昭和29年創業の老舗『長興屋 本店』。東京・足立区の住宅街にありながら、わざわざ路線バスで訪れる人が後を絶たない名店です。長年使い込まれたガスロースターで焼く鮮度抜群のホルモンと、ここでしか味わえない〆の「肉めし」。煙さえもスパイスに感じる、大衆焼肉の聖地をご紹介します。
住宅街に佇む、時が止まったかのような空間

東武スカイツリーラインの西新井駅から歩いて20分ほど。決してアクセスが良いとは言えない場所に、その店はあります。飾り気のない堂々とした店構えは、まさに昭和の時代から続く実力店の風格。扉を開ければ、長年の煙で飴色になった壁や柱、そして冬場にはダルマストーブが置かれるという、時間が止まったかのような空間が広がります。

使い込まれてディープさすら感じる店内ですが、煙がまう店特有の油っぽさはなく、隅々まで手入れが行き届いているのが嬉しいポイント。
初めて訪れた人も、皆さん口を揃えて「懐かしい」と話すムード。カウンターと小上がり、奥には座敷という造りで、常連さんたちの楽しそうな話し声がBGMです。この活気とアットホームな雰囲気が、肉の味を一層引き立ててくれるのでしょう。
晴れの日用途では全くありませんが、特別感はそんじょそこらの高級焼肉店より圧倒的!
絶品の肉とホルモンを、秘伝のタレで

まずは瓶ビール「キリンラガービール」で喉を潤し、乾杯!
無煙タイプではない、昔ながらのガスロースターに火をつけてもらっていざスタート。

最初に頼みたいのは、やはりカルビ。サシが美しい肉をロースターにのせれば、ジュワッと食欲をそそる音が響きます。タレは醤油ベースではなく、ほんのり果実感のある秘伝のタレ。

このタレが肉の旨味を最大限に引き出し、濃いながらも後味はさっぱり。口の中でとろけるような美味しさです。

続いて、この店の真骨頂ともいえるホルモンと上ミノを。丁寧な下処理が施されているため、臭みは一切ありません。トロトロのホルモンはもちろんのこと、驚くべきはこの上ミノ。

見事な包丁仕事で、サクサクと噛み切れる柔らかさ。鮮度の良さがダイレクトに伝わってきます。

城東エリアでおなじみの色付き酎ハイに切り替え、次々と肉の面倒を見ながら、最高の焼き加減で頬張る。これぞ大衆焼肉の醍醐味です。


酒場としての実力を見せる、〆の一品

焼肉を存分に堪能したら、忘れずに注文したいのが〆の料理。焼肉屋としてだけでなく、酒場としてのレベルの高さを感じさせる名脇役が揃っています。氷なしでも注文できるホッピーをお供に、最後の楽しみとしましょう。

ロースターの余熱で温めながらいただく肉豆腐は、記憶に残る美味しさ。熱々の豆腐に肉の旨味が染み渡り、お酒がぐいぐい進みます。

そして、多くの常連がこれを目当てに訪れるという絶品の〆が「肉めし」。ガラスープで炒められたご飯は、ピリ辛で香ばしく、肉の脂と旨味が米の一粒一粒に染み込んでいます。満腹のはずなのに、レンゲが止まらなくなること間違いありません。
わざわざ訪れたい、現役の酒場文化遺産
創業から70年以上、この地で多くの人々の胃袋を満たしてきた『長興屋本店』。決して便利とは言えない場所にありながら、その味と雰囲気を求めて人々が集います。
効率や快適さだけでは測れない、本物の食体験のひとつだと思います。歴史が染み込んだ煙の中で味わう焼肉は、格別な思い出のひとつになります。
店舗詳細
品書き


店名 | 長興屋 本店 |
住所 | 東京都足立区興野1丁目13−17 |
営業時間 | 15時00分~21時00分 火・水・金は16時から 月木定休 |
創業 | 1954年 |