池袋「大門」 家族経営の温もりを感じる、大衆酒場の王道を味わう

池袋「大門」 家族経営の温もりを感じる、大衆酒場の王道を味わう

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池袋の駅周辺は老舗のもつ焼き屋が多い。それは戦後の東京の発展と深い関係があります。

 

昭和初期の池袋は、国鉄の東海側と東北を結ぶ物流の大動脈でした。現在は湘南新宿ラインがそのルートをつかって東海道線と宇都宮線を直通で結び、貨物列車はバイパスとなる武蔵野線を経由していますが、当時はここが日本の物流のボトルネックのような路線でした。それは、戦時中ともなればなおさら。

池袋駅をはじめ、新宿や新橋などの重要な駅周辺は、空襲の炎から鉄道設備を守るために建物を立ち退かせて空き地が設けられました。それが、敗戦後の人・土地・流通の統制の混乱によって、空き地は勝手に市場がつくられ、闇市と呼ばれ現在の横丁へとつながっていきます。

食肉が仕入れられない中、モツを食べさせるお店が増えてゆき、高度経済成長からオイルショックの時代には闇市が横丁へと姿を変え、モツと連続式蒸留焼酎は安価でカロリーもあることから、闇市後の大衆食堂・大衆酒場の定番となりました。池袋もそのひとつなのです。

 

そんな背景も知った上で池袋の大衆酒場を巡るのは、ワイワイとまわるのとはちょっと違った楽しさがあります。結局はおいしく楽しく酔っ払うんですけれどね(笑)

 

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今回ご紹介するお店は、そんな池袋のもつ焼き老舗の一軒「大門」です。石川県出身の店主が昭和51年に脱サラして始めたお店で、当初は赤羽で、そしてすぐに池袋に移転し、現在に至ります。

池袋店と書かれているのは、修行したお店から暖簾を分けてもらったからと聞いたことがあります。

 

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入り口は間口の狭い階段で、どんなお店か降りるときは不安になりますが、地階の店内は予想以上に広く、蛍光灯の光もあってかとても明るく感じます。厨房に立つダンディーな白髪紳士の店主を中心にした家族経営の酒場です。

カウンターが特等席ですが、テーブル席も居心地がいい。コンクリートの建物なのに意外なほど声の反響がなく、メートルのあがったお父さんたちが騒いでいてもさほど気にならない。たぶん壁の木や一面の短冊が吸音しているのではないでしょうか。

 

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メニューはビールがずっとアサヒ。池袋の老舗はアサヒビール率が高く、かわらぬ景色がほっとします。大樽も瓶もアサヒスーパードライ。焼酎はアサヒの甲類「SUN 燦」が人気です。ボトルを入れて腰を据えて飲みたい。味は大手焼酎メーカーのものよりも辛口で、きりっとした味わいです。

 

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大門の分厚いテーブルに銀色のビール。働く人たちの癒やしの空間の大定番。それでは乾杯!

 

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もつ焼きと煮込みが名物ですが、サイドメニューも多くどれを頼むかいつも悩みます。大門納豆はスタミナ納豆とかバクダンと言われる豆腐や卵黄がはいったもの。さらに日替わりの黒板メニューには刺身類もあって、週に2・3くるという常連を飽きさせません。

 

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濃厚な味わいで旨味がつよい大門のタレで焼いたもつ焼き。2本単位で注文可能で、おすすめはカシラとシロです。

シロは一般的な大腸ではなく、直腸をつかっていて肉厚で噛むと肉汁が滴るほど。しっかり味のあとにグイグイとスーパードライを飲むのが心地良い。

 

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もつは市販のものではなく、まるまま仕入れてきて店で毎日仕込んでいると聞きます。鮮度のよさもそうですが、なにより仕込みが上手で臭みや余分な脂がとられていて、モツの旨味をすっきりと味わえるのが大門の魅力。名物の小鍋で提供される白味噌ベースのモツ鍋にも、シロがたっぷり入っているにも関わらず目立った油分が浮いていなくて、モツ処理の腕のよさが伝わってきます。

根菜でえぐみをごまかさず、下ごしらえで真っ向勝負の煮込みを始め、ぜひあれこれ試してみて欲しいお店です。

ホッピーセットが380円とリーズナブルなので、ちょいちょい摘んで飲んでも千円台で収めることも余裕。知らないともったいない酒場です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

大門 池袋店
03-3985-1558
東京都豊島区西池袋1-13-7 寿ビルB1F
16:30~24:00(日定休)
予算1,800円