伊豆・小笠原諸島の郷土料理として知られる「島寿司」。八丈島で食べるならば島の中央に位置する『あそこ寿司』はいかがでしょう。島酒が1杯300円~と良心的で昼飲み場所としても楽しめます。
八丈島最古の寿司店
春を先取りすべく、羽田空港から飛行機で1時間の八丈島へやってきました。東京からは約300km離れていますが、ここも東京都。沖縄の離島のような風土で、かつては日本のハワイと呼ばれていました。
古くから人々が暮らしていた八丈島は開拓が進んでいますが、手つかずの自然も多く、中心街でも河津桜やブーゲンビリアが咲いていました。冬季でもコート不要の暖かさで、ダイビングやトレッキングなどアウトドアを楽しむ人たちで賑わっています。
外観
自然と並び魅力的なのが八丈島の食文化です。近海でとれる飛魚やムロアジ、ヒラマサ、メダイをつかった魚介料理が中心で、「島寿司」や「クサヤ」は全国的にも知られています。
八丈島では寿司店に限らず、居酒屋や食堂、スーパーの惣菜でも島寿司が並んでいますが、やはり専門店の味が気になるところ。
この島最古の寿司店は、1956年創業の『あそこ寿司』。もちろん島寿司が名物ですので、今回はこちらをご紹介します。
有名居酒屋やオシャレな食堂、スナックなどが集まる中心街にあるものの、建物は密集しておらず牧歌的な雰囲気です。水着姿のままの入店お断りのプレートが貼られた寿司店は、全国的に見ても珍しいでしょう。
暖簾を潜ると女将さんと大将が迎えくれます。付け台と冷蔵ショーケースのある一枚板のカウンターは大変立派で、正統派の街の老舗寿司の安定感が感じられます。リゾート地ではあるものの、地元の常連さんも多いそうです。
品書き
お酒
- 樽詰 アサヒ生ビール(マルエフ):600円
- 瓶ビール アサヒスパードライ中瓶:600円
- 清酒:400円
- 島酒 情け嶋 麦・一本釣り・八重椿・黒潮・島の華・潮梅:各300円
- 島酒 情け嶋 芋:400円
- 島酒 鬼ごろし・島流し:各500円
- 島酒 江戸酎:600円
料理
- 島寿司:2,100円
- 醤油漬 島寿司:2,100円
- 並寿司・並ちらし:鉄火巻:各1,300円
- 特上寿司:2,300円
島寿司は魚ごとに漬け込みを変える
アサヒスパードライ中瓶(600円)
時刻はお昼すぎ。お昼から営業する居酒屋はなくとも、寿司店さえあれば昼飲みは十二分に楽しめます。それが、70年続く老舗ならお酒は尚更美味しく感じるものです。ビアタンをアサヒで満たして乾杯!
醤油漬 島寿司(2,100円)
醤油漬 島寿司は仕入れ次第で寿司種が変わります。この日はメダイとヒラマサ、岩のりの3種類。つみれと肉厚な岩のりがたっぷり入ったおすましがついています。
どうですか、お酒を誘うべっ甲色だと思いませんか。
一般的に島寿司といえば、この醤油漬の握り寿司のことを指しますが、『あそこ寿司』では、島の魚をつかった握り寿司も「島寿司」と呼んでおり、こちらは「醤油漬 島寿司」として区別しています。
漬け込みには30分前後のかかるそうで、浅くても深く漬けてもいけないのだと大将。魚それぞれ脂の乗りが違うため、包丁を入れつつ漬け込みの時間を考えるそうです。そのため、事前予約なしでは受け付けておらず、「醤油漬 島寿司」は事前予約のみ注文が可能とのこと。
さそがし秘伝のタレや醤油を使っているのだろうと尋ねると、意外にも「大手の醤油メーカーの醤油を使っているよ」と大将。島寿司特有の味は、なにより鮮度のよい島の白身魚を使うことが大事で、次いで、ワサビのかわりに辛子を塗ること、酢飯は甘めにすることが大切のようです。
酢飯は関西の押し寿司に使うような味付け。寿司種の白身魚は水分が抜け生ハムのような食感。これがビールと相性ぴったりでした。
付け合わせのおすましも、潮の風味が広がる絶品。八丈島土産としても人気の岩海苔がたっぷり。これをつまみに焼酎というのも良さそう。
情け嶋 芋(400円)
本土では貴重な東京島酒「八丈島焼酎」ですが、さすが本場ではリーズナブル。しっかりとした寿司店なのに、島酒は300円からと驚くほど良心価格です。ジョッキいっぱいの水割りで芋の香りを楽し染みながら、気づけばすっかりほろ酔いになっていました。
ごちそうさま
丁寧な女将さんとお話上手な大将が切り盛りするあたたかい雰囲気の寿司店です。のんびりとした時間が流れる中でいただく本場の味に大満足。
醤油漬け島寿司は事前予約が必要なのでご注意ください。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | あそこ寿司 |
住所 | 東京都八丈島八丈町三根361 |
営業時間 | 営業時間 11:30~14:00 17:30~21:00 日曜営業 定休日 不定休 |
創業 | 1956年 |