街角の中華屋でお昼から飲むことに憧れたことはないでしょうか。蕎麦屋と同じで、お昼から飲んでいる人もいますし、通しでやっていることが多く、居酒屋がなくとも中華屋さえあればお昼酒は捗るものです。
派手じゃない、話題の店でもない、当たり前にあった中華屋。気づいたらその数が減っているように思いませんか。企業努力で価格を抑えたチェーン店もよいですが、昭和のぬくもりを感じるような街の中華屋もずっと続いてほしいものです。
例えば、綾瀬駅から少し歩いた場所にある綾瀬飯店は、特におすすめの一軒。半世紀以上続く老舗で、この界隈の飲食店のなかで特に歴史ある店です。
綾瀬はそもそも飲み屋の多い町ですが、お昼から飲めるお店は数えるほど。それでも、お昼から飲むとなれば、私はいつも綾瀬飯店です。
どこの街にもありそうな昔ながらの中華料理店ですが、料理のレベルと良心的な盛りと具だくさんの料理は昨今の量販系にはない魅力があります。
家族経営で、フロアはいまも元気な80代の女将。厨房は息子さんが綾瀬の定番中華ののれんを守ります。
昔ながらの中華料理屋的な格子戸と暖簾、白いテーブルがずらりと並ぶ店内は、決してく特別ではありません。古い漫画や、壁にかかる飾りなどはすべて昭和のまま。店に入れば、いまだに昭和が続いているかのよう。
メニューも今風の写真入りのカラフルなものではなく、味わいのある手書きの品書き。ビールはサッポロだけで樽生はなく中瓶のみの取扱い。紹興酒も人気です。
料理はメニューに載っていなくとも、食材さえあればなんでも作ってくれます。しっかりと中華で修行を積んだという感じがある息子さんの作る料理ははずれなし。
定番の餃子はおおぶりのもので、肉たっぷりで滴る旨味。ビールに餃子があうので、あちこちで餃子は食べていますが、綾瀬飯店は店の空気感も含めて味わえば特別に感じます。
銀座や六本木にあるような本格的な中国の料理人がふる中華鍋の料理とはある意味、正反対かもしれません。これぞ日本に中華、街角の昭和中華の味なのです。
銘店のそれと比較するのではなく、綾瀬のこの空間でお昼からぼーっと青椒肉絲にビールや紹興酒をちびちびいけることそのものに価値があります。
普段から炭水化物はあまり食べない筆者ですが、綾瀬飯店の炒飯(650円)は別格。昔の食堂によくあった醤油で味付けした”焼飯”的なもの。パラパラで具だくさん、なによりチャーハンそのものが紹興酒や黒ラベルと素晴らしい相性をもっているのです。
有名な老舗酒場もよいですが、まだまだ東京の街角には知られざる古き良き店があります。こういうお店は、地元の人たちに愛され通われて丁寧に一年一年の年輪を重ねてきています。
そんな店の魅力をほんのちょっとかもしれませんが、そっと覗いてみてはいかがでしょう。
女将さん、どうぞお元気で。素敵な時間をいつもありがとうございます。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
綾瀬飯店
03-3603-9948
東京都足立区綾瀬2-23-20
お昼から21:00くらい
予算2,000円