東京「鳥やき宮川」 ああ素晴らしき東京焼鳥。八重洲に恥じない名門の串に乾杯

東京「鳥やき宮川」 ああ素晴らしき東京焼鳥。八重洲に恥じない名門の串に乾杯

2018年3月27日

東京のやきとりといえば、ひらがなで「やきとり」と書けば豚。そして漢字で「焼鳥」ならば鶏という使い分けの伝統があります。豚モツは戦後の混乱期を中心に広がりをみせましたが、鶏のほうは戦前から東京の酒場の肴の顔でした。

新幹線が発着する東京の玄関口・八重洲口。この駅前で70年ほど続く名門焼鳥があります。その名は「鳥やき 宮川」。

総合居酒屋の多い八重洲で、焼鳥などの鳥肉に献立をしぼって、鶏一筋で商売をされる専門店です。

 

東京駅の周辺は他の主要都市のように駅前に飲み屋街は実は多くありせん。駅ナカ、もしくは商業施設内のレストランを使うことがほとんどでしょう。

 

そんな東京駅で八重洲のビル裏に広がる飲み屋街は貴重な存在です。新幹線ホームまで戸口から戸口で10分ほどの距離。新幹線の時間までに過ごす東京での時間の使い方としても、八重洲はうまく利用したいところ。

 

鳥やき宮川は八重洲口から徒歩3分ほど。宮川といえば築地の鰻屋の屋号で知られますが、鰻の宮川とわずかな距離にある鶏肉専門の宮川食鳥鶏卵 も明治35年に創業と老舗です。鳥といえば宮川と言われるほど信頼はあつく、そこから暖簾をわけた焼鳥店もみな名店です。

 

八重洲の宮川は築地の直系。今日も看板の鳥やきだけで地元のサラリーマンの舌を満足させています。

 

一階、二階、さらにははなれもある大箱ながら、平日は金曜日でなくとも満卓で断られるほど賑わう店。まさに地元に密着し愛される一軒です。

 

店内には少し懐かしいポスターも。まるで昭和のおわりで時間を止めたような空間に、ノスタルジーと、あの頃に感じた「飲みたい!」がよみがえります。

 

常連さんには著名な方も多いようようで、八重洲の老舗という看板は飾りではありません。

 

ビールはずっと昔からサッポロビール。東京の名店に似合う星のビールです。黒ラベルの中ジョッキは昔ながらの500mlサイズ。では乾杯!

 

焼鳥屋のお通しといえばうずら入の大根おろし。白木のカウンターに名入の箸袋。ぴしっとしたかっこよさ。

 

昔サイズの生ビールは600円。大瓶は黒ラベルで650円。酒は日本盛。安定、王道の東京の焼鳥の顔ぶれです。

 

焼き物は値段がありませんが、300円前後とのこと。感覚的には、激安のガード下系よりは高級でも、店の雰囲気と落ち着きを考えれば妥当という仕上がりです。ただ安さだけが酒場の価値ではありませんから。

 

鰻用のひとまわり大きいボッカ串で焼かれた焼鳥。二人でも盛り合わせ一皿を注文可能で、ボリュームとしてもシェアでちょうどいいくらい。もちろん一人飲みだっていけるお店。味付けはお任せで間違いなし。

 

大根おろしは焼鳥に添える薬味としても役割が大きい。タレでも塩でも、そっと添えればさわやかで軽くなり、食が進みます。

 

鳥の流れは宮川の流れ。上質な国産鶏を鮮度がよい状態で仕入れてその日のうちに焼いたもの。

 

冷凍もあたりまえに並ぶ時代にフレッシュで串打ちしたてのものがやってきます。

 

多少高くても価値を感じる、この立派な焼鳥。ぱりっとした白衣と板前帽をつけた職人さんが先輩から後輩へと代々バトンを繋いできた、技の一本。雰囲気だけを今風につくった店にはない本質的な価値を感じます。

 

ウーロンハイにレモンハイ。ビールと日本酒だけでは強すぎるので軽く一杯の休憩を。

 

〆には鶏スープがついてきます。鶏ガラにかるく塩で味を整えてた簡単なものですが、これが美味。

 

スープで日本盛が飲めるほど、〆と括れない美味しさです。じっくり暖まり、焼鳥の美味しさに浸るひととき。

東京駅までは徒歩で5分ほど。今日は安心して飲めそうです。大箱なのに満卓になる理由は食べて飲んでみればわかります。名店の風情に幸せをわけてもらいました。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

鳥やき 宮川
03-3271-8136
東京都中央区八重洲1-7-3
17:00~22:30(土日祝定休)
予算2,600円