新宿「陶玄房」 改めて問う、居心地の良い酒場とは

新宿「陶玄房」 改めて問う、居心地の良い酒場とは

2014年9月4日
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非現実な空間に、程よい緊張感。魅惑のお酒に店ならではの看板料理。自宅ではなく、あえて外食する理由はそこにあるのでしょう。
さらに言えば、それに独特な心地よさというものが加わってきます。この心地よさという要素がなんともあやふやな価値観なのではないでしょうか。

騒がしく狭い空間にぎちぎちにつめ込まれていても心地よいときはあるし、個室でししおどしの音が聞こえてくるような上質な空間でもダメなものはダメ。

じゃあ本当に心地よいというものは?
答えは人れぞれですが、たとえばここはどうでしょう。

新宿の陶玄房は新宿三丁目にある池林房の系列のお店です。新宿で長く続くグループなのでご存じの方も多いでしょう。特に池林房は椎名誠との関わりが深いことでも有名ですね。アーティストや作家、マスメディアといった文化人の愛する大衆酒場です。

マルイ本館の北側の路地に、ひっそりとした地下への階段を降りて行くと重厚な木造のドアがあり、そこが陶玄房の入り口です。

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ヱビスビールは池林房系の定番として昔から変わらずあります。
しっかりと鮮度管理された樽入りビールは、毎日洗浄されているディスペンサーを抜けて注がれます。泡はふわっと、ビールはキンキン、これぞ”旨い”ビールといえますね!

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料理もお酒もなんでもある、というのがここのメニューの特長です。
お刺身、揚げ物はもちろん、中華料理からピザ、オニオングラタンスープまで。それにあわせてお酒も多く、日本酒やワインの種類は平均以上。

さすがにソムリエが居るお店ではないので過度な期待はいけませんが、毎回、「うん、良いワインだね」と感じさせてもらっています。

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日替わりのメニューは季節を反映したものがたっぷり。ちょうどこのときはクジラが入荷していたようで、クジラユッケの注文がたくさん入っていました。

料理は300円から1,000円くらいと、新宿の繁華街、駅に近いところにあるお店とは思えないお手頃設定。しっかりした量が出てくるのであれこれ頼んで数人でシェアするのにちょうどいいです。

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ベトナム風サラダは、パクチーの風味がたっぷり。あとを引く美味しさです。これに合わせるお酒は、、、と考えましたが、今宵はワインにしましょう。
白ワインかな、ミネラル感のしっかりした硬い味が合いそうです。

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ここにきたらぜひ食べていただきたいのが、この肉豆腐。
牛すじを赤ワインで煮込んだ西洋風の煮込みが、ぎゅっと引き締まった木綿豆腐との相性抜群。ねっとりとしたスジの旨味と木綿豆腐のさっぱりさがこんなに合うなんてねー。

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内装は池林房同様、全体的に木目とステンドグラスを多用した独特な雰囲気。壁にはられているポスターは演劇関連のものが多く、お客さんたちの会話も、音楽や出版、演劇関連が多いです。

新宿といえば今はいろいろな表情を持っていますが、街の歴史を紐解いていけば芸術や芸能の街なんですよね。
1780年、大火で消失した花園神社の社殿の復興のために境内で見世物や演劇をしたのが始まりで、歌舞伎町の名前もその流れからつきました。ゴールデン街が文化人のたまり場になっているのもかわりませんね。

そんな新宿のカルチャーを感じさせてくれる陶玄房は、新宿という街としての居心地の良さがあるのではないでしようか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見なゆ)

陶玄房
03-3356-2393
東京都新宿区新宿3-31-5 新宿ペガサス館 B1F
17:30~02:00(土日は16:30~・金土は翌朝5:00まで・不定休)
予算4,000円