市場が豊洲へ移っても、築地場外にはいまも魚河岸の空気を残す店があります。波除神社近くのビル地下にある『東都グリル』は、1963年創業の洋食堂。朝8時の開店から、地酒と刺身でしっかり飲めるのが市場流です。中トロと本鮪赤身、大粒ホタテフライの贅沢定食で、朝から乾杯してきました。
市場が去っても、魚河岸の食堂は残った

昭和のはじめ、1935年に日本橋から魚河岸が移転してきたことで誕生した築地市場。正式には東京都中央卸売市場築地市場といいます。

2018年、東京都が所管する卸売市場は豊洲へ移転しましたが、卸売市場を囲むように広がっていた民間の築地場外市場は、都の政策とは関係なくそのまま残りました。
場外はもともと、魚河岸やそこに出入りする魚屋さん、飲食店で働く人のための場所でした。包丁や道具を売る店、仕入れ帰りに食事をする店、仲卸から買うほどではない少量の乾物や食材を扱う店。半分は業者向け、半分は一般向けという店がひしめいていたんです。
ところが、核だった市場が抜けたことで一気に観光地化が進み、いまやインバウンドの人々も訪れる、東京を代表する食の観光地に。立ち食いの店や観光向けのお土産店もずいぶん増えました。

それでも、魚河岸関係者が普段使いしてきて、いまもさほど観光地化していない店がいくつか残っています。その代表格が、ここ『東都グリル』です。
朝8時開店、グリルなのに酒場

営業は昔から変わらず午前中がメインで、朝8時に開店します。水・土曜日は15時で閉店するなど、夜遅くまで営業する店ではありません。

それでも、ここには酒の肴と豊富な地酒がそろっています。「グリル」と名乗りながら、酒場のように飲んでいってね!というスタンスで、昔から飲んでいる人がたくさんいるんです。
というのも、市場関係者は明け方前から働いているので、10時くらいにはもう仕事終わり。そこから普通に飲んで帰り、そのぶん寝るのも早い。世の中より半日スライドした生活を送る人たちがいるからこそ、私たちはその日のせりを通った魚を、夜の居酒屋で楽しめるわけです。
そんな市場の人たちのための、朝飲み場所。それが『東都グリル』なんです。
まずは瓶ビール。単品か、洋食か、定食か
日本酒・地酒が豊富ですが、まずは瓶ビールから。

サッポロ黒ラベルの大瓶をもらって、乾杯。枝豆をつまみながら、さて何を頼もうかとメニューを眺めます。


単品で頼んで組み立てるか、グリルらしく洋食を食べるか。ハモの湯引きなんていうのもあります。常連さんのリクエストに応えるうちにメニューがどんどん増え、いまでは100品を超えるのだとか。
私が飲んでいる横の席で、「ラーメンはないの?」と店員さんに聞かれていましたが、残念、ありませんでした。
ちなみに、ここでは「ナポリタン」の具はエビで、ハムを使ったものは「イタリアン」と呼ばれています。どうしてこの名前になったのかは、以前お話を聞きましたが、どうやらお店の方にもわからないそうです。こういう謎が残っているのもまた老舗らしくて素敵。
一番高い定食で、ちょっぴり贅沢な朝飲み
でも、ここは定食がお得。定食は900円からあり、A・B定食は水曜日と土曜日に内容が替わります。
せっかくなら、魚河岸関係者が愛用してきた店の魚介を楽しみたい。今日はちょっぴり贅沢したいなと、一番高い定食を選びました。

立派な中トロと、天身のようにスジのないきれいな本鮪の赤身。

ホタテは大きく立派な貝柱がふたつ。ここにご飯、みそ汁、小鉢がふたつついてきます。これはお酒が飲みたくなるでしょう。


まぐろは分厚くてしっとり。風味豊かで、しみじみ美味しい。

赤身はわずかな酸味があって、中トロはナッツのような脂の旨みが心地いい。紅白で食べ比べられるのも嬉しい!

ご飯にのせれば、ちょっとしたまぐろ丼に。瓶ビールの合間に、これをやりたかったんです。

フライにはたっぷりのタルタルがついてくるので、一口目はタルタルで。

衣はサクッと軽く、中の貝柱はふっくら。噛むとホタテの甘みがじゅわっと広がります。二口目からは醤油、ソースと味を変えて楽しみました。刺身とフライを一度に楽しめるのは、魚河岸の洋食堂ならではです。
昭和の旅館の朝ごはん会場のような地下空間

店内は、昭和の旅館の朝ごはん会場のような雰囲気。地下ですが、65席もある広い店なので圧迫感はありません。みんな楽しそうに飲んでいるから、なんだか不思議と一体感を感じ、昼飲みの背徳感はどこへやら。楽しくなってきました!
かつては市場の作業着姿の人でいっぱいだったというこの店。
観光客で賑わう通りから一本入り、階段を下りると、そこにはまだ市場の朝が流れています。魚好き、老舗食堂好きなら、朝から飲める『東都グリル』をぜひ訪ねてみてください。
| 店名 | 東都グリル |
| 住所 | 東京都中央区築地6-22-4 東水ビル地下1階 |
| 営業時間 | 8時00分~ 土は7時00分開店 水・土は15時00分閉店 月・水は18時00分閉店 火金は20時00分まで営業 |
| 定休日 | 日曜日、祝日、水曜以外の休市日 |
| 創業 | 1963年 |
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