ヨドバシカメラのテーマソングと、家電やデジタル機器を求める人々の熱気が渦巻く新宿駅西口。学生時代から何度も通った場所ですが、まさかその喧騒のど真ん中に、こんな老舗があるとは。
創業は1972年(昭和47年)。暖簾をくぐるとそこは喧騒とは無縁の世界。今回はお昼からお酒が楽しめる家族経営の蕎麦屋さんをご紹介します。
蕎麦屋さんが少ない新宿にある貴重な一軒

新宿駅西口から徒歩数分。飲食店がひしめくエリアですが、老舗と呼べる店はそう多くありません。
そんな中、半世紀以上もこの地で営業を続けているのが『手打蕎麦 渡邊』です。
再開発の波に揉まれ、ビルが建て替わり、テナントが入れ替わっていく新宿において、変わらず暖簾を守り続ける家族経営のお店。一歩足を踏み入れると、そこには懐かしくも活気ある空間が広がっています。

平日の15時。昼食ラッシュはとっくに終わっていますが、店内はほぼ満席という人気ぶり。
意外と奥行きがあり、テーブル席のほかに小上がりも完備されています。奥の座敷に目をやると、ベテランの常連さんたちが宴会の真っ最中。「新宿でお酒を飲むのに、時間は関係ない」と言わんばかりの楽しそうな笑顔に、私も「飲むぞ」と気持ちが高まります。
店の中央にはガラス張りの打ち場があり、ご主人が黙々と蕎麦を打っています。リズミカルな音と、粉の舞う様子を眺めながら飲むお酒。これぞ蕎麦屋飲みの醍醐味です。
作りたてのおつまみで、まずは一献

まずはビールをもらって、スタート。銘柄はキリン一番搾りです。よく冷えたビールで喉を潤したところで、おつまみを頼みます。

玉子焼き、栃尾揚げ。どちらも作り置きではなく、注文が入ってから調理してくれます。
運ばれてきた玉子焼きからは、出汁のいい香りがふわり。箸を入れるとジュワッと旨味が溢れます。 栃尾揚げも焼きたてで、ハフハフと言いながら食べるこのホクホク感がたまりません。こういう「ちゃんとした」手料理のおつまみがあるのは、飲み手として本当に嬉しいポイントです。
千葉の銘酒「東薫」と天抜きで粋に

ビールが空いたところで日本酒へ。千葉の銘酒「東薫」をお願いしました。
合わせるのは「天抜き」。天ぷらそばの「そば抜き」です。衣がつゆを吸ってとろりとしたところを肴に、冷や酒をキュッと。

揚げたての海老天の香ばしさと、つゆの甘辛さが酒を進ませます。大人になってよかったとしみじみ思う瞬間です。

天ぷらとつゆが別々に提供されるのは珍しい。最初はつゆに浸して食べましたが、天抜きの醍醐味はつゆをたぷたぷに吸わせた衣だと思うので、最後はすべてをつゆの中へ。これで日本酒が何杯(適量)でも飲めてしまいます。
〆は打ちたての手打ち蕎麦で

地酒もよいけれど、蕎麦屋さんのお酒といったら、やっぱり菊正宗でしょう。おなじみの本醸造1合瓶が登場。お燗が美味しい季節です。

ご主人の蕎麦打ちをずっと眺めていたら、やはり最後は手繰りたくなりました。もっぱら居酒屋使いで蕎麦屋さんを利用しているので、蕎麦を食べずに飲む「蕎麦前」だけで済ますことも多いのですが、今日は別です。

北海道と茨城の粉をブレンドした手打ち蕎麦。二八のようです。

平たく細めながらしっかりとしたコシがあり、素晴らしい喉越し。

つゆは、いわゆる老舗系とはまた違った、少し甘めで重く濃い味。これが蕎麦の香りを引き立てます。 最後は蕎麦湯でつゆを割り、余韻に浸りました。うん、ここのお蕎麦、好きなタイプ。
新宿の使い勝手が広がる一軒

新宿に老舗蕎麦屋はそう多くありませんが、渡邊を知っておくと街歩きがぐっと楽になります。
通し営業で、一人でもグループでも、そして昼からでも気兼ねなく美味しい蕎麦とお酒が楽しめる。買い物の合間に、ふらっと暖簾をくぐってみてはいかがでしょう。
| 店名 | 手打蕎麦 渡邊 |
| 住所 | 東京都新宿区西新宿1丁目12−10 八洋ビル |
| 営業時間 | 11時00分~21時30分 日曜日定休 |
| 創業 | 1972年 |
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