高雄「阿琴擔仔麵 海產」 巨大港湾都市の熱炒で、雑然空間に浸る楽しさ

高雄「阿琴擔仔麵 海產」 巨大港湾都市の熱炒で、雑然空間に浸る楽しさ

海外旅行人気ランキングで常に上位に入る台湾。とくにグルメ好きには高い評判です。どこか懐かしの日本を見ているような、そんな気分にさせられる街並みは、他の国の海外旅行とは違った楽しさがあります。

日本文化が幅広く浸透していて、かつての統治時代からものに加え、最近は商業や交通、飲食店に最新の日本式が次々と取り入れられています。それは、お酒や居酒屋にもみてとれます。

そんな台湾の居酒屋事情を紹介していきます。一軒目は高雄から。観光客は皆無、現地のノンベエ御用達の一軒「阿琴擔仔麵 海產」をご紹介します。

 

高雄は、台湾でトップ3に入る人口を誇る都市。海に面した港湾都市として栄えてきました。重工業地帯もあれば、懐かしの漁師町もあり、様々な表情を持っています。

 

高雄のランドマークは、台湾で二番目に高い「高雄85ビル」。中央に空間がある凸型のつくりは、「高」の文字がモチーフだとか。港湾エリアのかつて倉庫群や鉄道貨物操車場だった場所を再開発し、次々新しい施設が誕生。その中をライトレールが行き交います。

 

台湾の首都・台北からは台湾高速鉄道(台湾新幹線)、もしくは台湾鉄道管理局(国鉄)での移動が一般的。ここは高雄の中心・高雄駅。

 

外観も内観も、日本の駅にそっくり。ここから鹿児島中央行きが出発していても不思議ではない雰囲気です。

 

駅弁屋では寿司やおにぎりが人気です。お酒は売られていないものの、構内のコンビニにいけば日本同様の品揃えで缶ビールが購入できます。

 

改札の雰囲気も一緒。瓜二つというよりも、そのまま日本です。

 

新幹線の終点・左営駅や高雄駅から中心街まではメトロが便利。これは千代田線ですか(笑)

 

賑わいをみせる高雄の商業地「三多商圈」。高雄が日本の福岡ならば、ここは天神というイメージ。三多商圈駅をでれば百貨店やホテルが広場を囲み、日暮れ後もたくさんの人で賑わいます。日本の百貨店・そごうや三越の姿も。

さぁ、夜の帳が下りたので、居酒屋を目指します。

 

台湾の夜といえば屋台で、B級グルメや酒場がいっぱい。高雄もあちこちに夜市が開かれます。

日本語が通じる観光向け夜市が人気のようですが、せっかく酒場巡りを楽しみに来たのですから、地元のおっちゃんで溢れるローカルな市場で飲みましょう。

三多商圈から徒歩7分ほど「自強夜市」は、まさにうってつけ。半世紀以上の歴史があるそうです。

 

ここでも、日式が人気。日本人向けではなく、もちろん地元率100%。高雄にきて、おでんで一献。それもありですが…

 

目的のお店はこちら「阿琴擔仔麵 海產」。自強夜市の特長として、即席屋台よりも普通の飲食店がメインになり、店先で持ち帰りも売っているというところがあげられます。交通量が決して少なくない道も、みんなで座っちゃえば怖くない?(笑)

 

台湾では、居酒屋は「熱炒」(ルーチャオ)と呼びます。日本よりもバリエーションはないようで、店先にキッチン兼屋台、店奥が客席という構造がほとんどです。入り口で飲みたいアピールをして、メニューを受け取って席に着けばいいので、中国語ができなくても大丈夫。

 

台湾の人は人前で普段から飲まない…そんな印象がありましたが、ここでは、まさに酒場の光景。老若男女が家族や友人、1人で飲みに来ています。入り口近くの常連のお父さんたちから「オイシイヨ」と日本語で話しかけてもらって、現地の生の表情が垣間見れました。

 

ビールは自分で冷蔵庫からもってくるのが台湾流。そして日本のようにどこでも生ビールが置いてあるわけではなく、標準的な熱炒は瓶ビールだけを扱っています。

台灣啤酒の18天台灣生啤酒は、いま台湾で大人気のビール。生の文字がなんだか可愛い。火入れしていないビールで、賞味期限は18日しかない、フレッシュ自慢です。

 

飲みやすさ二重丸。暑い地域で飲むのにぴったりな喉越しです。例えるならば、オリオンの生をよりライトにした印象。余韻は比較的しっかりあって、ビール好きでも「これはいい」って言ってもらえそうな味です。

 

パイプ椅子と赤いテーブル。テレビは台湾の夕方の情報番組。ぼーっと眺めて飲むご隠居さんたち。日本の酒場とやっていることはかわりません。

 

さて、ビールは自分で選ぶからわかりやすい。紹興酒も口頭でなんとか伝わります。ただ、料理の注文が大変。わかりそうでわからない。インターネットで調べている時間はありません。

うむむ、むー、、、最後は当てずっぽうで注文です。

 

「魚かな、香辛料のついた魚の炒めものだといいなぁ」

鉛筆で食べたいものにチェックを入れるだけなので、言葉が通じなくても注文を通すことは問題ありません。ただ、何が出てくるのかは、おたのしみ。

 

はい、おまち!と、そんな勢いで笑顔炸裂の女将さんが持ってきた料理は…

 

魚なのでしょうか。このプルプルの豚ミミのような食材はなんでしょう。青菜や唐辛子にねぎ。そしてよくわからないけれど、超絶ビールが進む美味しい香り。美味しそうなので、いただきます。

 

モチモチでプリプリ、脂っぽくなく、ねっとりした旨味。どうやら、やはり魚のよう。でも、日本では使わない食材です。

答えは、魚肚(ギョト)と呼ぶ魚の浮袋。「中国四大海味」のひとつで、ナマコ、アワビ、フカヒレと並ぶグルメ食材。ぶつ切りで炒めたものは初めて食べましたが、これはクセになる味。五香粉のような味がしっかりつき、シナモンの香りが不思議とビールを進ませます。

 

台湾ドルで70 TWD、日本円で約260円の炒飯。漢字がそのまま「炒飯」なので、安心して頼んだ一皿。ボリュームたっぷりで、半分はテイクアウトにしてもらいました。

女将さんがしきりにテーブルに来ては、ニコニコ顔で話しかけてくださり、それもまた日本の酒場と同じです。酒と肴があれば、言葉の壁なんて乗り越えられます。

 

日本人ならば、アサヒを飲んでいって!と。入り口のテーブルに居る常連さんも、見てみればスーパードライを飲んでいます。確かに、あの味は台湾の風土にも合いそう。

普通のドライと、「乾杯」のふたつがあるよ、というので、中国製のアサヒ乾杯をいただくことに。非加熱処理のビールは日本のビール会社の十八番です。

 

台湾の人も、飲む人は飲む。そして、飲んだら言葉なんて関係なく、最後はわいわい楽しくなれる。それを体感したお店でした。

懐かしい雰囲気が残る高雄へ、熱炒巡りり旅に出てみませんか。ここには、ごちゃごちゃした空間でぼーっと飲む楽しさがあります。何十年もやっている地元のお店は、きっと人情深い方ばかりですよ。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

阿琴擔仔麵 海產
+886 7 331 1637
No. 69, Ziqiang 3rd Road, Lingya District, Kaohsiung City, 台湾 802
17:00~27:00(基本無休)
予算500 TWD