和歌山「田中屋酒店」 ぶらくり丁の常連処で酒話、おつまみ100種の角打ち

和歌山「田中屋酒店」 ぶらくり丁の常連処で酒話、おつまみ100種の角打ち

和歌山はJR和歌山駅と南海電車の和歌山市駅の2つのターミナルがあり、両駅が挟む形で、中央に和歌山城をはじめ市街が広がります。繁華街にあたる商店街は「ぶらくり丁」と呼ばれ、古く江戸の頃から栄えてきました。

和歌山市内は、お堀と運河のある水の町。風情あるせせらぎが散策をより楽しませてくれます。

 

大阪へのアクセスの良さからストロー効果もあり、市街は往時ほどの賑わいはなくなりましたが、それでも街並は立派で、56万石を誇った紀州藩の余韻のようなものは飲み屋街を歩いていても感じられます。

 

ぶらくり丁と和歌川が交わる場所に架かる雑賀橋の近くに、一軒の酒屋があります。業務卸を中心として商売されているお酒屋さんですが、小売スペースの一部を角打ちとして改装し、店内で飲むことができます。

 

和歌山の角打ちはどの店も、酒屋の片手間とは思えないほど料理が充実しているのですが、田中屋もそれ。店の奥は完全に居酒屋となっています。立ち飲みではなく、カウンターやテーブル席があるので、じっくり長居して飲んでいきましょう。

 

ここは関西の文化圏なのに、まさかのドリンクメニュー。ホッピーにキンミヤに、赤星などまるで関東の居酒屋のラインナップです。笑顔が素敵な店主さんは、「東京から来た人が目を丸くしていきますよ。逆に地元の人にはホッピーが飲めるお店が少ないので、これを目当てに来てくれる人も多いのです」と。

和歌山らしいといえば、中野BC社の梅酒が揃っていて、価格も300円とお手頃です。

 

サッポロビールとのお付き合いが強い酒販店ということで、店内のビールもサッポロ。でも、黒ラベルだけではなくてまさかの琥珀ヱビスが樽生(450円)で提供されているのに、さらにびっくり。和歌山で琥珀ヱビスを置く店は、数えるほどしかなさそう。状態よしの生で乾杯!

 

どこからこんなに料理が涌いてくるの?と驚かされる100酒類近いメニューの数々。乾きものに、ちょっとした大皿料理を並べているという角打ちは多いですが、ここは刺身だけでも様々。

 

タコで有名な和歌山。地ダコぶつぎりも気になります。

 

焼きそば、焼きうどんもこのバリエーション。ここ、本当に角打ちか、という内容です。

 

酒屋のスペースを少しずつ改装して厨房をつくり、鉄板から揚げものまで最終的にはなんでもござれになったのだとか。

 

お酒は酒屋なので言うまでもなく豊富。メニューにないお酒も日替わりで空けていくので、今日何があるのか楽しみにする常連さんの姿も。

 

和歌山県は意外にも、生マグロの水揚げは日本一。年間を通してキハダ、ビンナガ、クロマグロなどが捕れ、そんなマグロは寿司屋や料理屋だけでなく、街の大衆酒場から角打ちまで広く日常的に食べられています。

 

ヨコの中落ちはこれで500円。店の看板メニューでもあり、こうくると日本酒は黒牛や久長が飲みたくなります。

 

土地の味には土地の酒。めずらしい銘柄は1合500円、定番は中野BCの長久で300円と、これまたお手頃です。

 

ビールは赤星のダイビン(450円)あり。価格はもちろん酒屋値段なので、フトコロ具合を気にせず飲みたいだけ飲んでもほどほどで楽しめます。

 

料理は関西の激安立ち飲みと比較するとやや高いかもしれませんが、それでも料理の内容を考えれば和歌山にあって十分リーズナブルな店です。

 

続いて樽詰めの氷彩サワー(350円)。肉団子にはチューハイですね!

 

食べ物はサバサンドまであり、とにかくなんでもある角打ち。価格はお手頃で、そんな普段使いの良いお店だからこそ、近隣のお酒好きの常連さんで賑わいます。

店の人も常連さんも、初めての人にも親しく接してくれてとても人情味がある空間です。出張や観光で和歌山に訪れた際には、地元の人々との一期一会を楽しんでみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

酒処たなかや/田中屋酒店
073-422-6415
和歌山県和歌山市雑賀町13
17:00~23:00土日祝定休)
予算2,000円