今回のお店は居酒屋ではありません。でも、缶ビールを飲むことができるので紹介したいと思います。もちろん、缶ビールさえ飲めれば…という条件ならば数は多くあります。ですが、ここはすごい、とにかくディープな大衆立ち飲みが好きな人にはたまらないオーラを漂わせているお店なのです。
業態は焼きそば専門店。そもそも焼きそば専門という業態のお店は滅多に聞きません。たとえば、中華屋だったり、公園のキオスクが焼きそばを売っていることはあっても、それを専門でやっていくというのはどんなお店なのでしょう。
今回は、私も執筆に携わっているインターネットレストラン情報サイトぐるなびのコンテンツ「メシコレ」を通じて知り合った焼きそばの神様のような方、塩崎省吾氏に「すごいお店がある」というお誘いを受けて、同行取材することでこのお店を訪問する個々となりました。
何がすごいか、焼きそば専門というのも個性的ですが、店名が存在しないというのも驚かされるポイント。暫定で「焼きそば屋」という名前にしていますが、渋谷のウィンズ前の焼きそば屋というだけで通じるから、特に名前を決めなかったのだと塩崎氏より聞きました。
うーん。すごい。
そして、営業日・営業時間が中央競馬の開催に連動しているというのだから、ますますディープなのだろうと感じます。
店内は長いカウンターが続き、内側の巨大な鉄板で焼きそばが作り続けられています。客層は100%向かいのウィンズを利用する競馬愛好者。さらには店主も馬券を買っているようで、レースが始まると競馬中継を映すテレビにお客さんと揃ってかじりつきます。
大衆酒場・立ち飲みを愛する私、こういう競馬と共存するお店で飲むことも多いのですが、ここまで完全密接なお店も珍しい。
アルコールは生ビール等はなく、缶ビールと缶酎ハイのみ。ビールはスーパードライ、一番搾り、そしてキリンラガーから選べるのは我らアルコール好きに優しい感じ。
では、キリンラガーを選ばせていただきまして、乾杯!
焼きそばが中盛(400円)と大盛り(500円)の二種類のみ。卵をトッピングするとプラス50円で、選択肢はこれだけ。サイドメニューなどもなく、実に清い。
焼きそば専門家の塩崎氏曰く、マイルドなソースで麺は湯で具合・太さともに極普通なのだそう。居酒屋マニアの私が言うのもへんですが、焼きそばを毎日のように食べている塩崎氏もスゴイのひとこと。なるほど、これが平均的なもの…なのね。
居酒屋サイドの私からすれば、「鉄板に長年かけて馴染みこんだ油と程よいソースがあいまって、ビールを進めてくれるつまみ的味わい」と答えるところです。
具材はキャベツ・もやしに干海老がアクセントで加えられています。トッピングの生卵をとかしてややねっとりとした状態にして食べれば、なんともいえない懐かしい感覚になります。
紅しょうがと青のりはセルフサービス。たっぷりしょうがを乗せてビールをごくごくと。缶ビールであってもコップを出してくれるのは優しさが感じられます。
そもそも、接客がこういうタイプのお店なのに大変丁寧で驚かされます。お釣りで「これで馬券買ったら10万円になるよ」なんていうシャレも言ってくれるほど。うーむ、私も馬券を。
こういう空間に馬券がよく似合う。釣り銭、缶ビール、そして茶色系。ディープ酒場と焼きそばは普段は接点がないけれど、実は紙一重なのかも。
テイクアウトも対応。店外で食べている人も多く、ここが渋谷の一画だとはまったく思えない世界がここにはあります。
競馬をやらない人には独特な雰囲気が不安になるかもですが、ちょっと焼きそばだけ食べに立ち寄ってみても面白いと思います。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
焼きそば屋
東京都渋谷区渋谷3-13-1
営業日・営業時間は中央競馬開催日に準ずる