浅草「あるぷす」 六区の路地のむこう、下町大衆食堂を愛でる時間。

浅草「あるぷす」 六区の路地のむこう、下町大衆食堂を愛でる時間。

2018年1月16日

浅草は昭和の雰囲気を残す酒場や喫茶店が多いことで知られていますが、食堂も実は名店ぞろい。戦後復興とともに下町を中心に広まった大衆食堂。その面影に浸れるお店「あるぷす」をご紹介します。

浅草六区にあり、再開発が進むメインストリートより1本奥へ入った路地にのれんを掲げています。観光客があまり歩かない場所でお客さんは地元でご商売をされている方が中心。競馬開催日になればウインズ浅草が近いこともあり、馬券を持ったお父さんたちも集まるお店です。

 

4人テーブルが中心で定員は20名ほどのコンパクトなつくりは、まるでドラマのセットのよう。ちっちゃくまとまっていて可愛いのです。

 

品書きで埋め尽くされた壁。席に座れば、何を食べようとみんなで首を左へ右へ。煮物が豊富でこれに揚げ物、炒め物が加わります。なんとうな重もありますが、それは浅草らしさ。

 

何を食べよう。このメニューを前にして果たして即答できるでしょうか。

 

額に入った普遍メニュー。ハムエッグ定食やナポリタンの文字は食堂好きならたまらないはずです。

 

ビールはアサヒ、キリン、サッポロと仲良く3種類。アサヒビールのお膝元なのでスーパードライが飲まれているかと思いきや、キリンラガーもサッポロラガーも同じくらい飲まれています。

そう、ここは食堂なのにお昼からビールの消費量が大変多いのです。

私は赤星で。老舗食堂に赤い北極星。何十年も変わらない眺めが楽しめます。乾杯!

 

小鉢は100円台からあり、メインを頼む前に小物でちびちびとビヤタンを細かく刻んでいくのが好き。かぼちゃ煮(250円)。

 

大衆食堂のお漬物は結晶で輝いていなくっちゃいけません。きゅうり漬け(150円)は提供の前にお姉さんがパンダ柄のうま味調味料をふりふり。大変美味しゅうございます。

 

鯖味みそやカレイ煮といった典型的な東京下町食堂の煮魚が人気。ですが、筆者の目当てはこの肉とうふ(650円)。昔、正月明けの寒いなか初めてあるぷすに駆け込んで、そのとき頂いた肉とうふが暖かく優しい味でした。以来、たまらなく好きに。

だいぶ甘めの味付けで肉がくちゅくちゅとなっていますが、それも不思議とあとをひくのです。きつね色のお豆腐も素敵でしょ。

 

お酒は昔の等級制の呼び名が残っています。燗酒の2級酒をきゅっと飲みながら、頭上のテレビには競馬中継。酔って耳を赤くしたお父さんやジャンパー姿の職人さん、昔から通っていそうな家族連れに囲まれて、下町酒場を愛でるひとときです。

 

江戸の頃から有名なお店が立ち並ぶ浅草。なかなか基本形の大衆食堂へは光があたりませんが、だからこそ、飾らない日常の雰囲気が変わらずに残っています。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

あるぷす
03-3841-6963
東京都台東区浅草2-5-3
12:00~21:00(木金不定休)
予算1,800円