【閉業】米原「三松」 琵琶湖畔の地元愛され食堂で郷土の幸を

【閉業】米原「三松」 琵琶湖畔の地元愛され食堂で郷土の幸を

2016年10月1日

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何を思ったか米原で途中下車。月に何度もお世話になっている東海道新幹線ですが、米原はいつも通り過ぎる駅。

「あ、米原を通過したからそろそろ京都、降りる準備をしなくちゃ。今宵は四条河原町で飲もうかな…」なんて考えているあたり。

でも、考えてみれば滋賀県で唯一新幹線が停まる駅なんですよね。

戦国時代までは栄えていましたが、以後は鉄道が開通するまでずっと琵琶湖畔のいち農村でした。江戸時代以前の大動脈、東海道は伊勢から草津を通り京都へ繋いでいましたから、ここが主要ルートに入ったのは東海道線が開通する近代になってからのこと。

とくに宿場でもなかった(離れた場所に中山道の番場宿はあります)こともあり、駅周辺は駅そのものの規模と比べ驚くほど寂しい。大きな施設は、最近できた東横インと、鉄道の街らしく巨大なJRの施設、あとはパナソニック電工の工場などがあるくらいで、琵琶湖漁業の静かな港街です。

 

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駅前はほとんどお店がありませんが、役所の方へ少し歩いたところにいい感じの食堂兼飲み屋「三松」があります。これがとても素敵で、あえて途中下車してまた飲みに行きたい名食堂なのです。

琵琶湖畔とはいえ、米原は豪雪地帯。入り口が二重扉になっています。店内は小上がりとテーブルが並ぶ程よいサイズ。優しい女将さんが迎えてくれました。家族経営の温かな接客が嬉しい。

 

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壁のあちこちに貼られた短冊メニュー。生姜焼きや焼きそばなど食堂らしい品書きの中に潜むご当地つまみあり。びわます刺身とか、ワカサギなど、琵琶湖から水揚げされる淡水魚の料理が揃います。特にびわますは、琵琶湖にしか生息しない固有種で県外ではめったに食べられません。

 

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近くが磯漁港があり、湖を仕事場にしている人たちが食事に立ち寄る光景も見られます。働くオトコメシはサービス満てんです。

 

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ビールは生がキリン一番搾り、瓶ビールでラガーとアサヒを置いています。昼から飲んでいる人もいて、いい感じのゆるい空気が漂っています。奥で飲むお父さんたちは、夜勤明けの鉄道マンのよう。

 

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私も常連さんのゆったり昼酒につられて(むしろ、これが目的というか)瓶ビールで乾杯。

季節柄、キリン秋味がでてきました。麦芽量が多くしっかり苦い、度数もやや高くキリンらしいガツンとくる飲み心地。

 

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黒ばい甘煮をもらって、ちびちびと。いまがちょうど旬、敦賀・福井、北陸周辺の庶民のつまみはやっぱりこれでしょう。

 

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米原は琵琶湖畔でありつつ、日本海も近い。文化や食材が関西・東海、そして北陸とが混っています。ばい貝と琵琶湖の鮎を同じテーブルに並べて摘める贅沢。米原で途中下車してよかったです。

 

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滋賀のお酒といえば七本槍と喜楽長。定番酒もありますが、せっかくなので喜楽長を冷(東近江市・喜多酒造)でもらいましょうか。

 

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普段は本醸造あたりをがぶがぶ飲む派なのですが、くしゅっとしたきめ細かな食感の優しい鮎にうまみ優しい純米吟醸の風味が絶妙です。たまの吟醸という贅沢もいいもので。

 

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ぐじの塩焼きがあったので、好物だからと思わず注文。大きいものは観光客向け、地元は小さいのを食べるんだよと教えてもらったことがありますが、まさか街の大衆食堂でぐじがあるとは。お酒をもう一合、次は七本槍(米原からも近い長浜市・冨田酒造)にしましょうか。

 

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最後に粕汁をもらって大満足。地元の人は当たり前と思っていても、東京の酒場と比較すると様々な違いや、そのリーズナブルさに感動することも多い。

いつも通り過ぎている米原にも、こんな素敵な食堂があるんです。美味しいものを食べに、いつも降りない駅にちょっと下車して初めての暖簾をくぐってみてはいかがでしょう。いい出会いがあるかもしれません。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

三松
0749-52-1218
滋賀県米原市下多良1-156
11:30~14:00 16:30~21:00(お昼から飲めます・不定休)
予算1,800円