたいとき、「さつま」の暖簾をくぐってみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
さつま
0297-73-4932
茨城県取手市取手2-9-16
16:30~23:00(日定休)
予算1,800円