町屋「もつ焼き亀田」半世紀を超えて愛される街の味

町屋「もつ焼き亀田」半世紀を超えて愛される街の味

2017年7月15日

都電荒川線と京成線、そして地下鉄千代田線が交差する下町の小さなターミナル「町屋」。古き良き昭和の下町が残る味わい深い街です。地元の名物はもんじゃ焼きで、月島ほどの密集度ではありませんが、戦後の復興の足跡を食で感じられるご当地グルメです。

復興メシといえば、欠かすことができないもつ焼きとボール。地元でもつ焼きといえば最初に思い浮かぶのは「亀田」という人は多い。創業60年ほどの老舗で、ご夫婦で暖簾を守る家族酒場です。

戦後の食糧難の中でも比較的手に入りやすかった豚モツは、働く人々の「おつかれさま」に寄り添う身近な存在となりました。あわせて、ビールや焼酎も少ない時代に、連続蒸留で安価に製造可能な甲類焼酎も市場に広がり、こうして東京はもつ焼きと甲類焼酎ハイボールの組み合わせが定番化していきます。

亀田はそんな東京の戦後を支えたもつ焼き酒場を今に伝えています。みんなが黄色と呼ぶ色付きの焼酎ハイボールは290円、そしてモツは90円と、いまも日々の生活に寄り添う酒場らしい価格を維持しています。

とはいえ、最初はビールで。洗浄が行き届いてきめ細やかな泡が嬉しいドラフトスーパードライ(490円)。大びん550円のほうが割安ですが、ここではドラフトをつい飲んでしまいます。ぐいっと飲んで、小声で「くぅーっ」。

サイドメニューも昔からほとんど変わらない。豚汁やご飯がありますが、実際に定食屋感覚で利用していく仕事帰りの男性もみかけます。

亀田で頼む料理はだいたい決まっていて、最初は生野菜。そして煮込み、そのぐらいでモツが焼きあがるという流れ。飲み屋で食べる生野菜って、雰囲気が美味しくさせてくれませんか。マヨネーズたっぷりのトマトをビールの合間に頬張れば、今日も1日がんばったという気がします。

280円のもつ煮込みは、しろモツで味噌ベース。よくアク抜きがされていてくさみもなく、さらさらと食べられる一品。数人で飲みに来ても、「煮込みは人数分にする?」とオーダー時に聞かれる定番料理です。

煮込みでテンションが上がってきたら、いよいよ黄色の出番。ビアジョッキを使用しているのは昔から。氷いりでスライスレモンが一枚。度数は平均的ですが、ボリュームがしっかりあるのでスイスイと飲んで満足。

モツと焼酎ハイボールの組み合わせは”マリアージュ”なんて言葉ではなく、ただ一言「イイ!」のです。カシラは脂の部位ではなくほどよく肉汁が詰まったもの。肉だんごも当然手作りです。絡まりのいいとろっとしたタレはしっかりと甘く、肉の脂とあいまって、絶妙な余韻になります。

この余韻に黄色をぐいっと合わす。毎日飲んでいても飽きることなく幸せな瞬間です。シロは食感がしっかりあるものの下処理が行き届いていて旨味が強く、なんこつは見た目ほど硬くはなく周りについた肉がいい味をだしています。

下町の郷土の味・もつ焼きと焼酎ハイボール。派手さはないし茶色系だけど、だからこそホッとします。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

亀田 もつやき店
03-3892-0383
東京都荒川区町屋2-15-19
17:00~23:00(日祝定休)
予算1,300円