銀座5丁目、ビルが立ち並ぶ景色に黄金色の稲穂が揺れる。そんな不思議な光景が広がるのが、白鶴酒造(神戸市)の東京支社屋上にある「白鶴銀座天空農園」です。2025年10月23日、ここで同社オリジナルの酒米「白鶴錦(はくつるにしき)」の稲刈りが行われました。収穫された酒米は、醸造のため神戸市灘へ送られ、日本酒となって再び東京に帰ってきます。2度富士山の前を通るので”往復富士見酒”ですね!

ビル風の中で行われた19年目の稲刈り

2007年にスタートした「天空農園」での米作りは、今年で19年目を迎えます。銀座から日本酒文化を発信することを目的に始まったこの取り組み。当日は、白鶴酒造の社員や関係者約30名に加え、2025 Miss SAKEの平野さん、福岡さんもゲストとして参加しました。

広さ約110平方メートルの農園で、参加者たちはビル群を背景に、鎌を使って手際よく稲を刈り取っていきます。5月22日に田植えが行われた稲は、見事に黄金色に実っていました。
酒米の王の「兄弟」白鶴錦と、屋上ならではの苦労

ここで栽培されているのは、白鶴酒造が独自に開発した酒米「白鶴錦」(2007年品種登録)です。酒米の王様「山田錦」の親にあたる「山田穂(やまだぼ)」に「渡船2号(わたりぶねにごう)」を交配させて誕生した、まさに山田錦の「兄弟」といえる品種。大粒で心白(しんぱく)が大きく、酒造りに適したお米です。

屋上での米作りは簡単ではないそうです。土の深さは約15cmと浅く、夏場には水温が40℃近くになることも。さらにビル風の影響も受けるため、水の管理や温度調整が非常に重要とのこと。

昨年の生育不良を踏まえ、今年は新たな試みも導入されたそうです。白鶴酒造が過去に京都大学と共同研究していた「メタノール資化生菌(メタノールしかせいせいさんきん)」という微生物を含む資材を散布する対策などを実施。その甲斐あってか、今年は順調な生育だったと関係者も安堵の表情でした。
昨年の米は、40本限定の純米大吟醸に
この天空農園で収穫した「白鶴錦」を100%使用したお酒は、毎年銀座で数量限定で発売されています。

2024年収穫分(去年のお米)は、精米歩合50%まで磨かれ、白米で約15kgに。神戸市にある白鶴酒造資料館内のマイクロブルワリー<HAKUTSURU SAKE CRAFT>で、すべて手作業で丁寧に仕込まれました。
こうして完成した「白鶴 翔雲 純米大吟醸 銀座天空農園 白鶴錦」は、今年(2025年)6月11日にわずか40本限定で発売。価格は10,700円(税別)で、銀座三越や松屋銀座本店など、銀座の限られた店舗のみで販売されました。

嬉しいことに試飲させていただきましたが、フルーツのような華やかさと、米の上品でふくよかな甘みが印象的でした。
銀座の屋上から広がる酒文化の輪

今回(2025年10月)収穫されたお米も、11月の穀物検査を経て、来春過ぎには仕込みが始まります。どのようなお酒になって私たちを楽しませてくれるのか、今から楽しみです。
また、稲わらも捨てられることなく、堆肥として再利用されたり、都内の飲食店で正月飾りの材料として活用されたりしてきたそうです。
銀座の屋上で米を育て、収穫し、酒文化につなげていく。都会の真ん中で続けられる地道な活動が、日本酒の魅力を改めて伝えています。
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