浅草の『餃子の王さま』は、どこか今風の店名に感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、創業は1954年という老舗飲食店のひとつです。握りたて・焼きたて、野菜をたっぷり使った王さまの餃子をつまみに、生ビールの大ジョッキをあわせれば、浅草がもっと好きになるはずです。
食堂?煮込み?あ、餃子もいいね
東京を代表する観光地のひとつで、年がら年中お祭りムードが漂う台東区・浅草。春は隅田川をピンク色に染めるソメイヨシノを見るために全国から大勢の人が訪れます。昔のように桜の下でお酒を飲むお花見がもどってくることを願いつつ、今日は雷門周辺の飲食店を目指そうと思います。
にぎやかな街なので、飲食店ではお昼からお酒を飲む人があちらにもこちらにも。あらためて、浅草はお昼飲みタイプの人に優しい街だと思います。さて取材日は平日なのですが、それでも有名店の店頭には行列ができています。食堂でビールか、煮込みをおつまみに電気ブランを飲もうか、一軒目に悩みます。どこにしましょう。
外観
ふらふらと浅草公会堂の近くまできました。ここには有名な大衆中華『餃子の王さま』があり、休日はかなりの行列をつくることでも知られています。ですが、今日は列が短いようです。これはチャンス!
一階はコンパクトなものの、二階にはテーブル席が並ぶ比較的大きな大衆中華(町中華)なので、これくらいの人数ならばあっという間に店内へ案内されます。
調理器具・飲食店備品の専門店街・かっぱ橋も近いからでしょうか、ここの商品ケースは常にピカピカで驚くほど完成度が高い見本が整然と並んでいます。「どれにしようかな」と列に並びながら考えていると、すぐさま3代目が品書きをもって店頭まで来て、注文を聞きにきてくれます。
ここでオーダーしておけば着席と同時にビールや料理が提供されるという仕組みです。
少し商品ケースをみてみましょう。上段はお酒のメニューです。
隅田川の対岸にある黄金色をしたビルがアサヒビールの本社屋だというのは皆さん御存知の通り。ですから浅草はアサヒビール率がとっても高いのです。
ですが、実はアサヒとサッポロはかつて大日本麦酒という同じ会社だったという歴史も関係しており、浅草は老舗を中心にサッポロを見かけることも多々あります。ここ『餃子の王さま』にアサヒとサッポロが並んでいるのも、ある意味浅草らしさと言えるのではないでしょうか。
餃子の王さまですが、料理は街の中華屋さんのようにバラエティに富んでいます。
内観
一人だと1階のカウンター席に通されることが多く、ここが餃子の王さまの特等席だと思います。
餃子を次々焼き上げていく鉄板での調理や、目の前でひたすら餡を皮で包むお兄さんたち手仕事に感動しながら飲めるからです。目の前にはレトロな品書きがドーンと掲げられているほか、創業時の写真もみることができます。写っているのは創業当時の店。戦後まもない頃で屋台風のつくりですが、人気店となり写真の8年後には現在の3階建ての建物へと移ったとききます。
乾杯はアサヒかサッポロか
ビールの銘柄はアサヒかサッポロかで決めかねていたのですが、今日は気分でサッポロをチョイス。前回はここでアサヒ生ビールを飲みましたから…。
サッポロ生ビールはパーフェクト黒ラベルです。忙しいオペレーションでも、専用の装備をつけたサーバーから2度注ぎで注いで完成。生クリームのようなクリーミーな泡が特長です。
それでは、サッポロ パーフェクト黒ラベルの大ジョッキで乾杯。
品書き
ということで、樽詰ビール(生ビール)はマルエフことアサヒ生ビール:560円とサッポロ黒ラベル:560円。品書きにはありませんが、店頭のサンプルにある通り黒ラベルの大ジョッキ:630円もあって、今回はこれを注文しました。
瓶ビール(中瓶)はアサヒスーパードライ:480円と赤星ことサッポロラガー:480円。飲酒歓迎のお店でして、ビール以外にもブラックニッカハイボールやデュワーズハイボール:ともに450円、キリン系列の永昌源の老酒:550円、冷酒(菊正宗):650円やパイカル:550円まで置いています。
料理
看板料理の餃子は4種類。野菜餃子である王さまの餃子:420円、湯餃子(水餃子):420円、ジューシーな肉餃子:500円、スープ餃子:750円。
その他人気のおつまみはニラレバいため:780円など。麺飯類で飲む人も多く、ソース焼きそば:630円、やきそば(太麺):630円が人気のようです。
餃子とビールで浅草の昼飲みに後悔なし
美味しい餃子があればビールが飲みたくなる!その逆もしかり。事前に注文していたので、着席後あまり待つことなくビールと餃子が同じタイミングで提供されました。もうたまりません。
王さまの餃子(420円)
王さまの餃子は創業時からの料理です。ほぼ全員が注文する60年以上続く看板料理。
食べている目の前には、手を休めることなく延々と餃子を包み続けるお兄さんがいます。どれくらいつくるのかと尋ねてみると、なんと一日に数千個を包むのだそう。
餡はキャベツ、生姜、にら、ニンニクが材料で一日半寝かせたものを使用しているといいます。また、作りおきや冷凍保管はせず、その日に提供する分を営業と並行しながら包むという、鮮度へのこだわりもあるといいます。包み方も独特で、写真の通りヒダのない半月状をしています。
やきそば太麺(630円)
チャーメンか焼きうどんかのような、オリジナリティのあるやきそば”フト”。
豚肉とキャベツ、もやしなどが入った醤油味。ベタつきがなく太麺に味がよく絡んでいることもあり、これがまたビールと相性抜群です。
昔から受け継ぐこだわりの料理の数々が、いまの時代にあっても新鮮に感じるのがおもしろい。
観光地にあっても長年値段据え置きでがんばってきたそう。続く店には理由ありだと改めて感じました。ビールをぐっと飲み干して大満足です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 餃子の王さま |
住所 | 東京都台東区浅草1-30-8 |
営業時間 | 11:15~14:00・16:00~20:00(火定休) |
開業年 | 1954年 |