巨大ターミナル・新宿駅の東南口広場を降りてすぐ。見慣れた景色の中にひっそりと佇む『食堂 長野屋』ですが、実は1915年(大正4年)創業で、1世紀以上続いてきた界隈きっての老舗です。暖簾をくぐれば、そこは駅前の喧騒がウソのような静かな空間。昭和の空気をそのまま残しています。今回は、そんな新宿南口の”主”とも言える『長野屋』の名物、真っ黒な肉豆腐をご紹介します。
激動の新宿駅前で見守り続ける、大正生まれの家族経営食堂

創業は1915年。今年で111年になります。新宿駅前という、日本でもっとも人の流れが激しい場所で、一家族がこれだけの歳月を営み続けてきたというのは、素直に驚くべきことだと思います。しかもこの立地です。老舗と聞くと路地裏をイメージしがちですが、長野屋は正真正銘、駅前のまん真ん中に建っています。

店に貼られた古い白黒写真を眺めていて、ハッとしました。まだ新南口が開業する前、店の向かいが国鉄の操車場だった時代の一枚です。今の華やかな新宿駅前からは想像もつかない、煤と土埃の世界だった頃のもの。

長野屋はその頃からずっとここにいます。そして、店の雰囲気も当時と大きく変わっていない様子。テレビが液晶になったくらいでしょうか。忙しない新宿の時間の流れから外れて、昭和の駅裏に紛れ込んだような感覚です。

実際、ガラス張りの外を人が行き交う音は聞こえるのに、店内はびっくりするほど落ち着いている。この温度差がたまりません。
羊羹よりも黒い肉豆腐で大瓶を

席に着いたらまず瓶ビール。キリン一番搾りの大瓶を頼んで、グラスに注ぎます。長野屋の風景にはやっぱり633mlの大きな瓶が似合います。それでは乾杯!

長野屋は大衆食堂。食堂の定番が一通り揃っていますが、とくにノンベエの間では、肉豆腐の店として知られています。それがこちら!

久しぶりに見たので、思わず「わぁ!色が濃い」と、声が出ました。豆腐の色が、飴色を通り越して黒いんです。それも生半可な黒さじゃありません。まるで羊羹のよう。水ようかんよりこっちのほうが濃いかも。スプーンをいれてみればこの通り、中までいい色合い。

一口食べると、かなり甘くて濃い味。しっかりとした味付けで、これは間違いなく酒を誘う一皿です。基本的には定食のおかずという立ち位置ですが、単品でも注文できるので、飲みのつまみとして頼むのがおすすめです。

バラ肉もけっこうな量が載っていて、これがまたよく染みています。豚の脂がいい仕事をしていて、豆腐と絡めて食べると箸が止まりません。

東京で「一番黒い肉豆腐」と言い切ってしまいたくなる、そのくらい強烈な一皿です。

もう一品、かぼちゃ煮も頼んでみました。長野屋ファンの間ではカツカレーが評判と聞きますが、こういう食堂の小鉢や煮物だっていい味なんです。優しい甘さで、肉豆腐の後に食べるとほっとする味でした。

合わせたのは、しっかり濃いめのウーロンハイ(450円)。わあ、しっかり甲類焼酎が入っていますね!この濃さがまたちょうどいい。肉豆腐の濃厚な味に負けない、いい相棒でした。
新宿とは思えない、時間が止まった場所

会計を終えて外に出ると、また新宿の喧騒に引き戻されます。あ、私、新宿駅前で飲んでいたんだ!
駅前のこの立地で、111年分の空気をそのまま残している。これはちょっとした都会の奇跡だと思います。新宿で飲む人なら、一度はこの黒い肉豆腐をぜひ。ゼロ軒目にも丁度いい。きっと忘れられない一皿になるはずです。
店舗詳細

| 店名 | 食堂 長野屋 |
| 住所 | 東京都新宿区新宿3丁目35−7 |
| 営業時間 | 11時30分~21時00分 |
| 創業 | 1915年 |
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