栄『夜来香栄本店』は昭和30年創業の町中華。名古屋の焼餃子はここから始まった！

名物の餃子は、なんと一日に1万数千個を包むと言う。

栄の『夜来香（えいらいしゃん）』は、名古屋を代表する町中華のひとつです。有名店ながら純朴な雰囲気で癒やされます。お酒が充実しており、「中華飲み」好きにはたまらない一軒です。

ここは栄で働く人のオアシス

名古屋発の中華といえば、台湾ラーメンや手羽先料理が有名ですが、老舗の餃子だって負けていません。今回ご紹介する『永来香』は名古屋で初めて焼餃子をだした店として、名古屋の歓楽街・栄では大変有名な老舗大衆中華です。

この店を教えてくれたのは、近くに事務所を構える酒類メーカーに勤めていた方。『永来香』は名古屋勤務時代の思い出の味なのだそう。お昼から夜まで通しで営業しており、オフィスで働く人から栄の夜を支える皆さんまで、幅広い層の胃袋と活力を支えていた『永来香』。そう聞くと気になりますよね。

創業は1955年（昭和30年）。終戦後、大陸から引き揚げてきたは小縣氏が、うなぎ店、バーなどを運営する中、バーを中華料理店に業態変更し、『夜来香』は誕生しました。その頃、名古屋では焼餃子を提供する店はなく、当時の日本では貴重だった餃子専門店を食べ歩き、大陸とも違った餃子を研究したそうです。

「70年近く続く栄の老舗中華料理店」と聞けばハードルが高い店に思えるかもしれません。『夜来香』は、その逆です。むしろ、巷の町中華よりも良心価格で、なおかつ大変親しみやすい接客で迎えてくれます。

「いらっしゃい！」

お店の皆さんはベテラン揃い。お客さんを気遣いながら、ちょっとした雑談まじりで接してくれるので、きっと初めての人でもすぐにホッとするはず。

白いテーブルクロスにアンティークな椅子が並ぶレトロな佇まいが嬉しい。長年多くの人が利用してきた店特有の熱量のようなものが感じられます。

なにより驚きなのは、使い込まれ雰囲気の中華料理店ながら、隅々まで清潔感があることです。さすが、長く続く店は違います。

樽生ビールは、アサヒスーパードライとサッポロ生ビール黒ラベルの2種類を置いています。皆さんはどちらを飲みますか？この日のわたしは黒ラベル気分。それでは乾杯！

餃子1人前は10個で450円と単品でもかなり良心的なのですが、ランチセットや晩酌用のお得セットだと、さらに”お値打ち”なんです。

スペシャルランチは、餃子とチャーハン、卵スープつきで750円！ちゃんと利益がでるのか心配になる安さです。

ホールのお姉さん曰く、「お昼でも、みんな餃子は食べたいでしょ。でも追加でチャーハンを頼むと高くなっちゃう。だからセットが大人気なの」とのこと。感謝しかありません。

餃子は1日に1万数千個を包むこともあるそうです。皮はかなり薄く餡が透けています。焼き目側以外はワンタンのような”チュルリ”とした食感です。

餡は野菜比率が高く、ふわふわとしておりペロリと食べられる軽さ。キャベツに加え玉ねぎが多く入っていることがわかります。余韻にわずかな大蒜の風味があり、そこにめがけて、黒ラベルを一口。たまりません！

オーソドックスなチャーハンも、ビールと相性ぴったり。パラパラに仕上がっていて、叉焼から広がった旨味が全体にコクをつけています。

繁華街・栄とはいえ、こうした歴史ある大衆中華が残っていることは奇跡です。町中華で飲むことがお好きでしたら、ぜひ訪ねてみてください。安い、美味しい、アットホーム。栄の真ん中にあっても一人で安心して楽しめます。

通し営業なので、お昼からゆっくり飲めるのも嬉しいです。

（取材・文・撮影／塩見なゆ）