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千歳船橋に角打ちがある。
という前置きはさておき、経堂で地酒・鮮魚を掲げる酒場「スエヒロ」をご存知でしょうか。経堂や千歳船橋で飲む人たちにはメジャーなのですが、まだまだ都内全域、いや小田急線利用者にも知名度はさほど高くはないように感じます。
ぜひ、ご近所さんだけでなく、酒場好きなSyupoを御覧の皆さまに知っていただきたく、取材をしてまいりました。
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ところで、不思議と経堂は魚介類を扱う飲食店が多い。
小田急線の急行停車駅の中では比較的存在感が薄いようにも思えますが、新宿から急行でたった12分という距離にありながら、別世界のゆるい雰囲気が漂っています。お隣の下北沢とは大違い。
私が小田急の宣伝マンだったら、「おとなになったら、経堂で。」とかそういうコピーをつけたい。あ、ローカライゼーションを進めているビール会社さんもぜひ!(笑)
もともと小田急電鉄でもっとも新宿寄りのある車両基地が設けられた駅で、小田急開通の頃の航空写真には田畑ばかりが目立つ場所。いまや住宅・マンションが立ち並びますが、小田急の車庫も東側の留置線群を僅かに残すだけで、跡地は小田急OXを核とした経堂コルティに生まれ変わりました。
駅を降りるとこの経堂コルティが大きくキレイで目立つのですが、古き良き商店街、というか飲み屋街はこの裏手にあります。小田急電鉄の社員が仕事終わりに引っ掛けるような場所、というと想像がつきますか。
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経堂西通り商店会のなかの一軒が、この「スエヒロ」です。地酒天国とかかれた電照看板と、赤と青の大胆な配色が目印。となの飯家ヒロとの関係が気になりますが、現在は営業していないようです。
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店先に掲げるホワイトボードには接客トークがびっしりと。お通しは日が変わる直前まで”ただだよ”。
酒場巡りをしている人には、ここまでしないと人が来ない店?もしかして…と勘ぐるかもしれませんが、全然違う!
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18時の回転よりちょっと前から予約客と常連さんがどっと集い、暖簾がでて30分もしないうちに満席となるのです。4人テーブルが数卓とカウンターで10人弱が入れる、決して小箱というほどでもないのに、すごい人気ぶりなのです。そして、ほとんどの方が地元の人。
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花板の前が特等席。大将が注文を受けてから次々とさばく魚介類はどれも新鮮です。サクではなく、まるまる仕入れている魚が多く、刺身、煮魚、焼き魚、アラとすべてを手際よく調理していくのは、それだけで酒の肴。
ビールはアサヒスーパードライ。ここの生ビールも状態抜群です。では乾杯!
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“ただだよ”のお通しは、いつも暖かいものを出してくれます。居酒屋で最初に口に含むは乾杯のビール、最初に食すのはお通しなわけですから、ビールとお通しがしっかりしているお店は安心と期待が持てます。この日のお通し「つぶ煮」だけで十分満足。
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ビールは瓶・生とも550円、酎ハイは380円、深夜までやっているので深夜組はウコンハイが人気だとか。グランドメニューだけでも楽しいのですが、ここは日替わりが激しい。
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もう、どうしちゃったの!?というほどの日替わりオススメたち。刺身は380円で今日はこしょう鯛。カマス、アイナメ、まぐろのほほに、スズキ、サザエ、ホッキ、大カサゴまで。築地の場外食堂よりも種類豊富な魚介類。しかも安い。
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「当店は、煮魚・焼魚は生から調理しています。」という案内。はい、よろこんで待ちます、期待します!
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こしょう鯛はこれで380円。分厚く、そして包丁の入れ方もこの価格帯とはおもえないほど。ほどよいモチモチ感で、美味しくなる頃合いをよくわかっていらっしゃるように思います。
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天然帆立なんて書かれたら、頼むしかないでしょう。店内にふんわり浜焼きの香りが漂ってきたら焼き上がり。カウンター越しに大将が「はいよ、ホタテ!」と。
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こりゃ、日本酒を飲まないはずがない。こだわりの地酒で、〆張鶴や刈穂、久保田に獺祭と新旧人気銘柄が揃います。
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さらに「今日のスペシャル」と貼られた項目に、日高見600円が360円という特売が掲示されています。刺身(380円)、ホタテ殻焼き(450円)、そして日高見。まさに天国です。
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最近の地酒ブームよりも前から全国の日本酒を集めていたスエヒロ。話題銘柄と伝統銘柄がバランス良く混ざり、日本酒好きには幅広く満足できる内容です。
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唐揚げや野菜炒めなど海鮮以外もバランス良くあるので、魚中心で飲みつつも普通の酒場気分で何を食べるか決めずにふらりときても、きっと食べたいものが見つかりそうな酒場です。
営業はなんと朝5時まで。夜の酒飲みの味方。深夜であっても妥協せず魚介で飲める銘店です。地元率が高いのでご配慮ある飲み方でどうぞ。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
スエヒロ
03-3439-5550
東京都世田谷区経堂3-2-10
18:00~29:00(日は28:00まで・不定休)
予算2,000円