大泉学園「厚岸」 まだまだ旬の牡蠣や、良心的な肴を求めて

大泉学園「厚岸」 まだまだ旬の牡蠣や、良心的な肴を求めて

2017年3月9日

牡蠣の産地として知られる北海道厚岸。釧路からさらに東へ進んだ場所、鉄道ならば札幌から5時間30分の距離にあります。

なかなか気軽に飲みに行くことは少ない街ですが、東京23区内にありながら厚岸の気分が楽しめる酒場が西武池袋線大泉学園駅前にあります。いつかは厚岸の酒場のカウンターで店主と語り合いながら地場の牡蠣を食べたいところですが、それを夢見て今宵は練馬で厚岸です。

大泉学園駅の周辺は再開発で大きく雰囲気を変えましたが、酒蔵厚岸の佇まいは昭和のままで、大衆酒場らしい味わい深い店構えが迎えてくれます。

創業は1979年(昭和54年)、厚岸町出身のご夫婦が始めたお店で、ご当地酒場がブームになる以前から北海道の食材で近隣の人々をとりこにしてきた酒場です。

メインとなる海産物は厚岸からの直送で、ししゃもやホッケなどがありますが、看板書品はなんといっても季節限定、本場の真牡蠣です。

それに合わせるお酒はやはり北海道のものが中心。生ビール、瓶ビールともに乾杯の一杯はサッポロです。

日本酒は男山や国士無双といった北海道の定番もよいですが、ここはぜひ釧路の福司や根室の北の勝といった地場消費型のお酒を試してみてください。こちらではなかなか手に入らない貴重な銘柄です。

山、田、海と、同じ水の流れで育つ農産物や海産物と日本酒はセットで飲むのが一番です。

昔ながらのジョッキが嬉しい。生ビールの注ぎ方も丁寧で非常にレベルの高いサッポロ黒ラベルが提供されています。お通しのなめこも揃って、それでは乾杯。

無垢の板でつくった小さなテーブルがずらりと並び、口開けに合わせて集まってくる常連さんたちでどんどん賑やかになる店内。開店したての酒場の活気は心地いい。

牡蠣はいつでもあるわけではなく、いまだけのご馳走。3個900円なので、まずはこれを頼まなくては。刺身はボリューム満点、1人だと盛り合わせは食べきれません。

定番メニューも充実しています。350円から600円でだいたいのものが食べられて、やりは盛りがよいです。立ち飲みと比較してはもちろん高いものの、宴会から一人飲みまで、会計したときに思ったより安く済んだという感覚になります。

長手方向で10センチはある大ぶりの牡蠣、ブランド名”カキえもん”。殻のサイズいっぱいまで詰まって、ぷりぷりの見た目。軽くレモンを絞るもよし、一個目はそのまま豪快にちゅるりと食べるのもよし。

プランクトンを栄養に、厚岸湖から厚岸湾にかけての海そのものがここに濃縮されています。海水が完全に抜けていなくて、それが天然のソースの役割をしていて、そのまま食べて丁度いい感じ。

おしゃれなソースを添えてワインと合わせるのではなく、海の味とサッポロビールという組み合わせは庶民的ですが、それが大衆酒場らしさ。厚岸の酒場の笑い声が響く空間にぴったりの味です。

さて、厚岸といえばもやしオムレツという人も少なくないはず。400円でボリューム満点のおつまみです。ケチャップとマヨネーズでかわいい盛り付けで、女性にも大人気。

中はもやしで詰まっていますが、僅かながら豚肉が入っているところに女将さんの優しさが感じられます。牡蠣や刺身で贅沢した分を、もやしオムレツや名物の山盛り盛り合わせサラダ(600円)で価格のバランスをつければ2,000円ほどで大満足。

盛り合わせサラダは大盛りで有名なのですが、1人で頼むと食べきれませんのでお気をつけください。

良心価格でボリューム満点の飲み屋の肴と、厚岸直送の海産物や山菜などを揃えている「酒蔵厚岸」。元気のよいスタッフの丁寧な接客もあって、飲み屋好きの万人におすすめしたい大定番です。

グラタンからじゃがいも料理まで、北海道気分を味わうならばここ。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

酒蔵 厚岸
03-3978-0032
東京都練馬区東大泉5-41-13
16:00~23:20(ほぼ無休)
予算2,200円