都内最古のコリアンタウンともいわれる荒川区・三河島。駅周辺には個人経営の焼肉店が点在し、食欲をそそる香りが漂います。数ある名店の中でも、1964年(昭和39年)の創業以来、食通たちを惹きつけてやまない一軒が『焼肉 山田屋』です。わざわざ訪れる価値のある、下町焼肉の最高峰をご紹介します。
住宅街に佇む、昭和の焼肉食堂

JR常磐線三河島駅から歩いて5分ほど。大通りから一本入った閑静な住宅街に『山田屋』はあります。派手な看板はなく、周囲の家々に溶け込むような佇まいは、まさに地域に根ざした名店の風格です。

一歩店内に足を踏み入れると、そこは昭和の時代にタイムスリップしたかのような空間。
ジュウジュウと肉の焼ける音と香ばしい煙が、訪れた人を温かく迎えてくれます。
店内にはずらりとレトロなガスロースターが並んでいます。年季の入った座敷やテーブル席は、この店が刻んできた歴史そのもの。常連さんたちの楽しげな声が響く活気ある雰囲気も、最高のスパイスです。
壁に換気扇がある程度でロースターごとの排煙装置はありません。煙の香りがつきやすいので、洗濯しやすい服装で訪れるのがおすすめです。
まずは瓶ビールと、鮮度抜群の「刺し」から

まずは瓶ビール(キリンラガー)をもらって、喉を潤します。やっぱり下町には大瓶が似合いますよね!ビアタンを満たしてぐっと一杯。落ち着いたところで、この店の真価がわかる一品をもらいましょう。

山田屋を訪れたら必ず注文したいのが「牛ハツ刺し」です。
丁寧に下処理され、限りなく生に近い状態で提供されるハツは、驚くほどなめらか。臭みは一切なく、噛むほどに優しい甘みが広がります。初代から受け継がれる「自ら選別仕入れ」というこだわりが、この一皿に凝縮されています。
味付けは塩とタレがおらべますが、私は断然タレがおすすめ。

これはたまらないと、瓶ビールに続いて樽生ビールも注文。中ジョッキとイイながら、巷の大ジョッキくらいはある嬉しい重さ。こういう気前の良さも人気の理由なのでしょう。
質の高さが光る焼肉と、名物ホルモン

人気のタンは美しい、そしてしっかり厚みがあります。脂のノリもいいですね!

適度な厚みがありながら、サクッとした心地よい歯切れの良さがたまりません。

噛むほどに肉汁が溢れ、タン本来の力強い旨味を堪能できます。

リーズナブルながら味は確かな「マル得カルビ」。

切り落としとはいえ肉質は申し分なく、しっかりと揉み込まれた甘めのタレが肉の旨味を引き立てます。コストパフォーマンスの高さが光る、頼もしいメニューです。

ここで飲み物をオリジナル酎ハイに切り替えて、いよいよホルモン焼きへ。さすが下町、しっかりエキスがはいった焼酎ハイボールなんです。豚モツに限らず、ホルモンにはガス圧強めの風味付き”ボール”がいいですよね!

店名を冠したミックス焼きは、その日のおすすめホルモンが数種類盛られたお得な一皿。

どの部位も鮮度は抜群で、それぞれの食感と味わいの違いを楽しめます。

王道の上カルビもこのクオリティで盛りも素晴らしい。ホルモン系やオトク感のある部位が多いため、ついつい存在が薄れがちな定番のカルビやロースですが、期待以上のものがでてくること間違いなし。しっかり甘いタレが好きな人はクセになるはず。

〆には、済州島の郷土料理にルーツを持つという韓国のスープ「モンク」を。ホルモンや海藻などが入った滋味深い味わいが、焼肉で満たされたお腹を優しく包み込み、食事を完璧に締めくくってくれます。
予約必須の名店で、本物の味を

創業から半世紀以上、三河島という土地に根ざし、多くの人のお腹と心を満たしてきた『山田屋』。訪問には事前予約が安心です。
流行りとは一線を画す、実直で本質的な美味しさがここにあります。わざわざ電車に乗ってでも訪れたい、東京を代表する焼肉の名店のひとつです。
三河島にはまだまだ老舗の焼肉店やアジアン料理店が多数。好きな人は探検してみてください。
店名 | 焼肉山田屋 |
住所 | 東京都荒川区東日暮里3丁目18−10 |
営業時間 | 17時30分~22時00分 土曜日は12:00 – 14:00も営業 月日定休 |
創業 | 1964年 |