狸小路のアーケードはショッピングが中心で飲み屋はさほど多くない。ですが、そこから一歩折れただけで素敵な飲み屋が暖簾を掲げて飲み客を待っています。5丁目の角を曲がってすぐの場所にある千里は、そんな狸小路界隈の名酒場のひとつ。ぼんやり灯る白い看板に黒文字で力強く書かれた千里の文字がかっこいい。昭和30年創業で、現在は3代目がまもる老舗の串かつ屋です。
すすきのには古い酒場は珍しく、千里は貴重な存在。アット・ホームな雰囲気とリーズナブルな価格、そしてなにより大変美味な串かつを求めて連日満席の賑わい。観光客向けの飲食店が多いすすきのにおいて、こういうご当地酒場の存在はぜひとも知っておきたい。
先代から揚げ場を引き継いで20年の安倍さん。パン粉の付け方ひとつとってもベテランの技があり、強すぎても柔らかすぎてもいけない、絶妙な加減によってつくられる衣ひとつひとつが立った千里の串かつが出来上がります。
低温でじっくり、それでいて重たくなくさっくり揚げる技を目の前で見れるカウンターが特等席です。
飲み物は生ビールがキリンで瓶がサッポロ赤星です。日本酒はコップ酒が260円とリーズナブルで、ビールをきゅっとやったあとはコップ酒で揚げものを飲むという常連さんが多い。
おつまみメニューは清くこれだけ。看板料理の揚げものと、それを引き立てるサイドメニューたち。酢のものやたこ刺しをつまみに、揚がるまでの時間をゆっくり楽しみたい。
名物の串かつは2本で360円とリーズナブル。どの串も気になりますが、頼みすぎると大変なことに。
それではビールで乾杯しましょう。北海道ということで、今宵もサッポロビールから。では乾杯!
「おまちどう」とでてきた串かつは、2本で360円とは思えないサイズ。串は鰻などに使うぼっか串で、ひとり一皿食べればだいぶ満足できるボリューム。北海道の真狩産のハーブ豚をなたねキャノーラ油でからっと揚げています。関西のような漬け味ではなく、上からさらりとしたソースをかけて食べるのが千里。
時間帯によって温度の調整はもちろん、油も変えているという。衣一つ一つがキリっと立っていて、かんだ瞬間に口のなかで軽いサクサクとした音がたちソースとなたね油の風味が鼻に抜けていく。ふっくらとしていて柔らかく、噛むとぎゅっと詰まっていた豚の旨味が広がります。余韻の肉汁をおいかけるように飲むビールと合わせて最高の瞬間です。
長寿の秘訣。よく笑い、よく歩き、よく働き、よく眠る。腹八分目、くよくよしないこと、恋を忘れないこと、時々『千里』に行くこと。そんな札を眺めながら、カウンターでゆったりといい気分。
北海道で串かつというイメージはあまりないかもしれませんが、北海道は畜産が盛んな土地。おいしい串かつに出会うのも必然なのでしょう。
サイドメニューも様々あり、比較的遅い時間までやっていますので、すすきの梯子酒のルートのひとつとして覚えておくべき酒場ではないでしょうか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)
串かつ 千里
011-231-8826
北海道札幌市中央区南3条西5
17:00~23:30(日祝定休)
予算2,000円