豊洲市場『鮨文』江戸時代から続く市場最古参。天然物と伝説のタレで握る本物の江戸前寿司

豊洲市場『鮨文』江戸時代から続く市場最古参。天然物と伝説のタレで握る本物の江戸前寿司

豊洲市場の場内では多くの寿司店が切磋琢磨していますが、最古参は江戸時代・日本橋魚河岸から続いてきた『鮨文(すしぶん)』です。その歴史は180年以上。こだわりは天然物のネタのみを使うこと。

そんな名店ですが、ここは市場の場内。開店は早朝6時30分からと早く、お昼すぎには暖簾をさげてしまう午前中だけたのしめるお寿司屋さんです。朝飲み好き必見!

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近代的な豊洲に息づく江戸の伝統

現在の鮨文

近代的な施設が並ぶ豊洲市場。目指す『鮨文』は、水産仲卸売場棟の3階、飲食店が軒を連ねるフロアにあります。 その歴史は驚くほど古く、創業は江戸時代末期。日本橋の魚河岸にあった屋台がルーツだそうです。

築地市場時代

その後、築地市場を経て、2018年にここ豊洲へと移転しました。市場の変遷を見守り続けてきた寿司店。家族経営ということもあり、築地時代の昔話もお話しくださいました。

店内はカウンターのみ12席ほどの、こぢんまりとした空間。

壁には、さかなクンさんがフリーハンドで描いたという魚のイラストが飾られています。

いきなりクライマックス。「おまかせコース」を堪能

まずは軽くつまんでリラックス

キリンラガービール中瓶

まずはキリンラガービールをもらって朝から乾杯。

この日のお通しはとれたての生しらす。プリップリで爽やかな風味。鮮度の良さが食感から伝わってきます。

いまは貴重なイカの塩辛

続いて、自家製のイカの塩辛で日本酒を。柚子がふわりと香り、これだけでお酒が進んでしまいます。

日本酒は九頭龍

さて、握ってもらいましょうか

オススメは「おまかせコース」(6,600円)。注文すると、コースはいきなりクライマックスから始まります。

口に入れた瞬間、体温でとろける大トロ。そして、思わず笑みがこぼれるほど山盛りのウニ。まずこの二貫で度肝を抜かれました。濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。

天然ウニ

『鮨文』のウニは一口で食べきれないほど山盛り。常連さんは少しつまみとして楽しんでから、軍艦を持ち上げていました。大きく開けて一口で食べるのがもったいないほどの豪快さです。

続いて、スジがなくねっとりとした本マグロの「天身(てんみ)」(赤身の中心部分)、旨みが力強い車海老と、唸るような握りが続きます。

蒸し車海老

酢飯は伝統的な白シャリで、大ぶりなネタに対してやや小ぶり。酢がしっかり効いていて、濃厚な天然ネタの味を見事に受け止めています。

タイラガイ
シンコ(左)とアワビ

風味豊かなタイラガイ、コリコリとした食感の天然アワビまで登場。

皮が柔らかい一枚付けのシンコ(コハダの稚魚)も、これまでの常識が変わるような美味しさでした。ネタ一つひとつに丁寧な「江戸前の仕事」が施されているのが伝わってきます。

歴史を味わう、伝説の穴子

そして、いよいよ『鮨文』の魂とも言える穴子が登場します。 この店には、創業以来180年以上、継ぎ足しで使われてきた秘伝の「煮詰め(ツメ)」(穴子用の甘いタレ)があります。第二次世界大戦中、空襲から守るために、このタレが入った壺を築地本願寺の境内に埋めて戦火を免れたという、まさに店の宝なんです。

その伝説のタレでいただく穴子は、驚くほどトロットロ。あまりの柔らかさに、職人さんから「手でどうぞ」と勧められるほど。口に運ぶと、ふわっと溶けていくような食感と、歴史の重みを感じる深遠な味わいが広がります。私が今まで食べた穴子のイメージが覆されました。

旬の追加ネタと、市場寿司の醍醐味

美味しいお寿司と楽しい会話。お酒も進みます。 ちょうどこの日は見事なサンマを仕入れたという話をご主人から伺い、思わず一貫追加でお願いしました。脂がのって甘く、忘れられない味になりました。こういうやり取りも市場の寿司店ならではの醍醐味ですね。

これだけ食べて飲んでも1万円ほど。市場でとびきり美味しい江戸前寿司が食べたい。そんな時には、やはり『鮨文』です。

市場で本物の江戸前寿司を

豊洲市場の「鮨文」は、朝6時半から営業しています(14時頃まで)。市場のお休みにあわせて水曜・日曜・祝日はお休みなのでご注意を。支払いは現金のみです。 ゆりかもめ「市場前駅」から直結。寿司好きでしたら、この歴史ある味を体験しに、一度は訪ねてみてはいかがでしょう。

さかなクンさんをはじめ、多くの魚好きの食通が通うというのも納得です。

店名鮨文
住所東京都江東区豊洲6丁目5 豊洲市場6街区 水産仲卸売場棟3F
営業時間6時30分~14時00分
水日など休市日定休
創業1800年代中頃