神田「みますや」 今年で110歳、時代変われど酒場変わらず

神田「みますや」 今年で110歳、時代変われど酒場変わらず

2015年1月28日
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1905年創業、東京の居酒屋で最も古いといわれているのが「みますや」。関東大震災後に建てられた銅張り建築の建物は、いかにも昭和初期の風情。この建物で、いったいどれだけの人が笑ったことか。飲み屋さんは笑う場所。笑った人が多いお店には、やっぱりなんだか「福」があるような。

今日はそんな「福」を求めて久しぶりのみますやへとやってきました。

神田から徒歩5分。道が斜めに走る神田は何度歩いても迷うのですが、みますやは界隈の電信柱にたくさん「ここひだり」なんて書かれているので、素直にそれに従えば簡単にたどり着けます。

筒型のちょうちんにはどぜうの文字。縄のれんのかかるドアの向こう、透けガラスからぼんやりと暖色の明かりが見えます。

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お店は時代とともに拡張をしてきたので、外観とくらべて店内は奥行きも幅も広い。新たに増えたところは違った作りになっているので、座る場所によっても雰囲気が異なります。座敷でゆったり宴会をするのもよし、相席当然のテーブル席でしっぽり飲むもよし。

長年使われ続けてきた建物はノスタルジックという言葉がぴったりなのですが、寂しい感じは一切なく、活気溢れています。

ビールはアサヒ、キリン、ヱビスから選べます。
みますやだったら、私はキリンビールかな。こちらのお店とキリンさんの関係は大変長く、壁には平成初期の生ビールマスターの証明書も貼られています。

この空間でキリンクラシックラガー、完璧です。乾杯!

お通しのおからは「みますや」の定番名物。しっとり甘め。お酒がとにかく進みます。
そしてすぐ出る料理、肉豆腐。これもおなじみです。初代が考案したというすき焼き風の牛煮込みは、こちらもちょっと甘め。きっちりと詰まった固めのお豆腐との相性は抜群。

そして、ガツンとくるクラシックラガー。いい感じ♪

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看板メニューはどじょうですが、ここの穴子もぜひ食べてみて欲しいです。ぷりっとした身なのですが箸の通りがよく、舌の上で溶けるように広がっていく食感は絶妙。神田の老舗で江戸の味、それを大衆酒場価格で楽しめるのだから、みますやの穴子は素敵。

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今日のお刺身は何にしよう。
甘エビという文字が、筆圧高めに書かれていましたので、これいっておきましょ♪

ひげが立派な甘エビはかなりの大ぶり。
ここのお刺身、盛り合わせでは厚切りのマグロを先頭にはずれのない旬のお刺身が並んできますし、単品ででてくる今日の魚もまず間違いなし。

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このエビにはお燗酒かな。
大きい徳利で「白鷹」(1合400円)をお願いします!

こちら、各地の定番どころの地酒が幅広く揃っていて、こういう古い酒場に通っている方々の心をくすぐる銘柄ばかり。冷たいお酒ならば、〆張鶴あたりを飲みたいところでしたが、今日はとても寒くて、やっぱりお燗酒。

定番酒といえば菊正宗や白鶴、松竹梅などが多い印象ですが、みますやは白鷹っていうのがまたいいじゃないですか。

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少しお時間いただきます。と必ず言われる焼鳥はひと通りつまんだあとの後半にやっと登場するのですが、ぜひ最初に頼んで出てくるのを待ってでも食べて欲しいもの。
焼鳥は身が大きくてほくほくとし、タレの絡み具合も絶妙、焼鳥屋のそれとは違う、老舗酒場ならではの印象を受けます。

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桜鍋、ふぐ鍋、柳川鍋なども名物で、冬場の宴会は鍋を頼むのが基本。
老舗の酒場だからといって敷居は高くなく、串かつや唐揚げなんかもメニューに揃い、そしてどの料理も600円前後と一般的。

「今日はちょっと特別な居酒屋に行こうよ、でもお財布はいつもと同じで大丈夫。
雰囲気がいいからきっと驚くよ?」

そんな会話をしながらやってくる人も多そうです。

明治生まれの酒場は、店主もお客さんもみんな代替わりした今でも、昔と変わらず笑いで溢れています。人々が愛し続けて空間には「福」がある♪

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見なゆ)