足立区の酒屋でお店の方と話をしているときにこんな話を聞きました。
「昭和43年からやっている。お店オリジナルの焼酎ハイボールがある。千住の市場に主人自ら仕入れに行く。」
そんな情報を聞いてしまったら飲みに行かないわけには行きません。だいたいそういう要素のあるお店は銘店と決まっています。どんな感じかな、梅島はあまり飲みに行かない街で詳しくないので、この機会に巡ってみることにしましょう。
ということで、やってまいりました。梅島駅から徒歩5分ほど。飲み屋の多い駅前からだいぶ離れて、静かな住宅街に入ったところに灯る赤提灯。「ハイボール」の文字が心を踊らせます。心の第一声「やっぱり!よさそうじゃん」。
藍色の暖簾をくぐり、ガラガラと扉を引いてこんばんは。
いらっしゃい!と迎えてくれるご主人やお店の方々。お店はカウンターが数席と広めの小上がりの構造。ちょうどいいサイズのお店です。
壁一面に貼られた料理はどれも産地が書かれていたり、季節を感じるオススメがまとまっていたりと見ているだけでお酒が進みそう。どれにしようかな、と迷いつつもまずは一杯目。
メニューもみないで事前情報だけで注文しましたキリン一番搾り。それでは乾杯です。
ビアタンがしっかりと冷やされていて、なにより瓶の冷え具合が最高に素敵。一番搾りの香りのある味わいにうっとり。さぁメニューを開きましょう。
あ、生ビールはサッポロ黒ラベルとスーパードライがあるのですね!
なんだなんだ、それでしたらやっぱり黒ラベルを飲みたいな。メニューをよく見ると、アサヒ・キリン・サッポロとビール3大手がしっかり揃っていました。銀座ならまだしも、このあたりで3社あるなんて珍しい。とくにサッポロは白穂乃香もあるみたい。こだわりが感じられます。
では、改めて黒ラベルで乾杯です。極上の星は、毎日何杯飲んでも本当に美味しい♪
お店はいまのご主人が二代目だそう。初代のころからやはり看板メニューはもつ焼き・焼鳥。1本120円とリーズナブルな価格で、大ぶりの串は備長炭で丁寧に焼かれています。
つけものだけでも、「本日の」と書かれている通り、日替わりでさらに種類が多い。つけものだけでなく、あらゆる料理がとにかく種類豊富。見ていると目が回りそう。
海鮮も10種類以上ありどれにしようか悩んでしまいます。一番目立つところに書かれていたホヤを注文したらこの大きさ。ぷりっぷりで旨味が強く、独特な苦味が絶妙。ホヤは大好物であちこちで食べ歩いていますが、ここのは凄いです。お好きでしたらこれを目指してきても良いくらい。
そして、もう一つ頼んだお刺身がクエ。あの高級魚クエがまさか大衆酒場で味わえるなんて。透明感のある白身、淡白なのに噛むほどに広がる独特な甘みが絶妙。あわせてゼラチン質でぷりぷりとしたクエの皮のポン酢味もセットででてきました。こちらもふぐ皮のような食感ながら味はふぐより上等なのではと感じます。
梅島まできたかいがありました。割烹で背筋を伸ばして食べるものだと思っていたクエがこんなに身近にいました。
お酒はずらりと焼酎が並び、霧島も3色揃い他にも珍しい銘柄もちらほら。奥に我らがキンミヤが堂々と端のポジションをとっています。
下町の愛飲ドリンク「焼酎ハイボール」があるのが嬉しいじゃないですか。氷なし、キリっと冷えたグラスに注がれる強炭酸の「ボール」はお店オリジナルの配合。炭酸が強く口の中でパチパチとして辛い。でもボールエキスのケミカルな味がうわっと広がり独特な余韻を残していきます。スライスレモンが美しい。
ニットクの酎ハイディスペンサーが使われていますが、配合のベースは天羽飲料が使われている模様。
コテコテな下町ドリンクにあわせたおつまみは、アスパラソテーを頼んでいたのですが、まさかのフレンチのような盛り付けで登場。たっぷりバターにいくらが載っていて見るからに美味しそう。ボールとバターが合うのか?と聞かれたら、「なんでも合う」と答えます(笑)
とにかくこちらのご主人は料理ひとつひとつに拘りと独特なセンスを持たれています。いちじくの白和えを頼むと、クリームチーズの入った白和えがお洒落な割烹風の盛り付けで登場。お刺身用の穂紫蘇がこんな使われ方をしているのを初めてみました。
もうすぐ旬を迎えるいちじく、こういう食べ方もいいなぁと思っていたら、こちらの店主は朝日新聞の「かしこいおかず」コーナーで居酒屋おつまみとしてレシピを紹介されている方なんですね。確かに、料理の腕はピカイチです。
これは日本酒だね。絶対賀茂鶴が合うよ。私も自称プロの飲兵衛として合わせるお酒を選びました(笑)
日本酒も豊富な品ぞろえで飲んでみたい銘柄があれもこれも。
葱いわし巻きの天ぷらを頼んで、天ぷらと日本酒もいいなと思っていたのですが、ここで休憩ビールを。
白ネギをイワシで巻いて天ぷらにしたこの料理。この組み合わせで美味しくないはずがありません。薬味をたっぷり載せてポン酢でいただきます。
そしてビールは大生へ。飲みも後半になると改めてビールが欲しくなるんです。日本酒は喉が渇きますから、そこから始める黒ラベルもまたいいもので。
泡とビールの間にできるフロスティミストの層がこんなに分厚い。こちらの黒ラベルの提供品質は最高ですね。
生ハムと桃のサラダを頼んでみました。盛り付けは相変わらずフレンチみたいで女子力高め。大生と合わせている私は女子力低め。
フルーツをおつまみにするのが許せないタイプなのですが、これはとっても箸がすすみます。ビールもぐいぐいと飲み進めてすっかりいい気分。
取り扱いの難しいサッポロ那須工場限定製造の大手版クラフトビールとも言える白穂乃香。酵母がいきているので白濁した色合い。香りがフルーティーで苦味ではなく甘みを楽しむビール。
もちろんエンゼルリングができるほど品質高め。白穂乃香とお洒落なおつまみだけを頼んでいたら気分はすっかり銀座のビストロです(笑)
お店の方の雰囲気もとってもよく、なにより料理はどれを頼んでもはずれなし。ビールはもちろん、焼酎も日本酒もこだわりのラインナップで、ワインだってボトルである。こんな素敵なお店があるなんて、梅島を通る沿線にお住まいの人たちが実に羨ましい。
途中下車してでもぜひ。私は東京の反対側に住んでいますが、取材関係なしにこれからも通いたい一軒です。
ごちそうさま。
この記事はあなたのお役に立てましたか?
この記事が少しでもあなたのお役に立てましたら、
ブログランキングへ応援ボタンからの投票を1日一回いただけると嬉しいです。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
居酒屋こんちゃん
03-3887-3878
東京都足立区梅田6-32-4
17:00~24:00(月定休・日は16:00~)
予算3,300円