浅草『とん久』雷門すぐ裏、昭和39年頃から続く町洋食のカツカレーに癒やされる

浅草『とん久』雷門すぐ裏、昭和39年頃から続く町洋食のカツカレーに癒やされる

浅草・雷門からわずか数メートル。国内外からの観光客で賑わう仲見世通りのすぐ裏手に、まるで時が止まったかのような一軒の洋食店があります。半世紀以上続く『とん久』。新聞を広げる地元の常連さんに交じり、懐かしくも温かい空気が流れる老舗です。無性にビール片手にカツカレーが食べたくなり、暖簾をくぐりました。

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観光地の喧騒を忘れる、路地裏の変わらぬ名店

日本を代表する観光地、浅草。その中心である雷門のすぐ脇、多くの人が行き交う喧騒から一本路地を入るだけで、不思議なほど穏やかな空気が流れています。目指す『とん久』は、まさにそんな場所にありました。

もし表通りに面していれば、いわゆる観光地価格の慌ただしい店になっていたのかもしれません。しかし、この絶妙な距離感が、60年近くにわたり地元の人にも愛され続けてきた理由なのでしょう。

創業は前回の東京オリンピックが開催された頃です。店構えもその頃の流行を今に残したもので、復興から近代化に邁進する東京の瞬間を閉じ込めたような風情すら感じます。

扉を開けると、そこは期待を裏切らない「昭和の洋食屋さん」。カウンターとテーブル席、奥には小上がりもあり、一人客から家族連れまで誰もが自分の居場所を見つけられるような造りです。親子で切り盛りされており、そのやりとりは実に家庭的で、見ているこちらも自然と頬が緩みます。

王道のカツカレーと、キリッと冷えたスーパードライ

樽生アサヒスーパードライ 650円

まずは、アサヒスーパードライの樽生をお願いしました。アサヒビールの本社まで僅かな距離ですから、ここはやっぱりアサヒですね!きめ細やかな泡が嬉しい一杯。それでは乾杯。

ロースカツカレー 1,250円

お目当てのロースカツカレーを注文。厨房からは、小気味よい音が聞こえてきます。ほどなくして運ばれてきた一皿は、これぞ王道というべき堂々とした盛り付けです。

カレーは、とろりとしていて、どこか懐かしさを感じる優しい口当たり。豚スジ肉と野菜でとったスープと合わせて伸ばし、スパイスを加えるという工程を3日ほどかけて仕込むそうです(公式SNSより)。焦がさないように混ぜ続けるのも大変そう。

後からキリッとスパイスが追いかけてくる絶妙なバランスです。

主役のとんかつは、注文を受けてから揚げたもの。衣はザクザクとした食感で、この力強い歯ごたえがカレーと見事に調和します。

昨今の分厚いとんかつとは異なり、程よい厚さなのもこの店の個性。だからこそ、カレーソースと一体となり、飽きることなく最後まで美味しくいただけます。シンプルながらしっかりとした旨味があり、まさに「こういうのでいいんだよ」と呟きたくなるような、安心感に満ちた一杯でした。

守り続ける「昭和の日常の味」

品書きに目をやれば、ロースカツ重やオムライス、ミックスフライなど、心惹かれる洋食メニューが並びます。

浅草には「井泉」や「ゆたか」といったとんかつの歴史的名店、そして「ヨシカミ」などの老舗洋食が多数。ここ『とん久』は、それら有名店とはまた異なる、家族経営の町洋食ならではの価値があると思います。誰もが親しんだ「昭和の日常の味」を守り続ける洋食屋さん、そういう店も大切ではないでしょうか。

雷門の斜め横という最高の立地にありながら、手頃な価格で心温まる食事を楽しませてくれる貴重な一軒。浅草っ子に混ざってレトロな洋食を楽しんでみてはいかがでしょう。

ごちそうさまでした。

店舗詳細

カレー・冷やしビーフ・お酒のメニュー
定食メニュー
店名とん久(とんきゅう)
住所東京都台東区浅草1丁目2−6
営業時間11時00分~19時00分
木曜定休
創業1964年頃