新大久保『百人町近江家』名物つつじ蕎麦とは?木鉢會に入る創業120年の名店がこの街にはある

新大久保『百人町近江家』名物つつじ蕎麦とは?木鉢會に入る創業120年の名店がこの街にはある

国内外から多くの観光客が集まる多国籍な街「新大久保」。駅前は若者向けの店がひしめき合い、大変な賑わいを見せています。そんな新大久保駅の目の前に、明治32年(1899年)創業の老舗蕎麦屋があるのをご存知でしょうか。今回は、新宿界隈では貴重な蕎麦の名店『百人町 近江家』をご紹介します。

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120余年の歴史。喧騒を忘れる駅前のオアシス

創業は明治32年(1899年)。初代が浅草三筋町で修行を積み、麻布笄町(現在の青山付近)で開業。その後、大正5年(1916年)に現在の百人町へ移転してきました。

新大久保駅の改札を出て、信号を渡ればすぐそこ。あまりの近さに通り過ぎてしまいそうですが、一歩足を踏み入れれば、そこは駅前の喧騒が嘘のような落ち着いた空間です。

10年ほど前にリニューアルされ、店内は明るく清潔感があります。客層も慣れた蕎麦好きの方が多く、昼から「蕎麦前」を楽しむご隠居さんの姿も。それでいて、若い人が一人でも安心して利用できる雰囲気もあります。

さらに嬉しいことに通し営業。遅めの昼食や、早い時間からの「昼飲み」にも対応してくれます。

江戸前蕎麦の伝統「木鉢会」

『近江家』がただの老舗ではないことは、その所属する会からもわかります。

東京の老舗蕎麦屋には「銅子会(どうしかい)」や「木鉢会(きばちかい)」といった会があり、『近江家』はその両方に名を連ねています。

とくに「木鉢会」は、昭和33年(1958年)に「銅子会」に所属する店の3代目以降の若旦那衆が、技術の向上と伝承を目的に結成した会。「神田 まつや」や「麻布 更科堀井」といった錚々たる名店が加盟しており、「温故知新」を掲げ、江戸の蕎麦の「正しい技術」を守り続けています。

蕎麦屋酒と充実の「蕎麦前」

ヱビスビール:660円

まずはビールで喉を潤しましょう。樽生は「ヱビスビール」(660円)。明治創業の和食に合う銘柄、これぞ王道という選択です。

お酒を注文すると蕎麦味噌がついてくる

お燗酒は「菊正宗」(650円)と、こちらも正統派。他にも「出羽鶴」や「武勇」といった日本酒、蕎麦屋らしく「蕎麦焼酎の蕎麦湯割り」や「韃靼そば茶割り」なども揃います。

つまみも魅力的です。人気の「自家製鴨わさ」や、揚げたての「活〆穴子天ちら」など、酒飲みの心をくすぐる品書きが並びます。

名物「つつじ」と、失われた「つつじの里」の記憶

つつじ蕎麦:1,670円

蕎麦は「かけ」や「せいろ」が770円と良心的。カレーせいろも気になりますが、ここでぜひおすすめしたいのが「つつじ」という聞き慣れない一杯です。

これは、具だくさんが嬉しい「おかめそば」に、海老天を乗せた豪華なもの。運ばれてくると、その華やかさに心が躍ります。

土佐の本枯節や宗太枯節などをブレンドしたという香り高いつゆ。そのつゆをたっぷり吸った蕎麦屋らしい衣の海老天を頬張れば、旨味がじゅわっと広がります。

ほかにも、かまぼこ、玉子焼き、山菜、しいたけ、さらにはカニカマやわかめまで。呑兵衛好みの具だくさんで、蕎麦がなかなか見えません。

白く細い二八の蕎麦は、温かいかけつゆの中でもしっかりとしたコシを感じさせ、喉越しも抜群です。

ところで、なぜ「つつじ」なのでしょうか。

実はこの「百人町」という土地は、かつて江戸幕府の「鉄砲組百人隊」の屋敷があった場所。店内には鉄砲組百人隊の装束と鉄砲も飾られています。その侍たちが内職としてつつじ栽培を始め、幕末から昭和初期にかけて「大久保つつじ」として全国に知られる名所だったのです。

ということで、ここでは大久保らしい名前をつけた「つつじ蕎麦」をぜひ試してほしいです。

老舗名店好きにこそオススメしたい

神田や浅草といった下町だけでなく、山手線の西側にも、こんなにも素晴らしい名店があります。

新大久保は縁遠いと感じている東京の老舗好きにこそ、訪れてみてほしい一軒です。駅前すぐの立地と通し営業の利便性はとても魅力的。江戸の蕎麦を楽しむ粋な時間を過ごしてみてはいかがでしょう。

店舗詳細

お酒のメニュー
蕎麦屋のつまみと天ちら
冷たい蕎麦のメニュー
温かい蕎麦のメニュー
季節のそば
店名百人町 近江家
住所東京都新宿区百人町2丁目4−1 サン ビルディング 1階
営業時間11時30分~20時30分
土曜日定休
創業1899年