静岡「金の字支店」 地元が愛する肴、カレーがつなぐ人情がある

静岡「金の字支店」 地元が愛する肴、カレーがつなぐ人情がある

2017年5月15日

静岡のおつまみといえば、桜えびやしらす、黒はんぺんなどが定番ですが、「もつカレー」というものが実は知る人ぞ知る名物です。いや、Syupoを御覧の皆さんは”ノンベエ”さんでしょうから、知っているよという方も多いかもしれませんが。

静岡市のお隣、清水の焼鳥屋「金の字」で誕生したもつカレーは、名古屋のどて煮をヒントにしたモツ串の煮込みです。

粘度のあるカレーは具材らしい具材は一切なく、どて煮の味噌のごとくカレーだけが入っています。とはいっても、その味は家庭のルーよりも複雑な味わいです。このカレーと串に刺した豚モツが大鍋でグツグツ煮込まれていて、それを串ごと掴んで頬張るという料理です。

清水の金の字は、その支店が静岡駅北口の飲み屋街にあり、清水に行かなくともその味を楽しむことができます。京都・洛中のお酒、キンシ正宗の袖看板とキリンの行灯に電気が灯ると営業開始の合図です。すでに店先にはふんわりとカレーの香りが漂い、食欲と飲み欲をくすぐられます。

店は左に厨房、それに向かい合うようにカウンターが伸び、冷蔵ケースに今日のネタがずらりと並びます。豚、鳥ともにもちろん生を使用し、その串打ちの丁寧さは席についたときからみることができ、期待が高まります。

さらに海鮮やちょっとしおつまみも日替わりで用意。頻繁に通う常連さんもいらっしやるので、毎日カレーにならないようにとお店とお客さんの会話から増えたのだと聞きます。

串は1本から注文可能で、150円。もつカレーはすぐにでますが、焼鳥は生から火を通していくので少し時間がかかることを考慮してご注文を。

ところで関西は牛モツの食文化で、東京は豚モツがほとんどです。その境目を探し歩いているのですが、こうした老舗が豚”カシラ”など東京的なネタを用意しているというところを見ると、静岡は豚牛モツ境界線の東京側なのかもしれません。

奥には小上がりがあるので、グループで飲みに来る人も歓迎されます。ですが、ここはやっぱりマスターとの会話や、お客さん同士の一期一会の会話が魅力なので、できれば一人・二人をおすすめしたいところ。

すぐにやってきます、もつカレーとお通しのキャベツ。キャベツはおかわり自由。清水の本店はサッポロですが、静岡の支店は古くからキリンです。ちょうど最近発売の47都道府県一番搾り「静岡に乾杯」が入っていましたので、これで乾杯を。

キャベツをナプキン代わりにして、串をキャベツで挟んで食べると手が汚れません。串の持ち手までどろりとカレーをまとっているので、最初は食べ方に悩みそう。

もつカレーというと、あぁカレー煮込みね、なんて言われることがありますが、似て非なるもの。カレー煮込みは、あくまでカレー味の煮込み。もつカレーはどて煮のカレー版です。

もりもりキャベツ。食べきるとおかわりいりますか?となります。

クタクタになるほどでもなく、絶妙に食感や肉っぽさが残るシロとカレーのバランスが絶妙です。ちっょと濃い目の色合いの一番搾り静岡に乾杯はアルコール度数5.5%とちょいと高め。もつカレーともよく合います。

ビールのつぎは、富士山麓ハイボールなんていかがでしょう。キリンが御殿場でつくるウィスキーで、静岡県では定番のご当地ドリンクのひとつです。

もつカレーだけでなく、一品料理やもつ焼き・焼鳥もはずさない。美味しく感じるのは、丁寧な調理というのはもちろんですが、なによりマスターの人柄が大きい。

ふんわり、ほんわか、それでいて手先は常に真剣。お客さん同士の会話をほどよく繋ぎつつ、次々と自慢の料理を用意してくれます。

他にも老舗・銘店の多い静岡ですが、やはりもつカレーを食べずして帰ってしまうのはもったいない。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

金の字支店
054-251-0041
静岡県静岡市葵区常盤町1-1
18:00〜23:00(日祝定休)
予算1,800円