荻窪『加賀藤』常連さんで賑わう北口の人気店。名物の焼肉串とは？

荻窪駅北口で長年親しまれてきた『加賀藤』。外食が多様化した今も、平日の口開けから常連さんで大盛況になる人気店です。名物は、ホルモン焼と焼肉串。いったいどのような串でしょうか。加賀藤の魅力をご紹介します。

ライバル多し杉並で、長く支持されてきた店

東京の酒場事情をある程度知る人は、この店構えや「加賀」という文字から、あぁ、ここはもつ焼き「加賀屋」の系譜なのかとわかると思います。

加賀藤のご紹介に入る前に、加賀屋という一大暖簾分け酒場について軽く話します。加賀屋1号店は、1965年、板橋にできました。焼鳥屋などで修行して加賀屋を開いた創業者の故郷は石川県の現・七尾市。都内の酒場に多い、故郷の名を冠した店なのです。

その人気もあって次々と弟子が独立し、東京を中心に50軒以上になるまで増加。加賀屋を名乗る店同士をつなぐ組合が結成されました。組合は加賀屋共栄会と加賀廣会の2つがあり、加賀廣会から独立した店は、加賀廣や加賀藤を名乗ります。

さて、荻窪の『加賀藤』が、加賀廣会系の酒場だとわかったところで、暖簾をくぐりましょう

荻窪駅の西口改札から北へ。タウンセブン前の賑やかな商店街から一本入って裏路地という立地。それなのに、この店は早い時間から圧倒的なオーラというか熱量を醸し出しています。

『加賀藤』の第一印象を一言で洗わうと「まじめ」です。若い人の参入も多いもつ焼き・やきとん業態の中で、これだけ店の人から職人気質を感じるのは稀でしょう。けしてお客さんに厳しいとか、そういう「背筋を伸ばされる」ものではありません。

雰囲気の繁盛している老舗の寿司店や蕎麦店に近いと思います。私が子供の頃からある店でだいぶ年季も入っていますが、よく手入れがされており清潔感があるのも嬉しいです。

飴色に染まった木札の品書きや壁の案内を眺めつつ、まずはビールをお願いしました。

『加賀藤』のビールは昔からずっとサッポロビールです。樽生がサッポロ生ビール黒ラベル。瓶は黒ラベル、ラガー、黒ヱビス。

芯まで冷えたキンキンの大瓶は嬉しい！ビヤタンをみたして乾杯です。

小鍋で提供される味噌味の煮込みは、加賀屋の系譜の大定番。豆腐とホルモンが入り、ネギを刻むのも基本形です。加賀藤の煮込みは、クサミが皆無で豆腐、ホルモンともにトロトロ、フワフワにまとまっています。

煮込みのあの動物クサさが苦手という人にも、ぜひ食べてみてほしい一品。

基本的に豚、鶏の店ですが、もつ刺（ボイル）は牛もつもあります。おすすめは、牛の第三胃であるセンマイ。非常に鮮度がよく、かなり歯ごたえがありまして、噛むほどにでてくる旨味とピリ辛味噌ダレが非常にマッチしています。

すぐに出てくる煮込みや刺しものを食べていれば、時間を感じずに串も焼けて運ばれてきます。おすすめは、やっぱり元祖ホルモンと焼肉。ホルモンは甘辛い味付けで、一般的なタレ焼き・塩焼きとも異なる味付けです。

焼肉は、加賀屋系でスタミナ焼きとも言われている、横隔膜を焼肉タレ風の味に漬け込んだもの。どちらもあとひく美味しさ。昭和、平成、令和と時代をこえて愛されてきた理由がわかります。

セロリなど、簡単な箸休めを摘みつつ、ビールからバイスやハイサワーへシフトしていくのも良さそうです。

荻窪に限らず、杉並はもつ焼き・やきとりの激戦区です。そこで何十年と続いてきたということは、すなわち「通いたくなる美味しさ」だということ。変わらず良い酒場でした。40分程度で切り上げていく、カウンターに集う毎晩通っていそうな常連さんたちに感謝です。