高松・瓦町「美人亭」 瀬戸内を食べる。人情を肴にお酒が美味しい

高松・瓦町「美人亭」 瀬戸内を食べる。人情を肴にお酒が美味しい

2017年9月11日

日本の海は美味しい肴で溢れています。激しい海流に入り組んだ海岸線が広がる巨大な天然の養殖場である瀬戸内海もまた魅力的で、外海の魚介類とは違った美味しさがあります。ぷっくりと太った鯛やヒラメ、メバルにオコゼ、蛸や蝦蛄など種類も豊富。

そんな瀬戸内の魚で幸せになれる素敵な居酒屋に、香川は高松で出会いました。高松琴平電鉄の瓦町駅近く。この界隈は濃厚な飲み屋街が広がっていて、Syupoをご覧になるような飲み歩き好きの皆さまならば一晩中梯子していても飽きることがないでしょう。

路地に面した老舗や大衆的な飲み屋が多いですが、今回ご紹介するお店はスナックやクラブなどが入居する夜系の雑居ビル内にあります。まさに”知る人ぞ知る店”。

高知の飲み屋で知り合った方に教わって来ましたが、この場所は通りがかりでふらりと飛び込めるような立地ではありません。

18時頃、すでに店内からは楽しそうな笑い声が聞こえてきます。これは良さそう。縄暖簾の隙間からこっちをみている狸に招かれるように入店。

1986年(昭和61年)創業の「美人亭」。女将さんとお手伝いの女性の二人で切り盛りするお店。まさに美人亭。

カウンターは6席ほど、小上がりのテーブルが2卓とコンパクトなつくりではありますが、席数以上に種類豊富で美味しそうなおつまみや海産物がカウンターに鎮座しています。

簡単な漬物や酢味噌和えに並び、高松の家庭料理の代表格であるアジの南蛮漬けが実に美味しそうに「食べて」とアピールしてきます。香川の名物「いかなご」も忘れずに食べておきたい。

旦那さんは漁師という女将さん。なるほど、だからかと納得の豊富な品ぞろえ。新鮮でぴちぴちの海老はぜひ刺身でいただきたい。

美人亭には料理のメニューがありません。大皿料理から好きなものを選び、魚介類は食べ方を相談すればよし。このヒラメを使って簡単に刺身を盛り合わせてね、なんていう感じで。

お酒は生ビールがキリン一番搾りで、瓶ビールはキリンラガー。日本酒は金陵があり、常連さんは麦焼酎をお湯割りにしてちびちびといつものひとときを楽しまれています。

それではまずは一番搾りをもらって、乾杯。

いくつか見繕ってもらった刺身盛り合わせ。サヨリや気になっていた海老をいれてもらいました。ヒラメは向こうが透けるほど鮮度が良い。すべて近海のもので、言うまでもなく最高に美味です。まさに瀬戸内海を食べている気分。

続いて、カマスの味噌粕漬けを。さぬき味噌の産地であり味噌料理の多い香川県。味噌粕漬けもぜひ食べておきたい土地の味です。比較的あっさりとしたカマスも旨味が引き出され、日本酒を欲する味になっています。

地酒の金陵をぬる燗で一本。燗つけ器でささっと温めてもらいながら、女将さんとの会話に花が咲きます。徳利を傾けて、とととっと。

きゅっと一口。古くからの日本酒の味なのですが、甘さがあり余韻はすっきり。金陵は魚と合わせることで、その魅力を最大まで引き出すように思います。

続いて焼酎をロックでひとつ。刺身で食べた海老のカブトを素揚げにしてくれたので、それをつまみにゆるりと一献。カウンター席ゆえとなりの常連さんとも自然と会話が盛り上がり、高松の昔話をいろいろと伺うことができました。

美味しい魚に美味しいお酒、そしてなにより素敵な女将さんや常連さんが美人亭の魅力。高松のお母さんに会いに行く、そんな気持ちで次回四国へ渡る際にもぜひ足を運びたい一軒です。

席数がさほど多くはありませんので、一人・二人でいくのがおすすめ。他にもお店は色々ありますから、一軒目で入れなくても時間を空けてもう一度。

割烹ほど格式張らず、大衆酒場ほど雑多ではない。ちょうどいい具合の美酒美食が楽しめる空間です。メニューはありませんが、そんなに高くありませんからご安心を。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

美人亭
087-861-0275
香川県高松市瓦町2-2-10
17:00~22:00(日祝)
予算3,000円