立会川『鳥勝』創業49年、モツの名店！芝浦のつぶしたてを召し上がれ

芝浦の食肉市場（芝浦と場）から毎日欠かさず仕入れる新鮮なモツを、驚くほど低価格で楽しませてくれる「鳥勝」。ディープだけど、とっても朗らかな雰囲気で、一度行けばとりこになること間違いなしの名店です。

「鳥勝」は、とにかくすごい人気店です。

16時過ぎの口開けにあわせて、店の前には列ができるほど。並んでいる顔ぶれは近所のご隠居さんだったり、長く通う常連さんが非常に多いのです。行列のできる飲食店といえば、最近ならばインスタ映えを楽しむ若い人が多いものですが、ここはそうではありません。皆さん、鳥勝の料理のとりこなのです。

鳥はないけど鳥勝です

最寄り駅は大井競馬場の玄関でおなじみ、京急電鉄の立会川駅。

目黒区の碑文谷池を起点に流れる立会川は延々と暗渠をくだり、この界隈で地上に顔を出します。そんな立会川の両岸がこの街の飲み屋街です。

鳥勝も立会川沿いの路地に面した一軒。かなりディープでセピア色なオーラを漂わせていますが、この店の開は業1982年。祐天寺で創業し、しばらくして立会川に移ったそう。

ちなみに、鳥勝という店名ですが、鶏料理は置いておらず、ほとんどが豚と牛のモツ料理です。

まだ17時前だというのに、店の奥まで満卓の賑わい。すべてのテーブルに、一升瓶の焼酎 ダイヤ25°（アサヒビール）が鎮座し、さながら高層マンション群のよう。1本2,000円でキープは一ヶ月。鳥勝では多くの皆さんがビールかこれを飲んでいます。1升でこの価格、近所ならば1本入れておきたくなるのがよくわかります。

入ってすぐの調理場に面したカウンター席は、一人飲みの常連さんが集う特等席。ひとりで来ても、気づけば隣同士で意気投合が当たり前。飲兵衛さんたちの社交場となっています。

そんなカウンターは9席ほど。奥のテーブルで20席以上。これだけのお客さんを対応しているのはご夫婦ふたりだけというのがスゴイ。常連さんが「奥開いているよ」と、様子をうかがう来店客に声がけをしてサポートされています。

そんな忙しい中でも、ご夫婦ともにとっても朗らか。テキパキと動いていらっしゃる中、こちらもテンポを崩さないように見計らって、ビールを1本。

同じ京急沿線、生麦のキリンビール横浜工場で生産されたキリンラガーの登場です。それでは乾杯。

お酒は、生ビール（アサヒスーパードライ520円）、瓶ビール（大びん510円）、冷酒（590円）、清酒（1合240円）、ウイスキー（280円）など。

メニュー探しはお宝探し

店内のいたる所にボトルキープのダイヤの一升瓶と料理の短冊が並んでいます。一箇所にまとまっていないので、何度通っても首筋の運動のごとくぐるぐると店内を見渡し、トレジャーハンティングしなければいけません。だって、どれもこれも美味しそうなのですから。

カウンター正面の冷蔵庫中央付近に貼られているものは、レアなアイテム。今日は自家製マカロニサラダがあります。

モツ料理ならば、だいたい揃っています。串焼きは1本80円からで、テッポウ、あぶら、シロなど。一部の席にはロースターがあり、そこに座れたときだけば上ミノやハラミ（790円～）を自分たちで焼いて食べることができます。

牛肉たたき、レバーステーキ、生姜焼き、豚足…、どれもこれも魅力的。あぁ、また迷ってきました。

席料なし、お通しなし、小皿は200円台から。どれも本当にリーズナブルです。

鳥勝の人気料理は

生野菜（270円）

さて、そんな鳥勝でも皆さんが頼む大定番料理がありまして、そのひとつが生野菜。写真は一人でちょうどいいシングルサイズ（270円）。生野菜にガツやハムを載せるオプションを頼む人もいます。

お酒好きの免罪符、これさえ食べておけば、あとは心置きなくモツとお酒が楽しめます。※お酒は適量で。

といいつつも、これがこれで素晴らしいおつまみです。マヨネーズとモツ刺し用のニンニクが効いた甘いタレがたっぷり！

ミノ刺し（340円）

もうひとつ、人気の一皿がミノ刺し（340円）です。コブクロやセンマイ刺しは多くの酒場でみかけますが、ミノは珍しい。売り切れてしまうことがあるので、早く飲みに来ている人はミノがお目当て、という方もいます。

素人ながらも鮮度がいいとはっきり感じる、コリコリで噛むほど旨味がでてきます。常連さんのすすめで、わさび醤油を試してみましたが、さっぱりとしていてこれもなかなか。

生野菜とミノ刺し。鳥勝来てよかったなーと感じるペアを前にして、思わずにんまり。

あわせるお酒はやはりホッピーかな

ビールのつぎは、ホッピーを。女将さんかご主人が豪快に甲類焼酎を注ぎ込み、ソトとナカが手渡されます。

一度ホッピーをいれると、しばらくナカのおかわりが続く…。今日もテンポよく、しっかり飲み進めていくことになりそうです。※つぎの人の席をつくるために長居はしません。※お酒は自分のペースでゆっくりと。

串焼き（80円）のタレの深～い旨味がたまらない

ほかにも惹きつける料理は山程あります。何時間に煮込むもつ煮込み、ボリューム満点の煮込み豆腐、ぷりっぷりのレバーブロック。

なにより、スタンダードな串のもつ焼き（やきとん串焼き）に技を感じます。

にんにくが効いたタレは脳裏に残る味。タレがおすすめですが、塩で頼むとモツの良さがよりわかります。どの部位も新鮮で丁寧な下ごしらえがされています。

ほぼ毎日のように来ているという常連さんのおすすめ、ホッピービバレッジのしそサワー。酸味強めなお酢系飲料のような味で、濃厚なモツの脂をまたたく間に味覚の中から流してくれます。

「料理の注文は紙に書いてお願いする」くらいのルールはありますが、厳しいお店ではなくとてもフレンドリーです。酒場好きの皆さん、落ち着いたらぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょう。（テイクアウトもやっています）

きっと電車賃は気にもならないほど満足できるはず。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ）