2018年2月に移転オープンしました。新店舗はこちらの記事をご覧ください。
大衆酒場というと、お刺身や天ぷらなどをまんべんなく揃える割烹スタイルと、もつ焼きや海鮮に特化した専門店の2つに分類されます。とくに東京では他の地域よりも圧倒的にもつ焼き・焼き鳥のお店が多いです。大阪は串かつ文化ですから、西の土手煮・串かつ、東のやきとり(焼鳥+焼きとん)という構図がみえてきます。
東京で焼鳥・もつ焼きが多い理由は関東大震災と戦災という大きな困難から立ち直るときの原動力として、人口の多い都市部で手に入りにくかった牛や豚の正肉のかわりに提供をしたのが始まりです。戦後の復興に携わる人々の乾杯をもつ焼きが支えてきました。
そのため東京のターミナル駅周辺の闇市後や下町には老舗が多く、その周辺にその後になってオープンしたお店もレベルが高いのが特長です。たとえば小岩の「大竹」も素晴らしいお店のひとつです。
青いファサード、赤提灯、藍色の暖簾。この渋さがたまりません。暖かい季節は店先のテーブルで飲むこともできます。
店内は綺麗な分厚い一枚板のカウンターが2列並び、その内側に焼き台があります。昭和のもつ焼き店にたまに観られるII字構造の配置は焼き台が外を向いているので煙が逃げやすく合理的な構造です。カウンターが店内を真っ二つにわけているのでお店の入り口が2つあるのが特長。
さて、飲み物は瓶ビールはサッポロラガー、生ビールは黒ラベルが入っていますが、ここの焼酎ハイボールがとにかく大好物なので、今回はビール飛ばしで最初から「ボール・氷なし」で乾杯です!
うっすら琥珀色をした焼酎ハイボールはお店オリジナルのブレンドです。甘さはなく酸味がちょうどいい。レモンハイとは違った美味しさで飲み飽きません。
もつ焼き専門店で、もつ刺しや小鉢はありますが、揚げ物や焼き魚などの酒場の定番は一切なし。ここはおひたしでもつまみながら、もくもくと豚もつを楽しむべし♪
豚もつの種類は一般的で、タン・ハツ・シロ・レバなど。炭火なんて手間のかかるものではなく、ガスの焼鳥台で仕上げていきます。火にこだわる方もいらっしゃいますが、美味しければそれでよし。「むしろガスのほうが温度が調整できて焼き具合にムラができないからいい」と話す常連さんも。
シロとカシラをタレで。こちらのタレはすりおろしたにんにくがたっぷり入っていて、それが飴色に絡みついて見た目から美しい。想像するほど大蒜の香りは強くなく、豚の脂とあいまった旨味に何度通っても感動します。
タンは塩で。もつ焼きは全品2本200円。平均的なもつ焼きの1.5倍ほど大きく部位がカットされているので、これで1本100円はとにかくお得感があります。
メニューには「ハイボール」(300円)と書かれていますが、ウィスキーハイボールではなくてもちろん焼酎のハイボールのこと。下町では、ウィスキーハイボールのほうを「ウィハイ」と呼ぶことも多いです。単にハイボールといえば焼酎ハイボールになるというのは、これも街の歴史・酒場の歴史だなーと感じます。
焼き台を守るご主人は親切丁寧でとっても気さくな方。フロアを担当する女将さんとの相性もばっちりで、ここはもつ焼き、ボール、そして店全体のほっこりした雰囲気までもが魅力なんです。
土日も営業ていますので、今週末は小岩に遠征されてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
大竹
03-3658-2179(予約不可)
東京都江戸川区西小岩1-19-26
16:30~23:00(月定休)
予算1,600円