四日市「あさひ食堂」 重工業地帯を抱える町の労働者食堂で昼酒を

四日市「あさひ食堂」 重工業地帯を抱える町の労働者食堂で昼酒を

三重県の経済の中心は、県庁所在地の津ではなく、工業地帯を抱える港町・四日市にあります。また、鈴鹿山脈と伊勢湾に挟まれた土地は水質が優れており、昔から日本酒づくりが盛んです。

お馴染みの「神楽」、全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞した「噴井」大吟醸や、地場の定番「天遊琳」、「三重の寒梅」などがありますが、酒場好きの間ではキンミヤ焼酎を製造する宮崎本店の「宮の雪」が有名でしょう。

また、東洋紡発祥の地であり、街の中心から近い場所には広大な重工業地帯が広がる労働者の街でもあります。そんな三重県四日市、やはり駅前には働く人たちの昼酒処の銘店があります。

ここ「あさひ食堂」は、近鉄四日市前に広がる横丁においてひときわ賑わう飲み屋です。店名には食堂とつきますが、店の看板には大衆盛場・旭の文字もあり、昼から多くの人々がほろ酔いになっています。

 

蛍光灯が照らす典型的な昭和食堂で、テーブル席がずらりと並ぶ比較的大箱のお店。せわしなく常連のオーダーに応えるお姉さんたちが、昼から酔っ払う人々と上手に付き合っています。

店の奥にある冷蔵ショーケースから、食べたい料理を自分で選べるスタイルです。クロマグロ、ビンナガ、キハダとまぐろが並び、トロから赤身刺し、ぶつ切りまで様々。刺身が多いですが、食堂の定番、鯖煮やスパサラなども魅力的。天ぷらは見本代わりに置いてあり、注文すれば別に揚げたてを出してくれます。

 

三重県はまぐろの水揚げが養殖、天然含めて豊富な地。南伊勢町のリアス式海岸を活用したクロマグロの養殖が盛んですし、近海マグロも尾鷲でメバチが大漁という話も飲食系の業界紙に並ぶ言葉です。

海に近い労働者の食堂。美味しいマグロがワンコインで食べられるのは実に羨ましい。

ビールは生と瓶でアサヒスーパードライがあり、瓶ではキリンラガー(RL)も選択可能です。店名に敬意を払いアサヒと行きたいところでしたが、ここに来る前に実はドライをたっぷり満喫していたので、ここはキリンでご容赦を。あれ、私は誰に謝っているのかな。

では、乾杯!ガツンと苦いキリンラガーは脂がのった刺身にも好相性。

 

それにしても立派なまぐろです。ねっとりとした食感、ぴしっとたった角も美味しさのポイントです。合盛りのブリももちもちぷりぷり、たまらない。

 

四日市といえば、豚料理も人気です。豚汁は中京圏らしく赤味噌です。まるで味噌煮のようになっていますが、丼いっぱいに盛られてきて、これはもう液体おつまみです。

四日市の豚料理といえば「とんてき」ですが、あさひ食堂にも扱いあり(1,100円)。にんにくたっぷり、分厚くボリューム満点で、梯子酒中だとちょっと躊躇。

ちょうど隣の常連さんがとんてきをつまみに焼酎お湯割りを飲んでいましたが、そういうのもいいな。まだ正午前なのに、もうすっかり出来上がっているお父さんたち。会話から、どうやら夜勤明けのようで。お疲れ様でした。

 

今年で創業61年目に突入したあさひ食堂。うどんからカレーライスまでなんでもござれの昭和食堂ですが、まだまだ街に必要とされている感がばんばん伝わってくる元気なお店です。

イオン発祥の地・四日市は、どうしてもロードサイド店舗中心になりがちですが、この街も昼から飲み屋が盛り上がっています。空洞化の解決策に、酒場が力になるかもしれません。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

あさひ食堂
059-352-7752
三重県四日市市諏訪栄町6-15
11:00~21:00(火定休)
予算1,200円